八年付き合った元彼が陰陽師になった話②
これで終わり
みなさん、婚約指輪って様々な思い出がありますよね。指が入らねえからって母から下げ渡された、ド◎クエで呪いの指輪として出てきそうな禍々しいデザインのあたいの母の婚約指輪にも、もちろんあります。
今回はそれが関わってきます。
そして、まずは父から母へと渡された婚約指輪のお話について、さくっと話しますね。
父は母にプロポーズすることに決めた。だが、一度離婚経験もあるし、年の差は一回りも違う。普通のプロポーズだと相手にしてもらえないかもしれない。なぜなら母は元レディースのヘッドでありエレクトーン奏者だから。(すでに情報量が多い)
そんな二人の出会いは、某高級レストランで流す曲を奏者にやってもらおうということでマッチング。
結婚式場での入場曲や、クラブでの演奏、ついでに歌も歌ってみたが下手だからやめろと割と本気で言われたを経験のある母が、場慣れした度胸と遠目から見た時に見栄えがするということで採用。その就職先が父がマネージャーを務めるレストランだった。
父の顔面は非常に良かった。ちなみに母は遠巻きから見た姿と後ろ姿のプロポーションがモデル体型。お淑やかそうに見えて喧嘩した時に食らったワンパンチの威力に、こんなに強い女性なら俺とともに永い時を渡ってくれるかのしれない。と、どこぞの人外攻めみてえなことを思ったらしい。
誰が遠巻きに見ても美男美女だと言われたらしい。そんで生まれたのがあたいってワケ(母親に似ているのです)
閑話休題、そんで父は考えた。どう婚約指輪を渡すかを。
幸い父は某雑誌に取材されたこともあるほど顔の広い男だった。足は短いし性格は悪い。顔に天秤傾きすぎて他はクソだが、調教がうまかったので慕ってくれる部下を駆使した人海戦術も得意であった。
だから父は、婚約指輪を作ることにしたのである!!!!
井の頭公園で拾ったインドスタールビーで!!!!!
なんかランニングしてたら拾ったんだって。
そんで知り合いの彫金師に作ってもらったんだって拾った石で婚約指輪。
今はもうその指輪は母親が厄払いに売っぱらってしまってないのだが、禍々しい魔王の指輪のような見た目をしていた。
中央に嵌め込まれたインドスタールビーの星の部分が若干傾いてて、しかも色が赤というか紫。なんだかすごい具合の悪そうな指輪だった。
だからそれを実家から出る時に下げ渡されたのだ。はめると手の血色があからさまに悪く見える効果つきの指輪を、私はせっかくだからとヒモの前でもはめていた。以下母から下げ渡された指輪のことを特級呪物と呼ばせてもらう。
ヒモが仕事を辞めてからギスギスし始めた頃、だいきちに隠れてヒモが特級呪物を嵌めては手のひらを虚空に翳したり、特級呪物の石を温めるように触れて「ハア!!!!!!!」とかいうようになっていた。
はあ?????はこっちのセリフなんだが???
とか思ってたけどこの時は我慢した。
というか、一つ屋根の下で暮らしてるだけで、日々どうやって別れてやろうかと模索すらしていた。
そしてある日の仕事帰り。玄関を開けて落ちていたのは靴下だ。
完全体ヒモになったヒモには、働いている私の代わりに平日の家事をやれという命を下していたのだが、まじでなんもやらない。だから洗濯物が床に落ちているのもある意味見慣れた光景ではあったのだが、この日は鍋も洗ってねえわ回した洗濯物も干さねえまま放置。団子状に乾いた衣服の数々に、ついに臨界点突破。
ヘン◉ルとグレー◉ルがお菓子の家を見つけるかの如く、寝室へと向かうにつれてどんどん増えていく苛立ち、そして靴下、下着、デニム、サラファイン、カットソー
「ただいまくそヒモうわあああああああ!!!!!」
室内に響き渡るだいきちの悲鳴。なぜなら扉を開けて一秒ヒモが真剣な顔していた。そこから何も言えなくなるの真顔のサイコパス(タッチでどうぞ)ってな具合に地獄を見た。絶句したのは仕方ない。だって真顔の全裸で大の字になって天井を睨みつけてたから。
怖いよ何これ怖い怖い!!!なんで素っ裸で大の字になって暗い部屋で起きてんの!?!?!?!?何が起きてんの!?!?せめてちんちん隠せよ!!!!!(困惑)
「ヒモ状況を説明して!?!?!?!?」
「今日は俺の右腕に悪霊が取り憑いて、生理現象以外の行動を許されていなかっンだ」
まじでこういった。なんなら復唱したけど理解に及ばなかった。ヒモが高次元の存在すぎてだいきちの理解が及ばなかった可能性はある。
「ねえ洗濯物!!」
「無理だった」
「せめて脱いだものはまとめろよ!!」
「西の方から強大な脅威を感じる」
「てめえ地図読めねえだろくそが」
そしてヒモは裸で大の字になったまま、主人公のように拳を天井へと突き上げた。その指には特級呪物。
「だいきち……俺気がついたんだ。この指輪とは巡り合わせで、俺の前世は陰陽師、だったんだって……」
ヒモの前世は陰陽師だったんだって。
だからこの世の風潮に身を任せられないのは仕方がないんだっていや働けえええええ!!!!
「お前にはいってなかったけど、それマッマの婚約指輪」
「……ということになってるのか」
と、だいきちの記憶改竄を目論んだ時点で無理だったので、力技で別れることにしたんだが今考えてもすごくない。履歴書に書きたいな元彼の前世が陰陽師ですって。
その後某歌姫似のえっちなお姉さんと盃交わすほど仲良くなって結託して別れたんだけど、恋愛に対する代償がデカすぎて草
ちなみに特級呪物は5000円で売れたそうです。
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