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【読書感想文とは言えない何か】

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読書感想文と少しの自分語りです
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#読書の秋2022

朝井リョウ『死にがいを求めて生きているの』【#読書の秋2022】

 小説『死にがいを求めて生きているの』の登場人物の一人が、物語の中で人間を大きく3つに分類した。2種類の“生きがいのある人間”と、1種類の“生きがいのない人間”。あなたはどれに当てはまるのでしょうか。  このnoteを読んでいる人にも、この小説を読んでタイトルの「死にがい」という考えに風穴を開けられてほしい。ぜひ、読んでみてください。 1.順位 この本では、ナンバーワンからオンリーワンの社会に変化していく様子とそれによって生まれた新たな苦悩が描かれている。その中でも印象的だ

三浦しをん『愛なき世界』【#読書の秋2022】

 この小説の主となるのは、シロイヌナズナ(通称:ペンペン草)の葉っぱの研究に精を注ぐT大院生の“本村紗英”と、町の食堂『円服亭』で店員として働く“藤丸服太”の二人である。本村が属する『松田研究所』と藤丸が勤める円服亭の周辺の人たちの優しい雰囲気の中で話が進んでいく。  「愛」とは何なのか、延いては「好き」とは何なのか。何故ゆえに愛を抱き、何故ゆえに好意を抱くのか。この小説はそれらを全部横たえて、読み手を包み込んでくれます。  藤丸の、本村に対する気持ちも素晴らしいなと思い

窪美澄『水やりはいつも深夜だけど』【#読書の秋2022】

 僕はスーパーでレジ打ちのアルバイトをしているので、それはもうたくさんの学生、社会人、ご年配、カップル、夫婦、子供連れ、家族連れの接客をすることになる。僕がバイトを始めてからはまだ1年半ほどしか経っていないが、始めた頃はベビーカーに乗っていた赤ちゃんが今はよちよち歩いていたりする。自分の親の少し上くらいの世代の人が急に赤ちゃんを抱っこしていたりして、お孫さんなのかな〜と思ったりする。この前までポイントカードを持っていなかった若めの男女2人組が、いつの間にかポイントカードを作っ

『ままならないから私とあなた』

 朝井リョウさんの著書『ままならないから私とあなた』を読み終わりました。 読み終わった時に頭に浮かんだのは「アイデンティティやその人らしさは、”出来ないこと”の方に宿るのかもなぁ」という考えでした。  以下、ストーリーのとある要素について要約した文章です。 技術の進歩を受け入れる人。 技術の進歩の『都合の良い部分』だけを受け入れる人。 「昔の方が良かった」とか。 「俺たち/私たちが子供の頃なんてさぁ」とか。 雪子の言い分も分かる。 薫の「電子黒板は嫌だけど車や電車には

『正欲』

 多分、一年以上は本棚の隅っこに置いてあった気がする。 なんとなく放置していたけど、やっと読むことができた。 元気とか正気みたいなものは、どこかへいってしまった。  結局、理解されない側は理解してくれない側のことを理解しようとしない。 ”理解してくれない側”が歩み寄ろうとしてくることすら拒絶するほどに、理解しようとしない。 排除してきた側が大義名分を振り翳して歩み寄ってくるのは胸糞以外のなんでもないから、しょうがないよなと思う。  登場人物らはそれぞれ相反することを言って