見出し画像

電子書籍自作「自炊」のススメ #1 ~機材準備と裁断まで~

自炊って?

何?
紙の本1ページごとを画像データや文字テキストに変換し、パソコンやタブレット、スマートフォンで読めるように変換する行為をいいます。
一般的に「電子本」「自炊本」などと呼ばれます。
そんなことして何が楽しいの?何かメリットあるの?
よし、話してしんぜよう。

物理的サイズの圧倒的な削減

デジタル画像データになるわけだから、メモリカードやHDDに入れておける。
メモリカードと本棚のサイズは比べるだけ無駄。
本棚が空いた分、本以外の置き場所が生み出せる。

バックアップの簡易化

簡単に変質しないコピーが出来るデジタルデータの特性上、予備をいくらでも作っておける。
しかも、クラウド等のネットワーク記憶領域を利用すれば、自宅外にバックアップがおける。
災害などに圧倒的に強くなるわけである。

持ち運びが楽

通勤通学時に本を読む人は多いだろう。
しかし何冊も持ち歩くのは重量サイズの関係で難しい。
だが、スマートフォンやタブレットに入れておける電子本なら20-30冊どころか、100冊だって持ち歩ける。
遠出するとき、この数はとてつもなく嬉しい。

情報利用の簡易化

専門書、資料本の類は、大抵ブ厚く重い。重さに辟易して利用をあきらめることもある。
こういうものを電子化すると、何冊も扱うのが苦にならなくなる(かもしれない)
OCR等でテキストを埋め込んでおけば、情報検索も楽になる(かもしれない)

管理が楽

自炊の過程で本に関する情報(書名、作者)などを残しておけば、どんな管理方法をするにしても楽になる。
クラウド等に情報を上げておけば、蔵書内容がどこでも分かり「この本持ってたっけ?」とブックオフで迷うことが減るだろう。

二次利用が楽

画像として使うのももちろんだが、音楽でよくやる「マイベスト」をマンガでもしやすくなる。
「ゴルゴ13 デイブ・マッカートニー編」のような「マイベスト・エピソード」本をつくることも簡単に出来る。
さらにテキストにすれば、読み上げ、点字への変換などもしやすくなる。

自分に合わせた表示がしやすくなる

老眼とか弱視など目に問題があると細かい文字の本を読むのはしんどい。
が、テキスト化された本なら、文字の大きさや行間などを楽に読める設定にするのは簡単だ。

通信環境に左右されない

たいていの電子書籍はオンラインでのみ読めるのが主流。
Amazonキンドルのように端末機にダウンロードしておけるのもあるが、少数派だ。
だがスマートフォンやタブレットのメモリに保存する自炊本なら通信に左右されない。

電子書籍が存在しない本も電子書籍にできる

作者の意向や権利関係が複雑なため電子本が発売されない本も結構ある。
こういうのもブックオフで紙本を発掘できれば電子書籍に仕立て上げることができる。

気軽に読める

外出中だと紙本は持ち歩いてないと続きを読むことができない。
だが電子書籍なら手元に紙本がなくてもネットストレージなどにおいておけば、いつでも取り寄せることができる。重い本を持ち歩かなくて済む。


もちろん、イイコトばかりだけでなくデメリットもある。

法的にグレー

法的には個人が自分で使用するためにコピーするのは何も問題なし。完全に合法。
ところが、これは「バックアップとしてのコピー」に限られている。
本を電子化=コピーするのは問題ないが、オリジナルの本を廃棄してしまうと 「バックアップ」ではなくなってしまう。
オリジナルを廃棄してもバックアップを持っていると法的にアウトになってしまうのだ。
本棚の軽減を目的としていると、こいつはきつい。

一覧性に欠ける

本は何冊も広げて見比べたりすることはよくあるが、PCでは複数の機材や大型のディスプレイでないとこれがやり辛い。

電池が切れたら読めない

当然だが、読書に使う機材が電池駆動の場合、電池が切れたら読めなくなる。

破損に弱い

電子本そのものではないが、記憶メディアや機材は衝撃等のトラブルに弱い。
本を落としても、精々端っこが曲がったくらいだろうが、スマートフォンなどの精密機材には致命的かもしれない。

売れない

本を破壊してしまうので古本屋やフリマなどに出すことはできなくなる。
とはいっても、フリマに「裁断済み」と自炊した残骸が出てることもあるが、別段安くないしページの抜け、並び、向きなどをチェックする手間暇を考えても買う価値があるか疑問ではある。

第1回 ~機材準備と裁断まで~

機材

●裁断機

オフィスなどで大量の紙を一度に切断する機材がよく使われている。
一般的には「裁断機」と呼ばれている。
大抵は紙を固定し、大型の刃物で押し切るタイプ。
以下のような機材である。

中華裁断機

いわゆる「中華裁断機」と呼ばれているもので、本をネジ式のプレス板で固定し、裁断する。
厚手のハードカバーでも一発で裁断でき、新品でも1万円を切る安価なのが魅力。
しかし、断面が斜めになるという弱点があり、

厚い本であるほど顕著になる。
何10ページか程度に分割する、固定時のプレスを目一杯行うなどすればある程度は軽減できるが、それでも多少の斜めは発生してしまう。



こちらはプラスというメーカーの裁断機 。
ハンドルを下ろすと同時に本が固定されるため、中華裁断機のように固定手順が必要ない。
数があると、これが案外バカにならない。
断面が斜めになる現象もほとんど起きない。
光による裁断位置のガイドがあり、切れる位置の目安が付けやすい。
なにしろ高い。新品だと3-4万は軽くするが、ヤフオクでなら1万円台で出ていることも多いのでこれを狙うのも手だろう。

