櫻坂46 4th TOUR 神奈川公演感想 Gacha Popガールズグループの確立への期待
簡易まとめ
・めちゃくちゃ楽しいじゃん
・Gacha POPを追い求めて視覚化したライブ
・皆ライブ見に行こう
ライブを見に行くまでの経過
当方、映画と音楽全般が好きな櫻坂ファン。これまでB’z、木村カエラ、浜田麻里、クイーン+アダム・ランバート、U2、THE YELLOW MONKEY、ポルノグラフィティ、ずっと真夜中でいいのに。、乃木坂などのライブに参戦してきました。配信を含めるとZARD、赤い公園、嵐、Buono!、Mr.Childrenなどもあります。
それなりにライブの目と耳が肥えている自信はあり、会場規模もライブハウスからホール、アリーナ、ドーム、スタジアムと一通り経験しています。経験上「ライブの満足度は人気や売り上げよりもキャリアの長さに比例する」という認識があり、今人気真っただ中のアーティストよりはベテランを好んでいます(単に人気アーティストのライブが取れないという事情もありますが)。
一方櫻坂については、CD音源やMVは大好きですが、ライブ参戦歴は2022年の東京ドーム公演1日目のみで、配信もほとんど見てきませんでした。唯一参加した東京ドーム公演で開演から終演まで誰も立たない極寒の地蔵エリアに当たってしまったうえ、ライブ自体の完成度も高いとは感じられず、数年前の乃木坂の京セラドーム公演でも似たような思いをしたので、坂道グループは現地より音源で十分だと感じていました。
ただ、昨年以降の櫻坂楽曲のクオリティの高さと勢いの良さからどうしても捨て置くことができず、これで盛り上がれなかったらもうやめよう…くらいの気持ちで今回のツアーの神奈川公演1日目だけオフィシャル先行に応募。かなりの倍率の中当選できたのはいいものの、その後ポルノグラフィティとクイーンのライブを浴びてしまい、特にクイーンのクオリティが生涯ベストライブの一つに入るほどの凄まじいもので、ライブへのハードルが上がりまくりの状態に。
ここからどう楽しめばいいんだ…まあ期待しすぎず構えとくか…くらい、楽しみ半分と不安半分で臨みました。おおよその雰囲気をつかむためにセトリも事前に入れてしまいました。スタンド最上階最後列の天空席でしたが、いざ入って見ると小ぶりなぴあアリーナMMのおかげでステージにとても近かったです。
神奈川公演1日目セットリスト
0.OVERTURE
1.マンホールの蓋の上
2.摩擦係数
3.BAN
4.Anthem time/ドローン旋回中
5.Don't cut in line!
6.コンビナート
7.何度 LOVE SONGの歌詞を読み返しただろう
8.油を注せ!
9.Cool
10.承認欲求
11.静寂の暴力
12.泣かせて Hold me tight!
13.Start over!
14.何歳の頃に戻りたいのか?
15.Buddies
16.櫻坂の詩
トータル2時間ちょうどくらい。やや短めですが一般的なホール、アリーナ公演の範囲内いう感じでした。
ライブで印象に残った曲たち
1.マンホールの蓋の上
おそらく参戦した誰もが面食らったであろう、あのオープニング。
バァーーン!バァーーン!
デンデンデンデンデンデンデンデン…
Whacha say we do?
Whacha say we do?
Whacha say we do?
ジャジャジャジャジャジャジャジャ!
(記憶うろ覚え)
なんですかこれは。事前に1曲目って知っててもなお頭抱えたわ。
この曲、リリース当時の印象としては好みのロックサウンド強めの曲だった一方、全体的に古めの暑苦しいアレンジ(2000年代後半のSCANDAL初期、さかのぼればアン・ルイスみたいな)が目立ち、今の櫻坂が目指す方向に合わないのでは?と思っていたのですが。
アリーナのスピーカーで最大級に毒々しく響かせた打ち込みブラスとリズムに真っ赤な照明、じりじりステージからせり上がるメンバーのクラップ煽りで、完全に近未来ロックに様変わりです。音源で最初に聴いたときに感じた、King Gnuの飛行艇っぽさが強まっていました。
2.摩擦係数
メインディスプレイを分割してダブルセンターの森田さんと天ちゃんをバチバチに映し出す映像演出すげえな…と思っていたら天ちゃん一行がセンターステージに移ってました。
以後の曲もそうですが、とにかくステージ間の移動が多く、天空席からでも目が足りないほど。アリーナ真ん中で見てたら首痛めそうです。ブレイクダンスパートで歓声が上がるのいいですね。「ま!さ!つ!」ってコール箇所だったんだ。
7.何度 LOVE SONGの歌詞を読み返しただろう
スモークと真っ白な照明で幻想的に浮かび上がるセンターステージに、MVを再現する机と椅子が置かれてスタート。村山さん、映像で見たときから思っていましたが本当に長身で目立ちます。
また、アリーナ前方を囲むようにセンターステージと繋がるロの字型の花道全体にもLED照明が埋め込まれており、シンプルで客席と近く設計されたステージを見事に盛り上げていました。
8.油を注せ!
