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漫談×一人芝居の新境地!「てつみちの『漫談劇』」ライブレポ

このnoteでは、ライターのもちづきもちこが文章、映像作家/デザイナーの石田ダダが撮影を担当し、全国各地のライブレポートをお届けします!

今回は、2021年12月26日(日)にヨシモト無限大ドームⅡにて開催された、ピン芸人・てつみちさんによるライブ「てつみちの『漫談劇』」のライブレポートをしたいと思います!
終演後にインタビューもできたので、そちらも合わせてお楽しみください。

※インタビュー部分での敬称略ご了承ください。

漫談と一人芝居、まだ見ぬ世界にお客様も魅せられる

15時15分、オープニングからスタート。

このライブの一人芝居パートの脚本演出を担当されているLLR・伊藤智博さんと、ゲストの先輩ピン芸人・おしみんまるさんが登場。このライブの趣旨説明をしてくださいました。

このライブはてつみちさんの漫談ののちすぐ一人芝居劇へ移るという、なんとも新しいスタイルのライブ。今回2回目の開催で、テーマは前回お客様が決めてくださった「銭湯」です。ゲストであるおしみんまるさんは、見守り役兼劇へも少し参加されるということで、「さっきちょっと練習しただけですけど……」とおっしゃっていました。「知り合って20年経ちますが楽屋で少し話す程度だから、そういうことだと思う」というぶっちゃけトークを伊藤さんがなだめる一幕もありましたが、そこでも笑いが起こっていました。

そして、待ちに待ったてつみちさんの一人舞台が始まります。

まずは漫談から。年末年始ということで実家帰省に関するお話をするてつみちさん。なんともアクティブなご両親の唐突なアメリカ移住によって、実家が遠く離れた異国の地になったことを嘆いていました。

そしてテーマである「銭湯」のお話へ。もともと銭湯のサウナが大好きだというてつみちさんは、その魅力を目を輝かせながら語っていきます。サウナには血流促進だけでなく肌の調子を良くしたり、ダイエット効果も期待できるとか。「その証拠に僕をご覧ください皆さん!どうです?……ずんぐりむっくりでしょう?」という自虐に会場からは笑い声が。

「街の昔ながらの銭湯には、そこを仕切っているようなヌシがいる」と語るてつみちさん。中野の銭湯で「あんちゃん、シャワーを浴びてからサウナに入れ」などと指図するおじさんと遭遇して、実はその正体がとある有名芸人だったそうです。衝撃的すぎて私は笑いつつ、「中野でヌシをやってるんだ……」と驚愕してしまいました。

有名人とも遭遇することもある場所・銭湯。とあるアイドルと遭遇した際にはついつい気になってしまい、「なんとしてでも股間を覗こう」と意気込んだそうです。男性の皆さんはあるあるなんでしょうか……。

サウナが好きで銭湯に通うてつみちさんですが、長年のお知り合いであるスタッフ・ナカムラさんは「銭湯に通う人は気持ちいいから通っている人だけじゃない」とてつみちさんに熱弁したそうです。なんでも、1年前業界特有の不規則な仕事が原因で離婚なさって、奥様とお子様と離れ離れになったそう。家族のために仕事を頑張っていたはずが、奥様からは厳しい当たり。お子様ともなかなか会えない……。そんなある日、銭湯に行って湯船に浸かると自然と涙が溢れ出してきたといいます。「『銭湯には泣きに来ている人もいる』、そう言ってたんです」という言葉と共に、てつみちさんはサンパチマイクを下げ、舞台にイスを用意しました。

「カポーン」という銭湯の音を皮切りに、一人芝居へ移ります。

「あんちゃん、シャワーを浴びてからサウナに入れ」などとサウナに入る人々に指図をするのは、まさにあの漫談で語られていた『銭湯のヌシ』。いろんな人にルールとマナーを叩きつけ、気がつけばサウナには自分以外いなくなってしまいます。

そこに8歳の少年がやってきます。少年はサウナが大好きで、漫談の中のてつみちさんと同じく、目を輝かせながらその魅力をヌシに語ります。8歳の男の子がセロトニンやらエンドルフィンなどの言葉を交えて語る姿、異様でしたね。

ヌシは一度水風呂へ向かいます。するとそこにシャワーを浴びる俳優・生瀬◯久(おしみんまるさん)が!!!おしみんまるさんのあの顔モノマネと「ここでゲストが登場するのか!」という驚きから、会場からは笑い声が上がりました。

