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『雌蛇の罠&女豹の恩讐を振り返る』(1)堂島源太郎vs山吹望

これは、以前書いた小説?
『雌蛇の罠』全20話『女豹の恩讐』全73話
を振り返るものです。
そうして、各男女シュートマッチを検証することによって、次回作の構想ヒントにしたいと考えています。

まずは、かつて書いた『雌蛇の罠』の中から、堂島源太郎とNOZOMIこと山吹望の死闘を振り返ってみます。
ミックスファイト小説を書くにあたって、一番拘ったのは徹底した真剣勝負。それは
『ある性的倒錯者の告白&妄想 (25)女に打ち倒される男』の中でも書きましたが、ミックスファイト物に有りがちなコミカル性やエロ的な部分を極力排除しました。真剣であればある程、女子に負けてしまう男性の屈辱感が浮き彫りになり、観ている(読む)者の被虐心が刺激されると思うから。

この物語は、当初天才美少女ファイター、
雌蛇と形容される女子高生NOZOMIを主人公に据えるつもりでしたが、書いているうちにNOZOMIと戦わざる得なくなった堂島源太郎に感情移入が強くなり、彼とその家族を中心に物語が進むことになります。

堂島はかつて “ド根性源太郎” のニックネームで日本王者にまでなった現役人気キックボクサーだが、人の良い彼は投資話に乗せられ多くの借金を抱えていた。このままでは家族諸共路頭に迷うことになる。
そんな堂島のもとに格闘技興行会社からオファーが来る。借金を払っても余りあるそのギャラに目を丸くする。しかも、勝者にはファイトマネーの他に多額の賞金が出るという。かつて日本王者であったとはいえ35才にもなるロートルの自分になぜこんな好条件のオファーが来るのか? 疑問に思いながらも背に腹は代えられない。試合は総合ルールで行われ、キックボクサーである堂島にはきついが、借金返済、家族を守るため「誰とでも、どんなルールでも全力で戦う!」と、オファーを受ける。そして、
この試合を最後に引退も決意する。

対戦相手はNOZOMIこと山吹望。
都内の女子高に通うまだ17才の少女。
??? 堂島源太郎はそれを知らされどう思ったでしょうね…。

男は強くあるべき! 女は家を守るもの。
自分の拳は女を守るものであって、殴るものではない。そんな男と女が拳を交えるなんて考えられない。息子の龍太にも “男はどんなことがあっても女の子に手を上げてはならない、それは恥ずべきこと” そう教えてきた保守的な考えの持ち主なのだ。
それからゴングが打ち鳴らされるまでの彼の苦悩、心の葛藤が、試合そのものより、この物語最大のテーマになります。
全盛期をとうに過ぎているとはいえ、対戦相手が女子であることに戸惑う堂島。なんで俺が女子選手なんかと戦わねばならないのだ?  しかも、まだ高校2年の女の子というじゃないか、、そんな女の子を殴ったり蹴ったりなんて出来るわけがない。

対戦相手が女子であることを知り、困惑するのは堂島本人だけではない。それは家族も同じで、妻の佐知子は夫源太郎の優しい性格を知っており、そんな彼が高校生の女の子を殴ることなんて出来るだろうか?
そう思いながらも黙って見守るしかない。
一番反発したのは息子の龍太、堂島は息子に「絶対女の子に手を上げてはならない」と教えてきたからだ。それでも「これはケンカではない。仕事としてリングに上がりその対戦相手がたまたま女子選手になっただけ」と言い聞かせるが、龍太は尊敬する父が女子選手と戦うことに納得しない。
娘の麻美だけは、カリスマ女子高生モデルでもある憧れのNOZOMIと父が試合することを無邪気に喜んでいる。

最初は女子高生との試合を茶番か?バカバカしい!と思い、適当にのらりくらりとやろうと考えていた堂島だったが、彼女のことを調べているうちに、女子とはいってもただならぬ危険な相手であることを知る。その強さは悪魔的で雌蛇との異名がある。総合ルールであり、捕まって倒されたなら堂島の勝ち目は限りなくゼロに近いとトレーナーからも忠告を受ける。その対策として徹底したヒットアンドアウェイ作戦のトレーニングを開始するのだった。

一方、現役の男子キックボクサーに挑戦するNOZOMIこと山吹望。
いくら天才美少女ファイター、雌蛇と形容されるNOZOMIであっても、まだ17才の少女が男子と、しかもプロキックボクサー堂島源太郎と真剣勝負させることに世間では疑問の声があった。事前に打ち合わせがあるプロレス的ショー? シナリオがある茶番ではないか? そうでなかったらあまりにも危険だという専門家の声。そんな声にも当のNOZOMIには絶対の自信があった。

女子が男子に戦いを挑むのは危険だって?
それは、女子は男子より弱いものって前提の意見よね。それって、誰が決めたの?
それは男女の役割分担についての社会通念・慣習・しきたりなどが根強く、女にそのチャンスを与えられてこなかったからではないのかな?
 戦い方によっては、女子でも男子を打ち倒すことが出来る!それを世間に証明するためリングに上がる。世間の、男どもの、女に対する偏見の目、、そんな差別的な考えから目を覚まさせてあげる。

かくして、堂島源太郎と山吹望は、禁断の異性異種格闘技戦のリングに向かう。

男と女。
そこは絶対負けられない舞台なのだ。

次回に続きます。





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