【決定】ルイス・ドビン獲得について思うこと【アストン・ヴィラ2024年夏移籍考察(4)】

アストン・ヴィラサポーターの皆さん、そしてプレミアリーグや欧州サッカーのファンの皆さん、2023/24シーズンも応援お疲れ様でした。

2024年夏のオフシーズンは、アストン・ヴィラに関する移籍の噂がある選手や退団の可能性がある選手について個人的な見解を「note」で更新していこうと思います。

第4回はエバートンからの加入が発表されたルイス・ドビン(21)についてです。

11歳からトフィーズのアカデミーで育ったウイングのプレースタイルやアストン・ヴィラでの起用法について綴ります。

(1)移籍の流れ

6月23日にアストン・ヴィラはエバートンからルイス・ドビンを非公開の移籍金で獲得したと発表しました。移籍金は1000万ポンドと想定されています。契約年数や背番号は不明なので、続報があり次第更新していきますね。

前日にティム・イェロブーナムがエバートンに移籍しており、結果的にPSRの観点から互いの帳簿に利点がある移籍となりました(売却益は全額上乗せできるが、選手獲得の際に使用した移籍金は数年にわたっての減価償却となるため)。

ただ、重要なのは双方ともにピッチ内でも有益な移籍であることです。エバートンはアンドレ・ゴメスが退団し、アマドゥ・オナナにも移籍の可能性があることから今夏に中盤の選手を補強する可能性が高い状況にありました。イェロブーナムは定期的な出場機会を求めていたと報じられており、彼らの補強ポイントと合致します。

一方のドビンもション・ダイシ監督の下で出場機会を伸ばすことができていませんでした。アストン・ヴィラのトップチームには典型的な右利きのウインガーがおらず(ジェイコブ・ラムジー、モーガン・ロジャーズ、エミ・ブエンディアは中央で活きるタイプ)、昨夏もニコ・ウィリアムズ(アスレティック)の獲得を狙っていました。こうした背景を踏まえると、以前からドビンのようなタイプの選手を今夏の移籍市場で獲得する可能性がありました。

(2)ルイス・ドビンの経歴

ドビンはストーク生まれの21歳。世代的には2020/21シーズンにアストン・ヴィラU-18がFAユースカップを制した時のメンバーと一緒で、年代別代表にてカーニー・チュクウェメカやアーロン・ラムジー、ルイ・バリーらとプレーしていました。バイエルン・ミュンヘンのジャマル・ムシアラやアストン・ヴィラへの加入が決定的となっているユベントスのサミュエル・イリング・ジュニオールとも一緒です。

ドビンは2021/22シーズンにエバートンでトップチームデビューを飾り、翌2022/23シーズンは当時3部のダービー・カウンティへとローン移籍します。ここで元アストン・ヴィラのジェームズ・チェスターやコナー・フーリハンらと同僚となり、準レギュラーのような形で1シーズンを完走。3得点4アシストと19歳の選手にしてはまずまずの成績を残しました。

迎えた昨シーズンはプレシーズンで好パフォーマンスを披露し、ダイシ監督きっての希望でエバートンのトップチームに残留。主に途中出場から流れを変える「ジョーカー」として起用されましたが、シーズン後半戦は足首の負傷によってなかなかコンディションが上がらず、プレミアリーグでは12試合の出場に留まりました。

それでもチェルシーとの第16節では試合終了間際に勝利を決定づけるゴールを記録。これがエバートンでの初ゴールとなり、当時残留争いをしていたチームを助ける重要なゴールとなっています。

(3)ルイス・ドビンのプレースタイル

彼のプレースタイル一言で表すと「クイックネスに優れたウインガー」です。シンプルに足が速い。そして上手い。

対人に強いフルバックの場合は話が変わってきますが、一瞬の加速力とダブルタッチなどのテクニックで果敢に相手選手へ仕掛けます。このメンタリティも評価したいです。

次に、右足のキック精度も高いです。高い確率で狙ったところにクロスが届きますし、内巻きのコントロールシュートも持っています。

最も得意なポジションは左ウイング。縦に仕掛けてからマイナスへの折り返しとカットインからのシュートやクロスという複数の選択肢があり、どちらかに偏ることもないです。

右ウイングでもプレーできますが、基本的に縦の選択肢しかなくなるので、怖さは減ります。彼が出ている試合をプレミアリーグはすべて見ましたが、左ウイングで起用された方が圧倒的に良いですね。

一番好印象だったのはトッテナムとの第23節。守備意識も高く、ピッチに入って早々にタックルでボールを奪うと、その直後にカットインから相手ディフェンスラインとGKの間に見事なクロスボールを届けました。シェルミティが外したのでゴールとはなりませんでしたが、流れを変えるという意味では効果的なプレーを連発しています。

一方で「スタミナ」を含めた「フィジカル」には伸びしろを残しています。かなり細身な選手であり、フィジカル的な消費が大きいエバートンで出場機会が伸びなかったのは、こうした課題があったからでしょう。

ただ、アストン・ヴィラはかなりフィジカルトレーニングを重要視しているチームなので、克服されるかもしれません。まだ若い選手なので、まずは身体作りから重点的に行い、90分間走れる選手へと成長してくれることを願っています。

これはドリブラーあるあるですが、ややボールを持ちすぎるところがあります。ただ、これもアストン・ヴィラの場合はファイナルサードで誰がどこに立っているのかが細かく整理されているので、慣れれば周囲の選手との連係も問題ないと思います。

エバートン時代の先輩であるルカ・ディニュや年代別代表でチームメイトだった選手もいるので、適応にも困らないでしょう。

(4)アストン・ヴィラでの起用法

ここからは実際の起用法を見た訳でも、起用法のプランを聞いた訳でもないので、完全に自分の想像です。

先述した通り、基本的には左サイドでの起用となると思います。左サイドから内側に絞ったプレーも得意で、アストン・ヴィラの攻撃的な選手に必須なターンも得意。ただフィジカルには伸びしろを残しているので、相手を背負った際のプレーは得意とは言えません。

序列的にはジェイコブ・ラムジー、モーガン・ロジャーズ、エミ・ブエンディアに次いでの立場となる可能性が高く、ジョン・マッギンやユベントスから加入予定のサミュエル・イリング・ジュニオールやイアン・マートセンもこのポジションでプレーすることができます。

ただ、ここで名前を挙げた選手たちはいずれも複数のポジションでプレーできる選手なため、明確に4番手、5番手となるわけではありません。プレシーズンマッチでウナイ・エメリ監督がどのように起用するのかをみて、これらを判断していこうと思います。

来季からトップチームに関わるのが理想ですが、同じポジションのライバルが多いこと、スカッド的に完成されたチームであることを踏まえると「残留:25%」「ローン移籍75%」ぐらいに考えています。先述した通り、フィジカル的に未完成な選手なので、まずは主力としてチャンピオンシップのクラブで活躍するというのが、トップチーム定着に向けて大きな一歩となると思います。

僕個人は「即戦力」というよりも「2、3年後の戦力」としての獲得だと思ったのでこのような予想になりましたが、モーガン・ロジャーズがあっという間にフィットしたようにエメリの手腕によって急成長を遂げる可能性もあります。彼は「戦術家」というイメージが強いですが、選手の潜在的な能力を引き出すことにも秀でており、クラブにはロドリという個人戦術専門のコーチもいます。

彼らがドビンをどのような選手へと成長させてくれるのか楽しみです。

新加入選手についての考察も随時更新していこうと思うので、よろしければXのアカウント(@yoichiro_yasu)やこちらの「note」をフォローしていただけると幸いです。

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