夏が来る
65年前に生まれたときよりずっと暑くなった日本。
夏に生まれて、夏が大好きだった。
なのに最近は暑すぎて外に出るのが嫌だし、夏が来るのが怖い。恐ろしいくらいに。熱帯地方でもないのに、蒸し蒸しして汗が体にべっとりとじっとりと張り付く。エアコンをつけるとその汗を冷やすので寒くてつめたくて、結局着替えることになっちゃう。
汗をかいたまま我慢して、背中がぐっしょりになる。
そんな毎日になる、夏が来る。
仕事をしていたときには夏休みがあったから(教員だった)子どもがこない静かな学校も好きだった。とりわけ急がない仕事をこなすだけの夏休みの出勤もあまり嫌ではなかった。研修も好きだった。
それで、少しだけある休みの日を使って、子どもとキャンプに出かけたり、買い物を愉しんだりもした。
ゆったり過ごせる夏休みはいい時間だった。
誕生日は、夏休みに入ってすぐなので、みんなに忘れられた。気にしてない、といいつつちょっと残念な気持ちになったりもした。夏休みになるとすぐに年を取った。そして今年は夏休みなんかないけど夏が来ると
すぐに一つ、年を取る。
私は66才になる。夏に。
幼い頃は、母の実家で生活をしていた。目の前は海で、毎日が海水浴だった。日に焼けて目の白目部分だけが目立った。
毎日海水浴場で泳いだ。叔母がゆでたとうもろこしを売りに出かけた。コーラの空き瓶も拾いに行った。1本10円で売れたから。
私の夏は忙しかった。小学校3年生から4年生の終わりくらいまで、両親なしで忙しい子ども時代だった。
とりわけ、夏休みはトウモロコシを売りに行ったり、空き瓶を拾ったり、ワカメ干しのバイトに出かけていたから忙しかった。
夏になると思い出す。
夏が、くる。
色んな思いを乗せて、夏が来る。
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