速度、手間、コスト、正確性、価値〜よのなかゼミ2018年10月回 感想

2018年10月28日、よのなかゼミに参加してきました。
※よのなかゼミの詳細はこちら

今回のテーマは「私たちとインターネット〜2018秋〜」。
私が発案したのですが、特に解決したい疑問やたどり着きたいゴールがあったわけではありませんでした。
ただ、「ネットが世界を変えた」「ネットは怖い」など、なにかと大きい物語で語られがちなインターネットというインフラを、個々の生活史レベルに落とし込んで語ってもらいそれを聴いてみたかったというふわっとした好奇心によるものです。

ただ実際にディスカッションしてみると、発案した時に想像していた何倍も知的な刺激を得られる回となったので、今回のような記事を書くことにしました。書いている最中にも、どんどん新たな考察が生まれているので、いつも通りブツ切れの文章ですがご容赦ください。

①“ファスト”ファストファッション

今回の参加者は4人だったのですが、そのうち2人が服をネットで買っていました(私は店舗派)。UNIQLOの服をUNIQLOオンラインで購入しているらしく、曰く「店舗で購入すると持ち帰るのが面倒」「レジ待ちの列に並びたくない」「時間を無駄に使いたくない」とのこと。

個人的にこの話は結構衝撃でした。UNIQLOといえばファストファッションの代名詞でもありますが、それをオンラインショップで買う… 冒頭の「“ファスト”ファストファッション(FFF)」という言葉がふと頭をよぎったのです。

ただ、ここでの“ファスト”を「速い」と訳すとなんか変な感じがします。私が店舗派なのは「速く商品を手にしたい(使いたい)」から。配送では、いくらアマゾンでもお急ぎ便で翌日着がスタンダードではないでしょうか(都内一部エリアなら即日配送もあるようですが)。はっきり言って店舗購入の方が「商品が手に入る」のが速いわけです。

じゃあ、ここで私の頭の中をよぎった“ファスト”感はなのか、、、おそらくそれは「利便性」「手間の削減」という意味でのファストなのだと思います。
たしかに列に並ばず重い荷物が自動的に家に届くのは便利だし、極端にいえば店員とコミュニケーションをとるのも手間っちゃ手間かもしれません。
それら労力や時間、精神的配慮といった「コスト」を一足飛びできる。それが、この話題で改めて明確となったインターネットの使われ方の一つでした。

②手間は「悪」か、それとも「娯楽」か?

翻って、インターネットを使わない、対面でのアナログなやりとりを用いるのはどんな時か。ディスカッションの中では、「旅先の名所や美味しいご飯屋さんを知りたいときに、現地の人に聞く」という意見が挙がりました。事前に食べログなどで検索せずに、現地の人しか知らない隠れた名店を教えてもらいたい、ということですね。                   また、「旅」なのか「旅行」なのかという対比の話も出てきました。前者は何時に何処にいく、という予定を立てずにとりあえず現地に行ってから考える。後者は下調べを入念に行い、きっちりスケジューリングした上で臨む、ということだそうです。これは参加者全員が前者側でした(人と行くときは「旅行」スタイル、という方も。私は2,3個ほど行きたいところ・やりたいことを決めた上で、「旅」スタイルでいきます)。            

ここで興味深いのが、先程のFFF("ファスト"ファストファッション)を利用していた2人も「旅」スタイルを基本としていたところ。つまり、服を買う際には可能な限りコストをかけない。その一方で、何処かに旅をするときは、現地の人とコミュニケーションをとり情報を聞き出す、といったコストをあえてかけているということになります。しかもここからは想像ですが、恐らくそういった「旅」スタイルを取っている人々は、そこで紹介されたお店が美味しくなかったとしても、それを一つの体験として楽しむことが出来る人たちなのだと思います(私は嫌ですけどね笑)。

「モノ消費からコト消費へ」とはよく言ったものですが、そういう意味でも、服という「モノ」を消費する際のコストはなるべく少なく、旅先でお店の情報を聞いて回る、その情報をもとにご飯を食べるという体験=「コト」を消費するという行為に、現代においては価値が置かれていることを再認識できました。

③砂金すくいとボスバトル(が終わった後の宝箱)

もう一つ、インターネットを使わない、対面でのアナログなやりとりを用いる場合として、「誰かに仕事を依頼したいとき」という話が挙がりました。自分がプロデュースしている仕事について、「この部分は信頼が置ける人に頼みたい」と思ったときに、インターネット上で公募する、ということではなく、アナログな(もしくはネットを使ってもダイレクトにメッセージをやりとりする)コミュニケーションを取るとのことです。

このとき別の方から「インターネットは雑多な情報を集めることはすぐ出来るが、情報が多すぎるのでそこから必要なものを取り出すのが大変。一方、アナログなコミュニケーションは手間がかかるものの、必要な情報だけを取り出すことが出来る。」という趣旨の言葉が出てきました。この言葉を聞いたとき、玉石混交の情報の中から砂金一つぶを見つけるのがインターネットであり、すでにその先に宝箱があるとわかった上で「ボスを倒す」という手間をかけるのがアナログなコミュニケーション、という形で理解することが出来ました。

まとめ

こうして並べてみると、①と③は目的に向けた「手段」としてのインターネットの話、②は「目的化した過程」としてのアナログについて語られたように思います。もしかしたら世の中的には散々語られてきたことだけど、改めて身近な人から今回のような話を聴けてとても面白かったです。

そんなわけで、次回のよのなかゼミは「デジタルデトックス」をテーマに開催されるようです。過程としてのアナログをあえて「味わう」、面白い旅になりそう。

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