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機械男のおもひで第二部!   ②ロンリープラネットボーイ編

男には自分の世界がある。


2020年の4月。

会社もほとんど休みになってしまった僕。

誰に会うでもなかったので
部屋の片付けとか
自炊にチャレンジしたりとか
それなりに前向きな過ごし方をしていた。

しかしながら
ずっと家にいるのは気が滅入るもので。

とりあえず車を走らせて
降りなければ問題ないだろうと思い
なんの目的もないドライブがはじまった。


その日は天気も良かったし
海岸のあたりをちょっと
散歩してもいいかもしれないと
淡い期待を寄せていたのだが
海岸もしっかり閉鎖されていた。

今となっては笑い話みたいな出来事だけど
あの当時はそのくらい神経質だった。

なんだかドライブもつまらない。

カーラジオの声を聴いたとき
外の世界と繋がってるような気がして
少し嬉しくなったくらいで

そろそろ帰ろうかなと思った頃
東海道線の線路沿いに
桜が満開になって咲いていた。

誰が見てるわけでもないし
お花見なんてできる空気でもないけど
いつものように桜は咲いていた。

その光景は不思議と忘れられなくて
今でも春になると思い出すのだけど

時代とか自分の気持ちとか
いろいろと重なったのかもしれない。

こんな世の中でも桜は咲くんだなぁとか
こんなに綺麗なのに誰も見てくれないのは
少し不憫だなぁとか

ちょっとジジイみたいなことを思った。

桜並木の下に誰もいない光景が
なんだかすごく異質な気がして

まるでこの世界に自分しかいないような

そんな感覚を覚えた。


同じくらいの時期に
タムさんから新曲のフレーズが送られてきた。

タイトルはもう決まっていたらしく

「ロンリープラネットボーイ」

と書かれたファイルをダウンロードした。


どこか寂しげで哀愁のあるフレーズ。
タイトルにぴったりだなと思う。

もう決して戻らない何かを
待ち続けるようなイメージが浮かんだ。

その情景がなんとなく
今の自分にも重なるような気がして

これは久しぶりに
ふざけてない方の歌詞を書かなければ。
なんてことを思った。

ひょっとしたらあの時期
タムさんも似たような感覚で
曲を作っていたのかもしれない。

それとも全然別のことを
考えていたのかもしれないが

なんとなく曲のイメージと
僕の気持ちが合致したような
そんな曲に仕上がった気はする。

曲を合作するというのは
そんな楽しみも感じられるのだ。


誰と会うこともできないし
ライブ活動なんてもってのほか

そんな時期だったけれど

今できることをやっていく。


誰にみられるわけではなくとも
美しい花を咲かせる桜のように


例えが綺麗すぎて腹立つのでやめます。


売れないバンドマンの悪あがきが
はじまったわけであります。


ロンリープラネットボーイ編 完


ちなみにサブスクで聴けます。
https://linkco.re/9XrN9qsd

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