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『仮』発砲通報プロ

日本でも銃所持が認められてウン10年。映画でしか聞いたことの無かったこの音に僕もすっかり慣れてしまった。
乾いて弾けた爆発音。‥やれやれ、またか。但し、そこは日本。所持可能と認められているのは急所に命中しない銃と弾と定められた。車の自動運転のブレーキみたいに弾には小型のAIが搭載されている。そしてそんなもの安いわけが無い。つまりこの発砲音は金持ちたちの遊びなのだ。
防犯カメラはそこいらじゅう。AI警察、AI警備員が今や人口とほぼ同数存在してる。法から外れる銃やその場にそぐわない刃物、弾薬、全て奴らの目のカメラで感知されている。
日本という世界は秘密を持てなくなり外から悪い奴らも入ってこれない。
なんてことない世界。何も起きない世界。
平和な世界で唯一の凶器は言葉と拳のみ。パァン!と鳴り響いても騒ぐのは鳥や犬だけ。動物の耳では何度聞いても慣れる事は出来ないらしかった。どうせ防弾服に身を固めてサバゲーとやらに夢中なのだろう。あの弾ひとつで今の家が買えそうに見えてうんざりする。
時折聞こえる金切り声は耳障りにもならない。
人間は鈍化した。耳は聞こえるが
くだらない犯罪の被害に遭わずに済む代わりに。
人間は鈍化する。慣れてだれてしまう。
発砲通報なんて聞き飽きた。ましてやプロがいるなんて‥やれやれ
今日もどこかの野獣の金切り声がする。それを聞くとお尻の辺りがもごもごするけど僕はスマホを手放さない。

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