冒頭の武元さんのソロダンスがめちゃくちゃかっこいい。普段のグループの曲とは違い、アメリカンなストリートダンス、HIPHOPを主軸にした動きでしたが、のちに本人振り付けと判明。すげえなおい。こういうTAKAHIROさん色薄めの振りも定期的に見せてほしいです。
ソロダンスでガンガン盛り上げたところで残りのメンバーが横一列に登場→イントロの最初の音をカットして一気に曲へ突入、の流れも素晴らしかったです。さらにライブ用のリミックスなのか、配信音源では聞こえなかった音もたくさん聞こえてきます。ここらへんで気づきました。
「この人たち、曲のライブアレンジえぐくね?」
9.Cool
ステージと花道をフルに活用した照明ですが、ここまでは曲のイメージに合わせて一色に輝き、点滅するときも直線的で、同系統の色のレーザーが降りかかる、という流れでほぼ同じ。さらに言えば結構な頻度で赤一色。少しワンパターンな感じもしなくはないのですが、ライブ折り返し地点でこの曲が見事なアクセントを加えていました。
キッチュなMVに寄せた何色もの照明が曲線的に入り混じるライティングに変わり、ステージ全体の雰囲気をカオスなものにガラリと変えてきました。カップリングでありながら直近1年でライブの定番となりつつある曲ですが、曲自体の良さのみならず、演出面のスパイスとしても絶妙で、採用されるのも納得です。
10.承認欲求
音源からライブ化けしたランキング1位。これでもかと響かせる重低音の嵐に縦横無尽のダンスパフォーマンスで息もつかせぬ迫力でした。間奏のダンスパートが伸ばされ、谷口さんと山下さんがポップアップ装置から飛び出し、さらに森田さんも加わって全員で踊り始めたところで鳥肌が立ち、改めて気づきました。
「この人たち、曲のライブアレンジえぐくね?」
11.静寂の暴力
噂に聞いてた無音消灯演出。センターステージに辿り着いた山下さんが手を叩いたかと思えば、なんとワンコーラスほど完全無音で全員のダンスが入りました。さながら三浦大知パフォーマンスです。コンパクトなぴあアリーナ、また速すぎないテンポの曲だからこそ、息遣いや拍手、足音の残響がもたらす緊張感が半端なかった。照明も最小限に抑え、センターステージが能の舞台のようでした。
シンプルなステージながら尖りまくらせた音響とライティングで圧倒的に「足し算」の演出で殴り続けてきたのが、ここへ来て極限の「引き算」演出。前の曲からの落差が激しすぎない?
正直この曲、神秘的なトラックの良さに反して、くぐもったような乗せ方のボーカル、何年繰り返してるんだと言いたくなる拗らせ歌詞、バタバタの振り付けで評価がいまいち上がらなかったのですが、このライブ演出を見せられると唸ります。セカオワやRADWIMPSがたまに出す内省的なデジタル曲のような重みがありました。大事なことなのでもう一度言います。
「この人たち、曲のライブアレンジえぐくね?」
12.Start over!
言わずもがなの超名曲。これを聴くために来たと言っても過言ではありません。最上階最後列でビビりながら跳んだスタオバジャンプは忘れられない思い出です。まじで怖かったよ。イントロじらしまくり演出も現地で浴びると凄まじいですね。
「この人たち(以下略)」
見違えるほどの満足感の理由とは
ライブ終演後、これほど圧倒され満足して帰ることになるとは思いもよりませんでした。一昨年の東京ドームで、大がかりなステージの上で全力のパフォーマンスをしながらも、その迫力を客席まで伝えきるのに苦心していたような姿とはまるで別人でした。ドームとアリーナの規模の違いとか、声出し解禁の有無とか、色々な環境要因はあると思いますが、にしても説明つかないレベル。こんなに凄かったっけ?
