読書メモ:拡張する学校

「拡張する学校」 山住勝広 東京大学出版社

理想主義を掲げ、既存の学校教育を批判して塾を始めたら、矛盾に陥りました・・というどこかで聞いたようなお話でわかりみが深かった・・。教育を実践するもののブレイクスルーはどのようにもたらされるか。拡張的学習があるということ。野村芳兵衛さんの考え方、かなり先進的だったと思う。

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P125 野村芳兵衛の教育実践の中に見る拡張的学習

野村芳兵衛:戦前の新教育運動を代表する実践家。子どもたち自身に子どもの文化を築かせていくことを目的にして、カリキュラム改造を進めた。野村芳兵衛は、欧米の自由教育の考えを取り入れた、実験的な学校「池袋児童の村小学校」を創設する。

場所を選ぶ自由、先生を選ぶ自由、教材を選ぶ自由を標榜し、児童中心主義と子どもの自由や自発性を徹底。(「児童の村小学校」中野光)。理想主義的なプランが実現できずに、子どもたちは、自由放任、混沌状態が起きる・・・。

野村は、子どもたちが「どんどん勉強をし出すに違いないと、勝手に信じていた」のに、全然勉強しない!!!矛盾した状況に苦悩する野村の転機となったのは、夏の学校。自然の中で豊かな学びが生まれていく様子を見て、野村はブレイクスルーを経験していく。1920年代の後半には、「野性と文化を結ぶ道」を生み出す学校教育システムを提起する。野外の遊びを中心にした「野天学校」。文化遺産の伝達を中心にした「学習学校」子どもの相互の交流を中心にした「親交学校」の三位一体的な相互関連のシステムからなる学級経営案。

このブレイクスルーは、「拡張的学習」として捉えることができる。

新たなツール、パターンを創造し、システムを転換することで、矛盾のブレイクスルーをもたらしていく、人々の学び。

P133 引用

「拡張的学習を通した人間の発達とは、決して直線的な上昇としてあるのではなく、むしろあるものからの離脱として生じることになる。そして、拡張とは、離脱後にある新しい何かへと移行することである。」

本をつくる教育の提唱

子ども自身の観察に基づいて本をつくる教育。本をつくる教育を、新教育の方法として、教科書の教育と二項対立させて排他的に提起しているわけではかった。野村は、本をつくる教育は、読書学習の場合の比較材料になるとした。本をつくる教育と、教科書の教育は違いに相乗効果を持つ。




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