「手間の価値」

6/18(火)
「雨」である。

早起きしたのにも関わらず何かどんよりとした雰囲気。この気配は、間違いなく雨だ。この日は警報級の大雨が予報されていたために、「もしかしたらゼミが休みになるかもしれない」という儚げな希望的観測がもたらされた。しかし、その連絡が来ることはなかった。

仕方なくパチンコ屋でもらった「小さい」よりも「華奢」という表現が似合う傘をさし、滝のように迫りくる雨と戦いながら大学へ向かう。気分は最悪だったが、この日は教授が日本に帰国していて久々に対面で会える日だったのでまあ「ギリハッピー」といえる感じだった。ゼミではせっかく教授が帰国しているので、皆で昼食を共にした。やっぱり後輩とは仲良くしたい。素直に心を開いてくれるかどうか正直心配なところはある。去年の僕がそうだったから。結構前に「懇親会含めて飲み会を開く」という計画が僕の先延ばし癖により停滞していたことが話題に挙げられ、今一度しっかり計画することとなった。とりあえず、日程調整投票をグループLINEに送った。みんな、来てくれるのだろうか、、、いや、むしろ来てさえくれればあとはどうにでもなるから、、、一旦飲もうや、、、

夕方は、やることを放置してまたも寝てしまった。後悔の念が頭を駆け巡る。とりあえず、卒論のことをちょっとだけ進めた。しかし、相変わらず牛歩並みに進捗が遅いことは確かだ。

夜は友達と予定があった。模擬店で大量に余った卵を消費しようと、だし巻き卵大会が開催された。だし巻き卵、今までは作ったことがないと記憶しているが、「だし巻き卵専用フライパン」なるものを使うことで、初心者もすごくいい感じにだし巻けていた。

だし巻き卵をつくる手前で、TKG、いわゆる「卵かけご飯」も作って食べた。卵かけご飯というのは実に簡素でありながら、奥の深い「料理」の一つだ。漫画「美味しんぼ」に登場する主人公・山岡士郎の父であり、会員制高級料亭「美食倶楽部」の主宰である海原雄山のモデルとなった美食家兼陶芸家の北大路魯山人は、この卵かけご飯について、まさに「究極」のメニューを打ち出している。

おそらく板前にキレている海原雄山
北大路魯山人

それは、卵を割ってご飯の上に落とす前に30分ほど自分の掌の中で卵を握って温めるという手法だ。これによって熱々のごはんの香りを邪魔せずに、卵の豊かな風味が味わえるそうだ。このレシピを調べてZ世代の僕はこう思う。

「なんて手間のかかる卵かけご飯なのだろう」

と。もとより卵かけご飯なんていうものは、手軽にササっと食べれてしかも栄養価が高い、というある意味時短レシピの一角を担っていると僕は思っていたが、まさか卵かけご飯ごときに30分も時間をかけるなんて、、、そんなの、洗い物まで終わっちゃうよ、、、

しかしこの「手間をかける」という意味でも、魯山人は料理、あるいは食材と真剣に向き合っていたのではないだろうか。30分もかけて卵を手で温める。そうすることでしか得られない旨味や美味しさが、手間という「時間」を超越した領域にまで僕らを連れて行ってくれる。僕もそんな魯山人のように、手間を惜しまずにそこから本当の価値を見出せるような人間になりたいものですな。

例によってまたもよく分からない文を書いてしまった。「美味しんぼ」ホントに面白いのでぜひぜひ観てください。

今日の一曲
The Beatles/Please Please Me

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