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梟月シャロンLast story③

②の続きです。未読の方は先にそちらをご覧下さい。
以下本編⬇️

「そうだったね。確かに僕が最初に君に逢った時、君はとても醜い化け物のような姿で泣いていた。魔法界では醜い姿の化け物なんのは普通にいるからそれは気にならなかったのだけど、泣いていたからどうしたのか気になって声をかけたんだ。『どうしたの?なぜ泣いているの?』ってね。
そうしたら君が、『アタシが愚かだったの…美しい姿に戻りたい…』と言ってきたから美しい姿に戻してあげたって感じだよね。」

「結果はマリオネットだったけどね。アタシは人間として美しい姿に戻りたかったのだけど。」

「僕はマリオネットを作り出す力しかないから…」

「まあなんであれ、美しい姿に戻してくれたことは感謝してるわ。」

「感謝してくれてるなら良かったよ。最初はとってもギスギスしたし、君もその不自由な身体を嘆いて僕に殺意を向けていただろ?まあなんやかんや最終的には楽しくサーカスがやれて良かったね。
でもそんな日々を過ごすうちに、僕はなんだか自分の心と身体がバラバラになっていく感じがしたんだよね。正直今戻してもらうまで記憶が断片的にしかなかったから、今の人生は楽しいんだけど、漠然とした不安や気持ち悪さが常に付きまとってる感じでさ。」

「だよな。だから俺もお前のその気持ちを感じて、そろそろ潮時かと思ったんだよ。
俺はお前の魂を改変した罪でどんどん力を失ってる。だから俺の力で生きていたシャロンも弱ってるだろうと思って様子を見に来たら案の定、病に伏せていた。だから今日この時、全てをお前たちに返してお前達の魂を弔って、俺も消えようと思ったんだ。」

「そうだったんだ。僕も今は身体も弱ってきているし、このまま生きて行くのも辛いと思うから、君の手で終わらせられるなら、ここで終わらせて欲しいかな。」

「アタシも、記憶を取り戻した以上、このまま人形として生きていくのは嫌だから、アタシの事も消してちょうだい。」

「わかった。2人とも迷惑をかけてすまなかったな。全ては俺が始めたことだったが、俺にはお前らを存在ごと消すことしか出来ねぇから、辛い時に何も助けになれなくて。」

「いいや、君は僕たちにたくさんの事をしてくれた。君が居なかったら僕は遠い昔の愛されない可哀想な子のままだったし、アイリーンと出逢うことも無かった。だから僕を愛して、生かして、巡り合わせてくれただけで充分だよ。
長い間、僕を愛してくれてありがとう、ジェームズさん。」

「お前は本当にお人好しだなシャロン。
…よし、それじゃあもうお別れにしよう。長い間俺のわがままで縛って悪かったな。どうか安らかに眠ってくれ。」

「うん、今までありがとね、ジェームズさん。アナタのおかげで幸せな時間を過ごせたよ。僕を愛してくれて本当にありがとう。」

「アタシはアンタに感謝することはさほど無いけれど、馬鹿な女だったアタシに人を見極めることを教えてくれてありがとう。おかげで最期は心も身体も美しく、凛と咲いて居られたわ。ありがとう。」

僕たちの言葉を聞いたジェームズさんは何も言わず、瞳に涙を浮かべながら、静かにコクリと頷いた。

俺は2人の言葉を聞いて涙が溢れたが、最期まで涙を見せまいとただ静かに頷き、2人に向かい手を翳した。

すると2人はたちまち灰のように崩れ消えていった。

誰も居なくなった部屋に、1人。

溢れる涙を止めながら、俺は2人に別れを告げた。

「今まで生きてくれてありがとう。これからはどうか安らかに2人仲良く眠ってくれ。」

俺はそう呟いて、新たな目的地へと向かった…。

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梟月シャロン・マリオネット・アイリーン編 END

④からは梟月storyオルタ編、シャロン・涙奇の物語へ移ります。(別世界線のお話ですが、時系列ですこの話のラストシーンと繋がっていますので良かったら合わせてお読みください。)