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第96回アカデミー賞期待の作品紹介No. 25「神さま聞いてる?これが私の生きる道?!」

AWARDS PROFILE Vol. 25

神さま聞いてる?これが私の生きる道?!

RT: 99%
MC: 84
IMDb: 7.3

 11歳のマーガレットは大都会ニューヨークから郊外のニュージャージーへと引っ越すことになった。彼女は新しい学校で、新しい友達と共に山あり谷ありの思春期を迎える...。

 1970年に発刊されて以来、多大な影響を与え続けているジュディ・ブルームの児童書が待望の映画化を果たす。発刊以来50年もの思いを乗せて映画化を実現させたのは、ケリー・フレモン・クレイグだ。彼女の前作「スウィート17モンスター」は捻くれた高校生の成長を瑞々しく描いていたが、今作でもその才能が原作のエッセンスを丁寧に掬い取る。主人公マーガレットを演じるのは、「アントマン」ではまだ小さかったアビー・ライダー・フォートソン。彼女の支えとなる母にレイチェル・マクアダムス、マーガレットを愛してやまない祖母にキャシー・ベイツが扮している。50年を超えて今も愛される原作を映画化する困難は想像するに難くないが、クレイグ監督は完璧に映画化に成功したと称賛されている。監督の前作がそうであったように、今作も立体的なキャラクター像と10代が抱えるリアルな感情をユーモアを交えて描き出す。長い間、多くの人に愛された原作に対する正当な映像化で、オリジナルに忠実ながら新鮮な息吹を与える。1970年が舞台ではあるが、探られるテーマは現代にも通じる普遍的なものだ。子供であることの興奮と混乱を優しいまなざしで包み込む。一方で、子供時代だけでなく様々な年代の女性の犠牲や苛立ち、屈辱が描かれる。マクアダムス演じる母とベイツ演じる祖母の存在が物語に与える意味も大きい。彼女たちキャラクターの優しく丁寧な描写は一瞬で、観客との間にも絆を創り上げる。もちろんフォートソンとマクアダムス、ベイツのパフォーマンスはユーモアを含みながら女性として生きる痛みを湛えていて、観る者の心をいっぱいにすることだろう。世間が大っぴらに語るのをたじろぐような青春時代における宗教、性教育、少女の成長の不確実性を誠実に描き、いかなる選択肢も批判することなく探求していく。ブルームが書いた原作が特別な本たらしめた本質に真正面から向き合う。生々しすぎて気恥ずかしい時もあるが、ハートウォーミングでウィットもあって、最後にはポジティブなエネルギーをおくることに成功する。近年の青春映画の中でも群を抜く作りで、将来のクラシック認定間違いない作品だとされている。2月21日にデジタル配信予定。

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