榊原郁恵 エトランジェール(1982)
ヨーロッパの香りただよう、明るさとアンニュイさを併せ持ったアルバム。
彼女の声自体が笑顔をイメージさせるので、悲しい曲も救いがあるというか。
10曲すべて聴きごたえのある名盤ではないでしょうか。
1.「エトランゼ・アムール」
スローテンポな、さわやかさのある曲。
雨のパリで、傘を差しかけた彼と恋におちる。
「エトランゼ・アムーーール♪」のところが独特の音階になっていてフランスの雰囲気が出てますね。
フランス語の彼と一生懸命話そうとする初々しい姿が思い浮かびます。
ときめきも想い出も「つかの間の恋」と歌っているけど、ポジティブな記憶になっているよう。
2.「3:30の街角」
遊び人の彼と恋を終わらせて、心軽く街を歩く様子が描かれます。
初めてのキスで相手が目を逸らした という描写が別れの遠因となる、傷つきやすい女心をよく表していて好きです。
3.「光と影のロード・ショー」
失恋したけど街中で行われる祭りに参加しちゃうぞー、という内容。
髭のセニョールがアコーディオンを弾くとか、洒落たスペインの街がイメージできます。
「悲しみは誰にでもある」という歌詞が、失恋で大人になった女性を思わせます。
4.「霧の中の恋人」
ルルル…ダバダ…とスキャットではじまる、アンニュイな曲。
歌詞は切ない恋といっていますが、どこか幻想的な雰囲気。段階的に音階が上がる曲展開。
雰囲気的には「白い恋人たち」という曲を思い出します。そんな似てるわけではないけど。
5.「哀しみのTreno(トゥレーノ)」
Trenoはイタリア語みたいですね。
7歳、15歳、二十歳と人生の中であった出会いと別れを歌っています。
なんだか岩崎宏美さんの「思秋期」を思い出しました。
「いつも鉄道は私から愛の日を連れ去る」っていうのが昭和だなあ。
しかし詩というものは古さの中により濃く描かれるものです。
6.「幻影(まぼろし)を追いかけて」
曲調は、当時流行ったシンセサイザーのロック調というんでしょうか?
会うはずのない元彼に似た人を見かけ、どこまでも走り追いかける光景が描写されています。
2階建てバスが通り過ぎてるので、舞台はロンドンでしょうか?臨場感と哀しみの感じられる歌唱で、印象深いです。
7.「ワイン・ミュージカル」
歌詞はワインを飲んでみんなで踊る というシンプルな内容。
スペイン音楽っぽいのかなあ。詳しくなくてすみません。
郁恵さんは明るい曲は声の出しかたも変わっていて、本当に楽しい!という表現をされてます。
曲を聴いていると、朗らかな男女の舞い踊る様子が目に浮かぶようです。
8.「9月の旅人」
トランペットのムーディなイントロ…海辺の町で市場などを歩きながら、恋をいったん忘れて旅している女性。
旅をすると、いろんなものが見えてくるといいますものね。
9.「アダジオ」
いいですね。タイトルが。「ゆるやかに」という意味だそうです。
膝の上で抱かれて…という愛のひとときが、郁恵さんの清潔感のある声で綺麗に描かれます。
10.「追憶の街」
かなり抑えめな歌い出しで、サビはグッと盛り上げます。
詳しい事情はわかりませんが、恋を捨て去って夢に生きようとしている…のかな?
この時、榊原郁恵さんは23歳かな?
当時は20歳すぎたら大人の歌を、といわれる時代でした。
秋の雰囲気のある、大人っぽさと若さのいいところが出ているアルバムだと思います。
機会があればぜひ聴いてみてくださいね。