個人的な推測ですが、今回のライブの満足感の理由として
・グループとして目指す音楽性の明確化
・それに合わせて最適化されたセトリとステージ演出
の二点が重要だったと思います。
やや脱線になりますが、近年の日本では、生バンドの音と打ち込みの融合・ダークでマイナーなメロディー・頻繁な転調や変拍子・フラットなボーカルといった、それまで主流だったいわゆる「J-POP」と異なる流行音楽が発展してきています。代表的なアーティストが米津玄師、King Gnu、Vaundy、Ado、YOASOBI、藤井風などで、さらにTikTok発のimase、ちゃんみななども加わります。昨年Spotifyが、これらのアーティストを中心にしたヒットソングのプレイリストを「Gacha Pop」と命名したことが話題になりました。
そして、櫻坂が主に昨年以降リリースした楽曲には、このGacha Popのトレンドを強く意識していそうなものが目立つと感じます。
これも推測ですが、欅坂からの改名に伴い路線を模索する中で、ただ激しいだけの曲はできない、王道のJ-POPは乃木坂日向坂に押さえられている、K-POPグループと正面から戦うのも難しい…となったときに、(当時は名前もなかったと思いますが)「Gacha Popとダンスミュージックを合わせればいいんじゃない?」と発想したのではないでしょうか。
そして先駆け的に生まれたのが一昨年の摩擦係数・条件反射で泣けて来るなどで、昨年のStart over!で開花・確立したと捉えることができます。
この流れを踏まえて今回のライブを振り返ると、最新シングルの収録曲にあえてこだわらず、櫻坂のGacha Pop路線曲を主軸に選んで構成したセトリのように思います。ややレトロな雰囲気の漂うカップリングのユニット曲たちは1公演につき1曲に絞り(おそらく準備期間の短さへの配慮も兼ねている)、これまで中盤~後半に配置されることの多かったバラード曲はゼロで、そのポジションに上記のユニット曲、油を注せ!、泣かせて Hold me tight!などのミドルソングを入れていました。ファンの声援が一段と上がる王道アイドル曲も、Anthem timeとドローン旋回中をメドレーにして一つにまとめるなど、客席の温度を上げるためのワンポイントに徹していたのが印象的でした。
また全体を通じ、話題にもなっていた通りかなりの音量を出していて、アリーナの音響を存分に活かして重低音が強調されるミックスとなっていたほか(逆にボーカルが埋もれ気味でしたがそれは割り切りだとも思いました)、ライブオリジナルのイントロ、間奏の音源も多数導入されていました。おかげで、CD音源ではサビメロが地味に聞こえることも多かったカップリング曲たちまで存在感が強まりました。どの曲にも見せ場がありかつ統一性も感じられ、Gacha Popガールズグループという明確なコンセプトで一点突破したセトリだったと思います。
それを後押ししたのが、ステージの作りとライティングに代表される演出でした。大きな装飾物はセンターステージのSKZを模したオブジェだけで、それも適宜曲に合わせて空中に引き揚げ、照明の一つに転用できていたのが面白かったです。アリーナ前方を囲むようにコンパクトに設計された動線も適切なサイズで、ステージ各所でメンバーの躍動が伝わり、さらに花道まで全面に仕込まれた照明が迫力を増していました。激しい曲を格好良く見せるだけでなく、Coolはカラフルに、なんラブや静寂の暴力は神秘的に見せることで、統一された構成ながら飽きさせないスパイスが効いていたと思います。
(自分は現地で見ていないですが、大阪・名古屋公演ではメインスクリーンの壁をなくし、ステージ裏まで客席にした360°ステージだったようです。簡素なメインステージだからこそできる設計で、これも見事だと思いました)
グループを勢いづかせた独自の音楽路線をライブでもしっかりと貫き、それに最適化されたサウンドと演出、さらに力負けしない生身のパフォーマンスで観客を没入させる。パーフェクトじゃん。東京ドームや新せ界で感じた従来のコンセプトの曖昧さ、バラつきを見事に乗り越えてるじゃん。
もちろんポルノやクイーンのような一級品の生演奏や歌声が出てくるわけではないですが、自分たちの持ち歌をCD音源以上に洗練させ、見たことない聴いたことないワクワクとスリルを与えてくれた点は共通しており、方向性は違えど決して悪目立ちしない、見事なライブだったと思います。
二度目の東京ドームとその先に向けて
本ツアーの追加公演として、6月に再び東京ドーム公演が予定されています。大枠はここまでのアリーナ公演と同じ構成だと思いますが、全く同じことをドーム規模でやると盛り上がりにくくなるのが難しいところです。ステージサイズが今と同じなら小さすぎるし、かといって広げすぎても躍動感が落ちてしまう。ここは演出スタッフたちの腕の見せ所だと思います。何が飛び出してくるのか、今なら不安より期待と楽しみが大きいです。一度スタジアムを経験している強みもありますし。
また、今回はGacha Popのコンセプトを全面に出した構成で一つの成功パターンを見ましたが、周囲を見渡せば国内でも強力な新興勢力のガールズグループは多数あります。J-POPやK-POPの枠にとらわれない「X-POP」を標榜するXG、日プ女子からスタートしたばかりのME:Iなど、後発のグループにファンの規模や再生数で及ばないのもまた事実。規模が大きければいいという問題でもないですが、自分を含め既存のファンダム内部での熱量が上がっている時期だからこそ、その外側へアクセスできる機会が訪れてほしいと思っています。具体的なアイデアがあるわけではないけど、とりあえずここまで読んでくださった方に一言。
櫻坂面白いよ!ライブ見に行ってみて!
おまけ
ライブのたびにコールとペンライトが議論になりますが、色んなモチベーションの人が混在してる今の会場の空気、個人的には結構好きです。まさにGacha Popって感じじゃないですか!
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