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MVVモデルの解釈

組織の在り方を考える際、いわゆるバックキャスティングの方法として、ミッション・ビジョン・バリューで整理することがある。

MVVとは、Mission(ミッション)とVision(ビジョン)、Value(バリュー)のことで、経営学者のピーター・F・ドラッカーが著書の「ネクスト・ソサエティ」でMVVの重要性を提唱したことが由来となっています。

https://www.layers.co.jp/terms/mvv/

各項目に何をあてはめるのか実例を調べているうちに以下の記事を見つけた。

因果の時系列について「VALUE → VISIONMISSION ではなく、VALUE → MISSIONVISION ではないか?」という指摘がされている。(加えて、後者を VMV と呼んでいる。)

一理ありそうなので、逆になぜ MVV が一般的なのか整理したい。

解釈

自分の場合、MVV で整理する場合は以下の認識で整合性がとれると感じた。

  • MISSION 社会像

  • VISION 会社像

  • VALUE 社員像

一般的に VISION → MISSION の順番になっている理由は、「VISION が示すものが『状態』や『過程』であり、逐次環境の変化に適応させる必要がある一方、MISSION は(可能な限り)ブレない軸として取り組む『対象』『目標』である」というような解釈を採用しているからだと思われる。

正直、単語だけ見れば VISION と MISSION は入れ替え可能にも思える。しかし、特に「状態」や「過程」を示す言葉としては MISSION よりも VISION が適切だと判断されやすいのだとも考えられる(MISSION がコロコロ変わると困るので)。

参考

MVVの例)デジタル庁

  • MISSION 誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化を

  • VISION 優しいサービスのつくり手へ。大胆に革新していく行政へ。

  • VALUE 一人ひとりのために/常に目的を問い/あらゆる立場を超えて/成果への挑戦を続けます

source: https://www.digital.go.jp/about/organization

VMVの例)グッドパッチ

  • VISION ハートを揺さぶるデザインで世界を前進させる

  • MISSION デザインの力を証明する

  • VALUE Whyが人を動かす/領域を超えよう/最高のチームのつくり手になる/こだわりと遊び心を持つ/良いデザインを良いビジネスにする

source: https://goodpatch.com/company/culture

※グッドパッチの場合は、

Visionとは、私たちが実現させたい未来の姿です。MissionはVisionに向かう現在の手段。

とはっきり定義している。

ちなみに

実は MVV モデルの出典は不明らしい。

cf.

関連著書(著者がドラッカー本人ではない場合も含む)のなかにあるそれらしい記述に準じると、VMV モデルのほうが元々の形に近く、社内外の色々な力学が働いた結果、多くの場面では MVV のかたちが支持されるようになった、と考えておくのが良さそう。

以下では、これらの書籍を調べた結果を具体的に列挙していきます。

「ネクスト・ソサエティ」 (2002年5月)「価値、使命、ビジョンの確立」(第1部 第6章より)
原文では「its social legitimacy: its values, its mission, its vision」
注) values の訳は「価値」ではなく「価値観」とするのがよい
この節の見出しである「組織としての個の確立」を言い換えたもの
この記述があるだけで、他にこの内容に関する詳しい説明があるわけではない


書籍全体を見ても経営手法を深掘りした書籍ではなく、この記述だけを見て「経営理念ステートメントのテンプレートとして使おう」と考えるのは無理があります。おそらく著者がこの文を書いた時点では、テンプレート化されることを意図していないでしょう。

「ドラッカー5つの質問」 (2017年12月)著者はドラッカーではない (日本語の書籍)
「経営理念、ミッション、ビジョン」(第1の質問より)
おそらくこれら3つの順番は重要
テンプレートとして使えるようにはなっているが、単にこれら3つを並べた形式ではない
この章の主題はミッション
「経営理念」は「根本的な考え」「想い」と説明されており、values に近い


この書籍を MVV の出典と考えるのであれば、「ドラッカーが提唱した MVV」とするのは誤りです。
書籍全体を見ると、5章からなる経営テンプレートとなっており、ステートメントを作るためというよりは、何が大事なのかを自分たち自身に問うためのテンプレートとなっています。

なお、同じ章で次のように定義されています。経営理念:わが社の社会に対する根本的な考え
ミッション:わが社が社会で実現したいこと
ビジョン:わが社のミッションが実現した時の状態


この章の主題となっているミッションについては後述します。

さかぽん, https://sakapon.wordpress.com/2021/12/07/ideology-mvv/

VALUE の捉え方も、現場で揉まれた結果として変化したものと考えることができそう。

これらで言及されている「バリュー: 価値」は、あくまで顧客にとってのものであり、MVVの「バリュー: 価値観、行動基準」とは異なるものです。

(中略)

ここからは実際に定義してみて思ったことなのですが、ミッションやビジョンはなぜ必要か(why)や何を提供するか(what)を簡潔明瞭に示す一方で、実際にそれを達成・実現しなければならない従業員目線にとってはどうやって?(how)が足りません。そこで、どうやってミッションの達成やビジョンの実現を行うのか、というhowである「バリュー: 価値観、行動基準」をセットで定義することで、従業員が日々の業務の中でも取り組める具体的なものに落とし込むことができ、ミッションの達成やビジョンの実現のために役に立つのではないか、と考えます。

林, https://note.com/rhayahi/n/n049f2c05bb1c

ミッションを決める際は、いわゆる「求められていること・できること・したいこと」の積集合になるようにすると良さそう。

書籍「経営者に贈る5つの質問」「ドラッカー5つの質問」では

(中略)

それぞれの書籍で、ミッションを構成する3つの要素が挙げられています。機会:社会のニーズに合っているか
能力:われわれの専門性に合っているか
意欲:われわれの価値観に合っているか

さかぽん, https://sakapon.wordpress.com/2021/12/07/ideology-mvv/

そのほか注意点:

ただし、キャッチーであったり奇抜な表現をつかべきということではありません。むしろ、多くの人が苦労なく理解できる普遍的な表現で、独自性を表現できるのがベストだと思います。

実際に定義する中でも、初めは「DX」「効率化」「自動化」といった言葉が出てきていたのですが、それぞれの言葉の解像度を高めていく中で、自然に消えていきました。

林, https://note.com/rhayahi/n/n049f2c05bb1c

結論

MVV でも VMV でも良い。

追記(2023-12-30)

MVV の要素は必要かもしれないが、MVV のフォーマットにする必要はない。

「会社の想い」は常に考え続けるべきだと思います。その手段や表現方法は、MVVのときもあるし、別な形の文章のときもあるし、プロダクトを出すことで達成されることもある。

「会社の想い」を考えるという本質に目を向ければ、カタチはもっと自由でいいんじゃないかな、というのが様々な事例を通して思うことです。

SayaSato, https://note.com/sugarpod/n/n2d4c5316a3b9


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