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【歴史小説】北風の賦 全6章+付録

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「今に見とれよ、お前を一介の御用聞きとして、目の前に這いつくばらせたるからな」……兵庫津の北風荘左衛門は、旧友瓦林加介の誘いに乗り、荒木村重の反乱計画に加担する。狙うは、魔王織田…
歴史小説「北風の賦」を、まとめて読んでいただくことができます!「まえがき」「英雄のいない摂津 〜『…
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#英雄

「北風の賦」まえがき

 この小説は、現在の神戸港に当たる、兵庫津を舞台にしています。  その地には、南北朝時代以来、「北風家」という商家がありました。  明治維新に至って、その財力で大いに尊攘の志士を助けたものの、ついには身代を傾け、倒産・絶家してしまったといいます。  しかし初めから商人だったわけではなく、そもそも武士として立身し、それに挫折したことで、やむなく商売を始めた、ということのようです。  室町時代の半ばに、北風家は二流に分かれました。  一方は「嫡家」、もう一方は「宗家」を名乗り、相

英雄のいない摂津 〜「歴史小説・北風の賦」あとがきにかえて+参考文献

 どんな土地にも、郷土の英雄、というものがあるかと思います。  中部地方の三英傑を筆頭に、薩長には維新の三傑が、土佐には坂本龍馬が、甲信越にも武田信玄や上杉謙信がいます。  もう少し全国的な知名度を下げても、徳島には三好氏が、栃木には足利氏が、山口には大内氏が、岩手には奥州藤原氏が、江戸には太田道灌、和歌山には雑賀孫一、……などなど、名の知れた歴史上の有名人がいるものです。 (県民意識と違っていたらごめんなさい)  しかし、古代から長らく先進地帯だったはずの摂津国、今の大阪