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本には交流があるPー2 戯作一7 渓からの出発

さあ、渓からの出発ですが、その前に私の想像です。
大昔、山々にとてつもない大雨がふりそそぎ、山のはざまの低地に流れ込んで行った。その激しい流れは低地を山際を削り、落差にしたがって岩を礫を土砂を押し流した。次の洪水は大きな水たまりに溜まった土砂を下流に押し出します。水たまりは深くなって淵となります。
次からは淵の出口、淵尻から押し流された土砂、岩で凸凹の山なりの瀬が生まれる。
川は淵と瀬の繰り返し。激しい流れは内に曲がりながら淵を作り瀬を作り蛇行して下流に水と土と岩と養分を運んでいきます。
早瀬の波は岩に跳ねかえり空気を巻き込み白泡の波を淵におくります。淵は生き物には海です。
硬い岸壁がそそり立ったゴルジェも淵です。渓を遡行して来る沢登りや釣人は冷たいゴルジェを泳いで越していく物好きです。でも子どもの遊びのように楽しそう。
おや、下手からひとり釣人がやって来ました。イワナ、アマゴに気づかれないように息を潜めて竿を振り毛鉤をあやつっています。すると面白いことに、釣人の前方に、イタチが現れ、毛鉤が水面を叩いている方向を見つめています。エサにしたい魚がいると見えるのでしようか。けれども、さすがに後方に人の気配を感じて、あわてて、退散して行く愉快な場面もあります。ゴルジェの下流には開けた河原があります。川岸にはフキノトウ、サツキ、秋には紅葉が岩の化粧をする。アゲハ蝶も小石原で吸水している。
おむすびを食べようと、あそこの岩にすわつたら、岩の陰から蛇が出てきて、跳び上がった釣人もいる。

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