見出し画像

WRC 2023 Rd.2 Rally Sweden

白銀のスプリントバトル

ラリースウェーデンは、数あるWRCのイベント中、唯一のフルスノーラリーだ。
っといかにも最もな前書きで書き始めたけれど、下書きで保存したまま日にちが経ってしまい、すっかり雪解けタイミング。
今回はモンテカルロの時ほどの分量ナシ!もうメキシコが目前にまで迫ってきちゃったよ・・・・

ラリー全体の距離やコース設定については
昨年からストックホルムから大分北上し、ウーメオーを拠点としたラリースウェーデン
雪の量はバッチリで、昨年はロバンペラがブッチギリの優勝をさっらことも記憶に新しい。
またこのスウェーデンでは、我らがカツタネンこと勝田貴元選手が初のワークスノミネート出走、いよいよここまでの育成の結果を示す段階へ来た。


ラリースウェーデンの展開

ディフェンディングチャンピオンのロバンペラは、いきなり出走順に足元を掬われることになった。初日から、出走順都合、特にリピートステージの他カテゴリーマシンが残した
トレッド幅の合わない轍に苦戦、ポディウム争いで不利を囲う。
またエバンスも、中々思うように展開を運べず、ロバンペラ同様にタイムが伸びない。
その中で、勝田はSS4で期待に応えるベストタイムを奪取、しかしその後のSS5で転倒を喫し、デイリタイア。
翌日に再スタートしたものの、結局最終日にエンジントラブルで戦列を去ってしまった。


タナックの底力

このラリースウェーデンを制したのはタナック
22年の開幕戦以来、勝利の無かったフォードに久々の美酒を届けたその力量は流石と言わざるを得ない。
出走順を生かし、自身のポテンシャルを遺憾なく発揮し、好タイムを連発したブリーンを抑えて、ステディながら攻め時を見極めた走りは19年王者の貫禄溢れるものだった。

ラリースウェーデン2023 最終結果
1位:オイット・タナック/マルティン・ヤルヴェオヤ(フォード)
2位:クレイグ・ブリーン/ジェームズ・フルトン(ヒョンデ)
3位:ティエリー・ヌービル/マーティン・ヴィーデガ(ヒョンデ)
4位:カッレ・ロバンペラ/ヨンネ・ハルットゥネン(トヨタ)
5位:エルフィン・エバンス/スコット・マーティン(トヨタ)
6位:ピエール-ルイ・ルーベ/ニコラ・ギルソウル(フォード)
7位:エサペッカ・ラッピ/ヤンネ・フェルム(ヒョンデ)
8位:オリバー・ソルベルグ/エリオット・エドモンソン(シュコダ) ※WRC2
9位:オーレ・C・ヴェイビー/トルステイン・エリクセン(VW) ※WRC2
10位:サミ・パヤリ/エンニ・マルコネン(TOKスポーツ) ※WRC2


各チーム其々の週末

◆トヨタガズーレーシングWRT
トヨタは、苦戦を強いられるスウェーデンとなった。
過去の展開から相性の良いラリーだが、モンテカルロの圧倒劇とは正反対の結果に終わった。
特にトヨタのテクニカルディレクターのファウラー氏は、出走順の不利がかなり大きかったと振り返っており、メキシコでの雪辱を誓っている。
勝田がSS4でベストタイムを奪うなど、スピードの面では劣っていたわけではないものの、ラリー運びが上手く嚙み合わなかった格好だ。

◆MスポーツフォードWRT
1年ぶりの勝利、マルコムの雄たけびをあげた。
YEEEEESSSS!!!!とウーメオーの空にお馴染みの勝鬨が響き
誰もがフォード久々の勝利に祝福を送った。
F1への関与を再び強めることになったフォード本家へのアピールとしても、これ以上の結果は無かった。
長年、フォードに代わって旗を振り続けたMスポーツの勝利は非常に価値のあるもので、こうした結果を引き寄せたチームとタナック、ヤルヴェオヤの仕事は賞賛されて然るべきものだ。
絶好調でタイムを刻み続けたブリーンを退けて勝ちを記録した冷静なラリー運びは、老舗らしい落ち着いたクールなラリーだったと言える。

◆ヒョンデ シェル モービス WRT
出走順を味方につけたブリーンが好走、ラッピも後に続いたがラッピは途中コースオフで後方へ脱落、ヌービルも体調不良の中善戦しポディウムを勝ち取った。
しかし、ブリーンのパフォーマンスを見れば、ブリーン自身にとって悲願のWRC初優勝もあり得たかもしれない内容だが
最終日に発したチームオーダーが、ヌービルのミスで失敗に終わり
ヌービルとしては、ロバンペラとポイント差が全く縮まらないという本末転倒の結果となってしまった。
メイクス的にはトヨタとの差をしっかり埋めたが、よりチーム内での権力を握ったヌービルにとっては理想的な週末では無かったであろう。
何よりも自身初のタイトルを渇望するヌービルにとって、ロバンペラと一切差が埋められなかったこのスウェーデンが、シーズン後半にどのような影響を及ぼすのか、経過に注目だ。


ラリースウェーデンのおわりに

【タナック貫禄の勝利】
流石の元王者、その能力を遺憾なく発揮してチームに美酒を届けた。
今年はまだまだタナックの優勝が見られるであろうと考えられる。だが次戦メキシコは最も不利な路面掃除役を強いられるため、可能性としてはクロアチアや地元エストニアだろうか。

【ブリーンはヌービルスペシャルと相性が良い】
21年シーズン特にそういう感じがあったが、22年のフォードでは一気に低迷、散発的なポディウムがモンテとイタリアであったものの
それ以外は、トヨタ育成枠の勝田にも負けるほどで
昨年のブリーンはお世辞にもエースドライバーとしての評価は非常に厳しい内容だった。
が、このスウェーデンはそれを払拭する強烈なタイムを並べ、名誉挽回を果たしたと言って良い。これを維持できれば、自身が公言する再びフルタイムドライバーとしてラッピを脅かす存在に十分なり得る。

【勝田選手好走も痛恨のリタイア】
SS4でのベストタイムで力量をしっかり発揮して見せたが
SS5で悔しい横転、そこからの最終日リタイアの引き金を引いてしまった。しかし、こうした速さと安定感のバランスを高めていくのは、本人も公言する通りの重要な課題。今回のスウェーデンを糧に、昨年は表彰台争いで悔し涙を飲んだポルトガルなどでの好走に期待がかかる。

【オリバーWRC2初優勝】
昨年のトップカテゴリーからの一時後退を払拭する勝利を挙げたオリバー
実力は申し分ないことを示すのに、非常に意味のある勝利だったと言える。WRC2とは言え、昨年Rally1で戦った経験をしっかり生かして、シュコダに露と消えた新型ファビアの初勝利を献上した。
今年、そうしたパフォーマンスの証明が一貫して続けられたならば、再びRally1で走る彼が見られるかもしれない。


次戦は灼熱のラフロード対決

次戦は3月16日~3月19日にかけて行われるラリーメキシコ
スウェーデンから打って変わり、灼熱のメキシコで文字通りの熱い戦いが繰り広げられる。
20年大会の前回王者のオジェが再びGRヤリスRally1を走らせる。
タナックが最も不利な砂利掻き役となることで、やや僅かに負担が軽減されるロバンペラがどう躍動するのか。シルバーコレクター返上を目指すヌービルが優勝を攫うのか。
次戦も非常に楽しみであると言える。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?