未来

7/8(月)
昨日のショックなのか、昼頃に起床。一緒に寝たはずの君はもう部屋にはいなかった。

最近は自由すぎるせいか、「本当にこれでいいのか?」という想いが強くなってきた。単位は残り4つ。本当に全部とれるのだろうか、今までの履修に間違いはなかったのか、選択漏れなどはないのか。色んな心配事が頭をよぎる。5月ごろ、心配が頂点に達し、教務課へ相談しに行った。

「この履修で卒業は大丈夫そうですか?」

と聞くとそいつは首を傾げながら

「うーん、大丈夫じゃないですかねえ」

こんな大人にはなりたくないと思った。お前いくらなんでも適当すぎるやろ。人生かかっとんねんこっちは。と心の中で恫喝し、苦笑いで教務課を去った。さて本当に僕は大学を卒業できるのかな?(絶対にする)

昼過ぎからは友達と旅行の計画を立てた。飛行機にホテル、レンタカー。どれも旅の醍醐味である。合計してみると意外にも金額が安いことに気づいて喜々。浮いた分を何に使おうかなんて考えていた。早くお金貯めよう。

そしてここからが今日のメインイベント、飲食バイトである。18時から23時のシフト。こんなものは4年目の僕にしてはなんてことのない日常なのだが今日は一味違った。

金庫も閉め、ひとしきり作業が終わったところで、若い社員の人と帰りが一緒になった。新卒で確か4年目なので、少し先輩ではあるが飲食現場では同期である。この前の土日は忙しかったとか、かき氷の売れ行きはどれぐらいかとか、他愛もない会話をしていた。ひと段落着いたところでその人が

「そういえば私、退職するんだよね、この会社。」

えっ!?

めちゃくちゃでかい声が出た。そりゃまあ、驚くよね。聞くところによると春ごろから退職願を出していたらしく、色々あって時間がかかり、今月いっぱいで辞めるそうだ。正直、飲食業界はかなりブラックだと僕は思う。勤務時間も日数も、決して自由でないし、お盆とか夏休みとか国民の休日だって働く日もある。長く働ける人は、やっぱりタフな人なのだろう。こんなことは飲食バイトをはじめて早々に気づいていた。すこし、彼女の胸の内を聞いてみた。


僕「やっぱここってブラックというか、飲食って全体的にブラックですよね」

彼女「まあそれも少しはある。けど、ブラックだから辞めるっていうよりかは、他にやりたいこともあるんだよね」


だそう。僕としては少し意外で、真っすぐに思えた。仕事から逃避するのではなく他にやりたいことを見据えているみたいだった。


僕「転職先とか決まってるんすか?」

彼女「いや、決まってない(笑)やから半年ぐらいはニートするかも(笑)」


いや肝据わってんなあ。僕としても新しい仕事を見つけた上での退職だと思っていたが、まさかの無だった。忙しくて転職活動できなかったのだろうか、なんて考えが僕の頭に浮かんだ。

まだまだ色々と喋ったが、ここでは割愛する。突然のお別れ宣言に、最後まで驚きが隠せなかった。しかし、新たな未来へと進もうとしている彼女の姿が、いつになく眩しく見えた。これも一つの「決別」であり、「挑戦」でもある。新しい環境でまた1から頑張ろうとする彼女を見て、少しだけ勇気が湧いてきた。

「じゃあ、お盆も頑張ってね。お疲れ~(笑)」

と、陽気な彼女。

「そこだけは手伝いに来てください!!」

と、僕は笑いながら迫った。彼女は車に乗り、僕は自転車を漕いだ。乗るものは違えど、僕たちは前に進んでいることだけは確かだった。きょうは夜風が少し、暖かかった。今までありがとうございました。次、どんな仕事に就くことになっても、応援しています。

―未来




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