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ただのグランパとは言わせないぜ。尊敬を集め続ける名優による極悪非道のオンパレード~ロバート・デ・ニーロ~

ACTORS PROFILE Vol. 3

ロバート・デ・ニーロ
「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」


1943年アメリカ生まれ。ただのグランパとは言わせないぜ。尊敬を集め続ける名優による極悪非道のオンパレード。

 石油採掘で活況のオーセージ郡。一夜にして富豪となった先住民たちの土地に、「キング」と呼ばれ慕われる男、ウィリアム・ヘイルがいた。そんな男の裏の顔は、先住民の富を白人のものにするために、先住民を殺めることを厭わない残虐なものだった。

いやぁ めでたい。

▲「ミーン・ストリート」「タクシードライバー」「レイジング・ブル」「グッドフェローズ」等、スコセッシ監督とのタッグで映画史にその名を刻んできたデ・ニーロは、この世の悪全てをヘイルの身体に封じ込める。

やってくれるよな。

▲そもそも先住民の土地でキングと名乗る時点で、かなりのツワモノと伺えるヘイル。普段は周囲に気を配りながらも、度の強そうな眼鏡のしたの眼は常にギラつく。先住民に対して彼なりの最上の敬意を表しながら、「先住民には未来はない」と冷酷な判断をしていくサイコパスぶり。それは二面性というよりも、コインの同じ面の両端に相反する二つの考えが同居しているかのようだ。それが自然の摂理と言わんばかりに。

▲デ・ニーロの絶妙な所は、このヘイルという男に隙を落とし込んでいるところだ。それがカリスマ的な悪に決してならない。冷静に見れば欲に塗れたしょうもない人間だということを見逃さないのだ。

悪いようにはしないからさ。

▲スコセッシ監督との初タッグとなった「ミーン・ストリート」から50年。ディカプリオとの出会いとなった「ボーイズ・ライフ」から30年を迎える今年。スコセッシ×ディカプリオ×デ・ニーロという夢のようなコラボレーションで、アメリカの歴史における白人の罪を打ち明ける。デ・ニーロは反吐が出るような悪人として、その罪を体現する。


ロバート・デ・ニーロとアカデミー賞

・第47回アカデミー賞(1974)助演男優賞受賞ゴッドファーザーPART II

 この前年に公開された「ミーン・ストリート」の電撃的なパフォーマンスで、映画界を震撼させたデ・ニーロ。その勢いそのまま、コッポラ監督の「ゴッドファーザーPART II」に出演。前作でマーロン・ブランドが演じたヴィトー・コルレオーネの若き日を演じ、ブランドの創り上げたキャラクター像やシチリア方言を習得した。オスカー初ノミネートで初受賞。本人は授賞式欠席の格好良さ。他のノミニーには若き日のジェフ・ブリッジスもいたよ。

・第49回アカデミー賞(1976)主演男優賞候補:タクシードライバー

 黄金コンビとなりつつあったスコセッシ監督の「タクシードライバー」で2年ぶり2度目の候補入り。初めての主演賞候補となった。タクシーを運転したり、鏡に話しかけたり、コンロに拳を突き出したり、モヒカンにして政治家襲撃を試みたり、ジョディ・フォスターを救い出したりと大忙しだったが、オスカーは「ネットワーク」のピーター・フィンチに渡った。オスカー史でも珍しい死後受賞で、遺作となった彼の強烈なキャスター役のパフォーマンスは伝説的だ。スタローンもノミニーでした。デ・ニーロ本人は授賞式欠席。

・第51回アカデミー賞(1978)主演男優賞候補:ディア・ハンター

 マイケル・チミノの壮大なオスカー作品賞受賞作「ディア・ハンター」で2年ぶり3度目の候補入り。同郷の友人達との幸せな結婚式の前半と、ベトナム戦争に出征したことで彼らの心が壊れてしまう後半をたっぷりとみせた。受賞したのは同じくベトナム帰還兵を描いたドラマ「帰郷」のジョン・ヴォイト。デ・ニーロはこの年も欠席の模様。

・第53回アカデミー賞(1980)主演男優賞受賞レイジング・ブル

 スコセッシ監督とのコンビが映画史に刻まれた「レイジング・ブル」で2年ぶり4度目の候補入り。デ・ニーロと言えばメソッド演技。実在のボクサー、ジェイク・ラモッタを演じるにあたって、現役時代のラモッタのキレキレの体に仕上げた。それに加えて、引退後の見る影もなく増量したラモッタの姿になるために大増量。もちろん一筋縄ではいかないラモッタの近づき難いエネルギーを放出させた。歪んだ内面と常に怒りまくる圧巻のパフォーマンスで、自身初のオスカー主演男優賞受賞となった。

・第63回アカデミー賞(1990)主演男優賞候補:レナードの朝

 受賞以来、10年ぶり5度目の候補入りとなったデ・ニーロ。パーキンソン病患者レナードの役で、新薬を投与されて、治癒していくグラデーションのある演技。ロビン・ウィリアムズ演じる医師との交流に目を細める。また同年は「グッドフェローズ」での魅力的なギャング演技もあった。受賞は「運命の逆転」のジェレミー・アイアンズ。妻殺害の被疑者として、有罪か無罪か観る者を惑わす絶妙な演技で本命としてオスカーに輝いた。

・第64回アカデミー賞(1991)主演男優賞候補:ケープ・フィアー

 スコセッシとの黄金コンビで、「恐怖の岬」をリメイクした「ケープ・フィアー」で2年連続6度目の候補入り。弁護士一家に付きまといリベンジしようとするインパクト大の犯罪人マックスをハイボルテージで演じた。強面のニック・ノルティとジェシカ・ラング相手に傍若無人ぶりを発揮。それでも受賞は、皆さんご存知「羊たちの沈黙」のアンソニー・ホプキンス。ホラー映画のみならず、映画史に残るヴィラン、ハンニバル・レクター博士をスクリーンに焼き付けたホプキンスの演技はそれはそれは恐ろしかった。

・第85回アカデミー賞(2012)助演男優賞候補:世界にひとつのプレイブック

 「世界にひとつのプレイブック」で、実に21年ぶり7度目の候補となったデ・ニーロ。ブラッドリー・クーパー演じる、妻の浮気以来、精神を病んでいる息子を気にかける父パットを熱演。信頼の証に全財産をギャンブルにかけるなど、突拍子のない行動で一家を混乱させる。久しぶりにオスカー俳優たる実力を見せつけた。だが受賞したのは、「ジャンゴ 繋がれざる者」のクリストフ・ヴァルツだった。こちらも何度も観たくなる名演である。

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