またサウナに戻るヌシ。1人でサウナに来たという少年についていろいろ尋ねます。どうやら少年の両親は父親の仕事が忙しくて、奥様との仲違いを起こし離婚をしてしまったと少年は言います。「好き同士で結婚したはずなのに、どうして離婚しちゃうんだろう」と少年がぽつり。「……どうしてだろうな」「でも本当にかわいそうなのはそれに巻き込まれた子どもなんだよな……」と含みのある発言をするヌシ。でも少年は「でも大人になってからわかったんだ、お父さんは家族のために必死に頑張ってくれたんだって」と意味深な発言をします。水風呂に2人で行って初めて知らされる謎の少年の正体とは……。真実を知ったヌシを演じるてつみちさんの表情に大注目です!

ヌシと少年は別れ、ヌシが1人水風呂に浸かっているとそこにまたあの俳優が。
なんとしてでも股間を覗き見たいヌシ VS あの俳優の攻防戦の中徐々に暗転していくのが、私はとてもツボでした。

エンディングでは3人揃ってトーク。

「やりきりました!」と楽しそうなてつみちさん、マスク越しでも伝わるとても素敵な表情でした。漫談と一人芝居の感想トークが繰り広げられるのかと思いましたが、銭湯の良さがいまいちわからないというおしみんまるさんにてつみちさんが銭湯・サウナの良さをプレゼンする時間に大半を割いてました。

そして次回のテーマは、今回もお客様からの提案で「ひまわり」に決定!2月にひまわりに関する漫談と一人芝居を観るのが今から楽しみです!

「今から3回目公演が楽しみです」てつみちさん&伊藤さんによる終演後インタビュー

__本日は本当にお疲れ様でした!今回で2回目の開催でしたが、手ごたえや率直な感想をお伺いしたいです。

てつみち:今までやったことないことをやらしてもらってて、理想が正直まだ見えていないというか。でも1回目・2回目とやっていくうちに「ここ要るな」「こうしよう」というのがだいぶ見えてきたので、どんどん改善するために頑張っていきたいなとは思っています。

__今回は「銭湯」という結構てつみちさんと親和性の高いテーマだったと思いますが、漫談を作っていく上でどんなところを意識なさったんですか?

てつみち:いつもより倍以上銭湯に行って、人間観察やらそのとき体験したことを思い出したり見つけたりして作り上げた感じですかね。

__漫談から劇に移り変わり、漫談で出てきた話がどんどん劇にリンクしていくのが素敵でした!

伊藤:ありがとうございます。1回目のときは「犬」とテーマだけ決めてて、てつみちはてつみちで漫談を用意する、僕は僕で犬のお話を考えるという、漫談と劇に何の絡みもない感じだったんですけど。前回ゲストで来てくれたピクニックさんから「漫談の中身がお芝居に反映されたほうがいいんじゃない?」とアドバイスをもらって、今回はまずてつみちに漫談を作ってもらって、そこから劇のお話作った感じですね。
てつみち:前回はバラバラでやったけど、今回は漫談がマクラと考えて、それがどんどんお芝居に反映されていくっていうのが正直覚えやすかったっていうのと、やってて楽しかったというのがすごいある。ただ、お客さんも見方がわからないと思うから、もっと丁寧にやっていかないといけないなと思う。漫談と劇をもっと気持ちよく見て帰ってもらえるような作り方を……反省点が今回いっぱい見えたので、次でスタイルが決まっていくんじゃないかなと思います。今日来てもらったお客さんには申し訳ないけど……。

