【決定】ティム・イェロブーナム移籍について思うこと【アストン・ヴィラ2024年夏移籍考察(3)】

アストン・ヴィラサポーターの皆さん、そしてプレミアリーグや欧州サッカーのファンの皆さん、2023/24シーズンも応援お疲れ様でした。

2024年夏のオフシーズンは、アストン・ヴィラに関する移籍の噂がある選手や退団の可能性がある選手について個人的な見解を「note」で更新していこうと思います。

第3回は6月22日にエバートンへの移籍が発表されたティム・イェロブーナムについてです。

6月30日に21歳の誕生日を迎えるポテンシャル抜群なMFについて思うことを綴ります。

(1)移籍の流れ

アストン・ヴィラは6月22日にティム・イェロブーナムがエバートンに完全移籍すると発表しました。移籍金は非公開ですが、900万ポンドと推定されています。契約期間は2027年夏までの3年間。

昨シーズンに放出したアカデミー組であるキャメロン・アーチャー(ブレーズの降格に伴い今夏の復帰が決定)、アーロン・ラムジー、ジェイデン・フィロジンの3人には買い戻しオプションが付いていますが、イェロブーナムの移籍のニュースにはこのオプションが付くことが報じられていません。ストレートでの放出が濃厚でしょう。

なお、アストン・ヴィラはエバートンからルイス・ドビン(21)の獲得を狙っているそうです。こちらの移籍の噂に関しては別の機会に「note」にまとめようと思います。

(2)イェロブーナムの経歴とプレースタイル

新天地となるエバートンーのサポーターも見てくださっているかもしれないので、前提として彼の経歴とプレースタイルについてまとめます。

①経歴

まずは名前から。英語では”Tim Iroegbunam”と日本人からすると読み方が分かりにくいスペルです。

いくつか読み方の説がありますが、僕個人は現地のコメンタリーの発音を聞いてティム・イェロブーナムと訳しました。

プレミアリーグでは恒例になりつつある「本人が自らの名前の読み方を解説する」企画もあるので、自らの口で名前が語られることを願います。

出身はアストン・ヴィラが本拠地を構えるバーミンガムで、ナイジェリアにルーツがあります。18歳で迎えた2021年夏の移籍市場でウェスト・ブロムのアカデミーからフリートランスファーで加入しました。

当時の移籍の経緯としてあったのが、アストン・ヴィラのアカデミー責任者を務めるマーク・ハリソンの存在です。彼はウェスト・ブロムでも同職を務めており、恩師を追っての移籍となりました。ルイ・バリーや(←バルセロナ)やリノ・ソウザ(←アーセナル)、ジャマル・ジモー(←ウェスト・ブロム)らと同じルートです。

移籍初年度の2021/22シーズンにスティーブン・ジェラード監督(当時)の下でトップチームデビューを飾りました。シーズンオフにはイングランド代表の一員としてU-19欧州選手権に出場。アーロン・ラムジー、カーニー・チュクウェメカとアストン・ヴィラトリオで中盤を形成し、優勝に大きく貢献しています。

続く2022/23シーズンはQPRへとローン移籍。同シーズンに監督に就任したマイケル・ビール(当時/11月に辞任)は、前シーズンまでジェラードのアシスタントを務めており、そのコネクションでの移籍となりました。第8節前に加入してリーグ戦32試合に出場と、ほぼ1年間主力としてプレーしています。

迎えた2023/24シーズンはプレシーズンで負傷し、アメリカツアーにも参加できずに開幕を出遅れました。シーズン初出場が12月26日のマンチェスター・ユナイテッド戦だったのはそのためです。

後半戦になると、冬の移籍市場で同ポジションのレアンデル・デンドンカーがナポリへとローン移籍します。この移籍についてウナイ・エメリ監督は「4ヶ月間、どのようにコンペティションへと臨むかを深く分析しようとしたとき、私はデンドンカーを去らせ、ティムをここに残すことを決めた」と語り、彼がチームの構想の1人であることを明かしました。

