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あなたの知っているわたし

あなたの知っているわたしはあなたに見せたいわたし。ほんの少し、わたしの上澄みだけ。
見て欲しいところだけ、見せていい部分だけ。
だからわたしからはあなたのことを聞かないし、知っているのはあなたが話してくれたことだけ。
あなたは自分に興味がないのって笑うけれどそれで十分。多くを知ってしまったら引き返せなくなるのがわかっているから。
さばけたフリをして先のない関係に何をそんなに求めるの、お互いに家庭を捨てる気はないでしょうって、だから短くても終わりがあるならそれまで楽しもうって言ったのは本心だけど、それ以上にいつまで続くかわからない不確かな関係を長く続けられるようにできるだけきれいに終えられるようにしたかったから。
言葉は呪縛。一度好きだと口にしてしまったら言葉に縛られて身動きが取れなくなってしまうことがとても怖いの。
それなのに欲深いわたしは言葉も心も身体も時間も欲しがってしまうの。言葉にしないことの方が深くわたしに絡みついて身動きが取れなくなることはわかっているはずなのに少しでも長く続くことを祈って、あなたの忘れられないあの人が空けてしまった大きな隙間に少しだけでいいから入れてもらえることを希って。わたしのきれいな上澄みだけ。そんなもの嬉しくもないのだろうけれど。

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