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【歴史小説】花、散りなばと 全4章+付録

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「この古市を、新しい鎌倉にしたい」……大和国制覇を狙う衆徒・古市胤仙(ふるいちいんせん)。その町に迎えられた野心家の老僧・経覚(きょうがく)は、風流の才能に溢れる童子・春藤丸に魅…
歴史小説「花、散りなばと」を、まとめて読んでいただくことができます!芸能、少年愛、引きこもり、モラ…
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#奈良

「花、散りなばと」経覚という人、古市という場所について

 この小説は、室町時代の奈良を舞台にしています。  主人公は、大乗院門跡の経覚。  彼は摂関九条家の生まれで、関白の子です。  当時の習いとして、十代から奈良興福寺に入り、わずか数年で大乗院門主、三十歳そこそこで興福寺別当(寺院のトップ)となりました。  実質的な大和国の王であって、貴種ならではの出世コースです。  その割に彼はかなり破天荒というか、自由闊達な性格だったように思われます。  興福寺に何の縁もない天竺人の子孫を弟子に取るなど、そのすさまじい闘争心もあいまって、

【エッセイ】坂の上の奈良

 奈良の、なら、という名前は、「ならす」「平である」というところから来ているそうです。 「平城京」も「ならのみやこ」であって、「平」という字に「なら」という読みが当てられているくらいです。  しかし実際そこに住んでいると、「奈良ってほんとに平らな町か?」と思うことが、しばしばあります。  確かに、長崎とか尾道(行ったことありませんが)みたいな、いわゆる「坂の町」とは違うでしょう。  近畿圏で言っても、山と海に挟まれた神戸という所は、ちょっとばかり北へ歩いただけで、どこでも