両方とも「重い」のが最大の弱点。中華裁断機のほうは、14kg近くある。
こうなるとどこかに設置するしかないが、個人宅ではそうそう場所はないだろう。
押入れ等に入れておき、必要なときに取り出して使うのが望ましいが、この重量では移動も一苦労。
そこで用意したいのが「台車」
板にキャスターやローラーをつけた簡単なものでよい。
これに裁断機を乗せれば押入れを格納庫化することができる。

ホームセンターで3000円以下で買えた。
もちろん、常設できる場所があればそれに越したことはない。

近ごろ人気なのは、同じくプラスの「PK-213」という機種。


PK-213

単行本と比べてみた。他の大型裁断機より圧倒的に小さく軽い。

このように縦にしておけるので、格納スペースも少なくて済む。

使用時はテーブルと刃のついたレバーを展開するようになっている。

一度に切れる枚数は少ないが、コンパクトという利点は無視できない。
切れる枚数が少ないのはカッター部分に指などが入らないようにするため。

他にカッターナイフ&定規を使うとか、ロータリーカッター式の裁断機 などもあり、こちらなら数百円から数千円で揃う。数枚づつしか切れないので手間がかかるのが難点。

●スキャナ

「オート・ドキュメント・フィーダ(ADF)」タイプがよく使われている。「オート・シート・フィーダ」と呼ばれることもある。
プリンタのように数十枚までをセットし、自動で読み込んでいってくれる。ラクチン。
以下のような機材である。


格納形態
動作形態

PFUというメーカーの「ScanSnap」
自炊業界では定番中の定番。
価格も手ごろで、性能も必要充分。
ヤフオクにも1万程度でよく出品されているので、これを狙うもいい。

が、ローラーなどは消耗品のため、すでに多数スキャンしていると紙送りがうまくいかなかったりすることもある。
消耗部品は取り寄せできるので、自力での交換も視野に入れておいたほうがよい。
あるいはプリンタ用の紙送り機構クリーナーで掃除をするのも手。
ゴムローラーのクリーナーがいろいろあるので、自分でも使えそうなやつをチョイスしよう。
最大横幅がA4サイズのため、画集や写真集などの大判書籍の自炊には向かない。
かといって、これ以上のサイズでADFとなると業務用となってしまい、値段も数10万から100万単位に跳ね上がる。
どうしても大判書籍の自炊がしたければ、フラットベッド型スキャナを使用して、1枚づつスキャンするしかない。
フラットベッド型スキャナも大型になるとそれなりの値段になってくるので、 キンコーズといった業者を利用するか、コンビニのコピー機のスキャナ機能を使う手もある。

下準備

今回は以下の1冊を自炊してみる。

まずは表紙カバーをはずした後、表紙を剥がす。 表紙を持ち、端っこからゆっくり剥がす。


端っこを突破口に少しづつ


こんな感じ


裏側からも攻める

剥がすとこんな風になる。

ハゲたー


分解できたー

ただし、この工程は必須ではない。
裁断時に表紙ごと切ってしまうのであればそのままでもよい。
ただ、マンガなどの場合、中表紙にも別の絵が書かれていたり背表紙、裏表紙と一枚続きになってたりと工夫されていることがあるので、 切り落とすのはもったいない。
もし失敗して千切れたりしてもあわてないこと。
あとで画像処理でくっ付ければ済む。

裁断

表紙を剥がした本の糊面を奥にセットし、ざっくり切り落とす。
薄手の文庫本程度なら一発で切れる。

裁断機によっては一度に切れる厚さに制限がある。
その場合は、1/3や1/2にあらかじめ分割し、その上で裁断する。

まず本をくぱぁと開いて糊を割る。

なんでこんなことをするのかというと、いきなりカッター等で切るとページを削いでしまうことがあるためだ。経験則ではあるがやって損はない。

割った状態

この状態でカッター等で分割する。

少しずつ糊を切っていく

うまく切れれば紙にダメージはなく糊だけが切れて分割される。
何分割すればいいかというと、本の厚み、裁断機に入る厚みによって変わるが、おおむね2-3分割というところだろう。

こうして分割した本を裁断機で糊面を裁断する。

こんな感じで糊部分だけが斬り落とされればOK。

どれくらい切り落とせばいいかだが、おおむね3-4ミリメートルというところだろう。
たいていの本なら、これくらい切れば糊が切り落とせる。
足りなかったら、再度行えばいい。ちょっとづつね。何度かやってればカンが身につく。

●裁断後の確認

裁断後に切る量が足りなかったり、糊が多めに浸透しているとページの端っこがくっ付いたままになっている。
このままにしておくとスキャン時に二重送り等のトラブルの元になる。


ところどころ切り残し


裁断幅が少ないとなりがち

もう一度切りなおすか、手で剥がすかは各自の判断となる。
糊が残っていたりすることもあり、これも剥がすか残すかは個人の好み。

分割した場合、裁断面にズレがでたりすることもある。

もう一度切りなおすのもいいが、ぴったりになるまで切り続けると中身にまで被害が及ぶこともあるだろう。
裁断時に注意するしかない。何度かやってればカンが身につく。

第2回 ~スキャン~ に続く!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?