しかし、2月にブバカル・カマラが負傷離脱した後もファースチョイスになることができず、エメリはジョン・マッギンをフランス代表MFの代役として起用しています。イェロブーナムがポジションを確保できなかったのは「アピール不足」によるものが大きいです。

決してチャンスがなかったわけではありませんが、スタメンの座を掴むほどのプレーを見せることができていないのが実際のところ。プレミアリーグで先発を飾ったのは、大幅にターンオーバーした第31節マンチェスター・シティ戦のみで、すべてのコンペディションを含めても2試合しかスタメンに名を連ねることができませんでした。

②プレースタイル

アストン・ヴィラでは基本的に[4-2-3-1]のボランチの一角で、守備的な役割を担っていました。

最大の魅力はリーチの長さを活かしたボール奪取能力。シンプルに足が長く、アジリティもあるので無理が効くタイプです。

アストン・ヴィラでは基本的に「潰し屋」のような役割を担っていましたが、オンザボールのプレーも上手いです。狭いエリアでボールを受けることや相手のプレッシャーもあまり苦にしないタイプ。相手MFを背負った状況でのターンやストライドの大きなドリブルでの持ち運びなど、プレスを回避するプレーも得意と言えるでしょう。

QPR時代はドリブルでの持ち運びを活かすべく、サイドハーフで起用されたこともありました。彼の特長をどのように活かすかによって、今後のキャリアは大きく変わっていきそうです。

また、トップチームで見ることはありませんでしたが、パンチ力のあるシュートも持っています。今年3月に行われたU-20代表の試合ではダイレクトで強烈なミドルシュートを沈めました(相手GKはアストン・ヴィラ所属のOliwier Zych(こちらも読み方が不明)です)。

次に課題についてです。まだ粗削りな部分も多く、1試合平均のファウル数(4.55)がタックル数(3.54回)を上回っていることからもわかるように、細かい守備技術の向上は必須です。

ドリブルで抜かれる回数も1試合平均で2.53回と多く、まだプレミアリーグのスピードにはアジャストしきれているとは言えません

今の彼が抱える最大の課題が「途中交代から試合に入れないケースが多い」ことです。彼の悪いところが詰まっているのが第27節ルートン・タウン戦。79分に途中交代でピッチに入ると、そこから5分も経たないうちに3つのファウルを与えました。

前提として、この試合でアストン・ヴィラは敵陣からのセットプレーで2失点を喫しており、ベンチからはアルフィ・ダウティーの左足を警戒して「なるべくセットプレーの機会を与えない」という指示が出ていました。

その中で試合に入ることができなかったイェロブーナムは集中力を欠くプレーをしてしまいました。他の試合でもイージーなパスがズレてタッチラインを割るなど、この「集中力」の部分には課題を残しています。

ただ、課題に挙げたことは「経験」で補えると思います。期待されているとは言え、まだ20歳の選手です。多少は我慢しての起用があるかもしれませんが、アジャストできれば問題ないと思います。。ポテンシャル抜群な選手なので、多くのことを吸収することができれば、ビッグなプレイヤーになることでしょう。

(3)この移籍についての個人的見解

将来性がある若い選手なので残念ではありますが、序列的にも放出は仕方ないと思います。

今季はデンドンカーの退団にカマラの離脱と、彼にとってはこれ以上ないチャンスが訪れました。しかし、それを活かすことができず、シーズン終盤はほぼ構想外だったカラム・チェンバースが優先して起用されています。

個人的には今夏の移籍市場のテーマを「エメリが求めるプレースタイルに合わない選手の放出」と「少なくなったプレースタイルに合致する20代前半の選手を補強」だと思っているので、放出には納得です。

素材的は抜群なので、今後どのような選手に化けるのか楽しみです。アストン・ヴィラを離れても彼のキャリアを追っていこうと思います。

新加入選手についての考察も随時更新していこうと思うので、よろしければXのアカウント(@yoichiro_yasu)やこちらの「note」をフォローしていただけると幸いです。

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