__お客様と一緒にライブを作っている感じがしました。一番後ろの席から見てましたが、お客様も皆さん集中して見入っているように感じて。なのでもっともっと素敵なライブになっていくのでは、と個人的には思いました。

伊藤:たしかに。一生懸命見てくれてる感じは伝わってきましたね。
てつみち:なんでこのライブやりたかったかっていうと、1人で表現をしたいっていうのと、人が作ったものを表現する仕事ってあんまり経験なかったから。芸歴20年目になって、賞レースどれも出れないから目標があまりなくて。かといって何もしないでいると腕が落ちるわけじゃないですか。「じゃあどうしよう」と思ったときに表現力だけはレベルアップしていかなければいけないなと思って。だから人に脚本書いてもらったものを自分なりに面白く表現できるようなことできないかなと思ったときに、同期の伊藤ちゃんが「脚本書いて頑張っていきたい」いう時期と合致したので、「じゃあちょっと一緒にやってみよう」と。いろんな人の一人芝居観てて、汗かいて全力で思いっきりやっているのが魅力的で。風間杜夫さんっていう俳優さんがいるんだけど……。
伊藤:風間杜夫さんは知ってるでしょ(笑) 説明不要よ。
てつみち:風間さんの一人芝居がかっこよすぎて!「俺も1人でこんなことやってみたい」っていうのと、近くで言ったらバッドボーイズ・佐田さんが一人芝居をやっていて。すごく衝撃を受けて「俺も1人で汗かきながら表現したい」と思いました。でもそのままやるのも面白くないので「どうしようかな」と思ったとき、落語も好きで観ていたので。マクラを漫談、落語を一人芝居ってことにしようと思って、立ち落語が理想でできたらいいなと思ってやってます。

__そういう経緯だったんですね!

てつみち:落語やりたいなと思って。落語も一人芝居で、1人で何役もやるわけじゃん。せっかくなら新しいジャンルで何かできないかなと思ったときに、立ち落語……『漫談劇』ということにしてやってます。もっともっと要らないところ削ぎ落としてシャープにシンプルに、お客さんにもわかりやすく、それで笑っていただけるようになったら「やってよかったな」と思えるようになるんだけど、まだ1回目・2回目なんでまだ自分の力不足もある。でも今日、ゲストのおしみんまるさんに感想聞いたりとか、自分もやっていく中で思うところがあって。だから第3回目、ワクワクしています。

__なるほど!伊藤さんもそれは同じですか?

伊藤:そうですね。やっぱり『漫談劇』って言われても最初わからないと思うし、俺もお芝居の脚本とかはちょこちょこ書いたりはしてたけど、一人芝居は書いたことなかったし、落語も正直わかってないので。今でも手探りでやっている感じはあるんですけど、回を重ねるごとにわかることとか教えてもらうことがあるので、次回楽しみですね。

__次回のテーマは「ひまわり」ということですけれども、構想は?

てつみち:まだまったくない!ひまわりを1ヶ月勉強して……きっと花言葉とかもあるだろうしね。そういうのでどんどん(漫談の話題を)見つけてやってかないとなと思います。
伊藤:1回目はてつみちが自分で決めたテーマで、2回目はお客さんからもらったけど「銭湯」というてつみちに馴染みの深いお題だったから、次回はまったくそれもない「ひまわり」っていう……いいですよね、段階的に。「ひまわり」でてつみちがどんな漫談するのか楽しみですよね。素敵なお題だし。
てつみち:そうだね。今年はお笑い以外でお芝居めっちゃやってんですよ。3人芝居や大勢でのお芝居、60分の一人芝居。来年は今年頑張った分をさらにより良くお披露目できるように頑張っていこうかなと思ってます。

__応援しております!これから配信を買うお客様もいるかと思いますが、その方に向けてメッセージなどありましたらお願いいたします。

てつみち:配信で伝わるかわからないんですけど、思っている以上に僕めちゃくちゃ楽しんでやっているので。あと見えてないかもしれないけど、感極まってちょっと泣いてたっていう。役に入り込んじゃって、泣くシーンのときにちょっと涙が出そうになったのを頑張って耐えたんだけど……。
伊藤:なんで耐えちゃったの?
てつみち:一人二役やるから、泣いたまま他の人を演じるのはできないなと思ったから。涙腺が最近おかしくなってきたんですよ。おばあちゃんと最近会うようにしてて、毎回帰り際「またね、バイバイ」って言われると、帰り1人で泣いちゃうのよ。あと全く関係ないご老人夫婦が手を繋いで歩いてるの見ると泣けてくるのよ。
伊藤:年取ったねぇ。
てつみち:年取った!今回はお芝居で泣けてきちゃって。

__それだけ入り込めてたってことですね。

てつみち:芸人って笑い声とか気になるんですけど、劇入ると役に入り込んじゃうから意外とお客さんの反応気にせずやりきりました。そのほうが劇はいいかなと。

__そういった点にも注目ということですね。次回2月、さらにブラッシュアップされたライブを楽しみにしております!本日は本当にありがとうございました!

今回レポートしたてつみちさんのライブ「てつみちの『漫談劇』」は、次回2月23日(水・祝)にヨシモト無限大ドームⅡにて開催されます!ぜひ劇場でご覧ください!!

ライター・インタビュアー:もちづきもちこ(Twitter:@mczk_mochiko)
撮影:石田ダダ(Twitter:@ishida_dada)

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