ウエットティッシュがいいんだよ
海外旅行に必ず必要なものと言えば、まずパスポート。次にSIMフリースマホと現金及びクレカ。その次がウエットティッシュである。できればアルコール配合とそうでないもの両方欲しい。
海外旅行でなくても国内旅行でも必ず鞄に入れてある。私は特に潔癖なわけではないのだが、屋台食べ歩きが好きなのでウエットティッシュは必携である。ちょっとそのお皿汚くない?みたいな時(アジアの屋台、皿洗う水が汚いのなんでなん?)もサッと拭いたりと必携なのである。コロナでアルコールジェルも身近になったが、そういう除菌とはまた別で単純に手と口を拭きたい、でもティッシュじゃねぇんだな。やっぱウエットの方がいいんだよ、汚れた手を拭くのはやっぱりウエットティッシュなのである。
で、このウエットティッシュを海外で人にあげたことが二度ある。
一度目はウィーン。出発しそうな観光バスに向かって走っていたお爺さんが転んで流血してしまって、その時にお渡しした。幸いおじいさんは軽症だったが、バスは無常にもおじいさんたちを残して出発した。
二度目はタイのバンコク。これもまた怪我をしたお兄さん相手に渡したのだが、この話わりと何回もしてるんだけど、フォロワーが好きだと言うのでまとめておきたいと思う。
タイのバンコクには大きな川が流れている。チャオプラヤ川、きっと名前くらいは聞いたことあると思う。メコン川とセットで聞けば「なるほど、アレね」となるあの川。
そんなチャオプラヤ川は街中を流れ川幅も日本の川と違って広くゆったりしていて、大陸の河だなーという川。色は茶色、大陸の川大体茶色。日夜色々な船が行き交っていて、物を運ぶ船はもちろん、クルーズ船、高級ホテルなんかは船が迎えに来てくれてチェックインが船中でできたりもする。他にも市民の足にもなる路線船や渡し船もあり、タイに一人旅観光で行った私は、向かいの岸の寺院に行くためにこの渡し船に乗った。
渡し船の値段は日本円にして10〜20円程だったと思う。正確な値段は忘れたがめちゃくちゃな安さで、途中沈むのでは??と心配になった事だけは覚えている。船体は本当に渡し船。渡すだけの船。柵はついてるだけで、ちょっと滑ったら落ちそう。写真が手元にないのでワットアルンの渡し船の紹介ページを参考にして欲しい。
先客は中華系の団体。おそろいのTシャツを着ていたので、何かの団体旅行なのだと思う。ワイワイして楽しそうな次に、もう絶対落ちたくない思いで一人手すりにしがみつきながら私は乗り込んだ。そしてその後に推定ドイツ人のカップルが乗ってきたのだが……
ゴンッ
と、痛そうな音が響いた。推定ドイツ人のお兄さんが船の天井に頭をぶつけたのである。なにせアジア人サイズの船なので、欧米の上背のあるお兄さんには天井が低めなのである。
蹲るお兄さんとその彼女(推定ドイツ人)
とりあえず船を出す船頭さん(タイ人)
どうしたと寄ってくる中華系の団体さん(多分中国人)
呆然と見てるだけの私(日本人)
船上はこのような図なのだが、お互いに使用言語がバラバラの為、全く言葉が通じない。通じないのだが、蹲ったお兄さんの後頭部から血が流れ出してきた。
これは一大事である。
言葉が通じなくても、頭から血を流すとか万国共通で一大事、一目瞭然で一大事である。
アワアワとするだけの私をよそに、初動が早かったのは中華系の団体さんたちであった。怪我したお兄さんを座らせて、流血部分をタオルを当てる。ファーストエイドに慣れた手付きだったのでもしかしたら医療系の団体なのかもしれない。心配そうな彼女さんにも言葉は通じてないけど声をかけて、心強い。
めちゃくちゃ優しい団体さんは、二人に声をかけつつ、何かしらを取り出した。どうやら薬らしい??のか、お兄さんの流血部分を指さす。
何分船の上は悲しいかな誰も言葉が通じない、欧米のカップルも???の顔でいると、団体さんは取り出した黒いカプセルを開け、中の粉をお兄さんの傷口に振りかけた……。
「え?」って顔のカップル
「え?」って顔の私
ニコニコ顔で空になったカプセル川に投げ捨てた団体さん(捨てんなや)
一部始終見てるのか見てないのか淡々と運転してる船頭さん
いやなにそれ、その黒いカプセル何?とか、中の粉何なん??とか聞きたいけど、言葉も通じないし、聞く間もなく振りかけられてるし、何なん?何が起きたん?ってなったけど、多分同じこと欧米兄ちゃんの方が思ってる。
呆然としてる兄ちゃんに対し、団体さんはみんなニコニコで、めちゃくちゃ良いことした徳積み顔という対比。
そんなことしてるうちに船は向こう岸についた。なにせ川を渡るだけ、所要時間は五分くらいなのである。
わたしはというと、もうどうしていいかわかんないから、とりあえず手持ちのウエットティッシュを彼女さんに渡した。
「ディスイズ……ウエット…ウエット」
って言いながら。
謎の粉薬を傷口に振りかけられ、血まみれの手を握って呆然とする欧米の兄ちゃんに渡すとしたら、やっぱティッシュじゃねぇんだな。ウエットの方がいいんだよ、(ケガした血で)汚れた手を拭くのはやっぱりウエットティッシュなのである。
海外旅行で持っていくもの、パスポートにSIMフリー携帯、クレカと現金の次にウエットティッシュ。誰かが血まみれになった時、サッと渡せるようにこれからも必ず持って行こうと思います。
いやでもそれより、あの黒いカプセルの中の粉なんだったんだと思う???
未だに謎
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