月の満ち欠けのように
1日が終わり
なまりのような疲れを背負い、駅の階段をくだる
1日が過ぎ去ったことだけは認識できている
ちょっとしたことで
じぶんの欠けている部分にフォーカスが当たり、肩をおとした
服のシワさえも、自分を責めているような感覚になる
お気に入りのバッグは、いつもより少し重かった
階段を下りる手前で見上げた三日月
光に照らされた白いシャツは、白さをより際立たせた
月の欠けているさまは、あんなに美しく人々の心(眼)に映るんだ
何かが足りないとは思わなかった
瞼に映った月をみながら
それはじぶんにもあてはまるだろうかと自問する
春の夜風はまだ冷たくて、
指先の感覚がなくなるほどだったけれど
三日月だったはずの月に今いちど目をこらしてみる
ちゃんとまぁるく影が見えた
欠けてはいなかったのだ
ほっとして冷え切った手をポッケに差し込むと、指先がじんわり暖かい
わたしもきっと、欠けていなくてちゃんとまるい
ときおり 〝それは〟隙間からすっと入ってきては
わたしをおびやかすのだけれど
それが幻想と気づけば
満ちたり欠けたりするこころ模様のように
自然と心もおちついてくる
見えないだけでちゃんとある
その月はこれからもまるい存在で
わたしたちを照らし続けてくれるのだろう
満ち欠けを繰り返しながら
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