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授業開発・実践研究論文を書く前に/提出する前にチェックしたいこと

授業開発・実践研究ってとっても難しいんですよね。
今回は、気を付けたいポイント(すべてこれまで筆者が査読等で指摘されてきたこと)をまとめたいと思います。

(1)   その授業は社会科教育研究(〇〇教育研究)にどのような意義がありますか?

必ず論文の最初に「本研究によって~を明らかにしたい」など書くが、それを明らかにする意義は何か、この授業で社会科教育研究にどのような示唆を与えるのか、明確にしたい。

(2)   その授業は何が新しいですか?

①どのような先行研究があり、②それらの先行研究と比べてどのような点で新しいのか、③そう考えている理由は何か、示す必要がある。

先行研究もただ並べるだけでなく、どのような内容の研究がどのように研究が蓄積されてきたのか記述し、本研究との関連を明確にする必要がある。新規性を示すことで、研究の目的や研究方法が明瞭になる。

(3)   その研究方法は先行研究のレビュー内容を踏まえた研究デザインになっていますか?

どのような課題を乗り越えるためにどのような授業を構想したのか、どのようなデータをどのように分析したのか、その方法がなぜ妥当と言えるのか、論拠を示す必要がある。

(4)   授業をしたからこそ明らかになったことはなんですか?その授業をしなくてもわかるような結果になっていませんか?

なぜ生徒の立場が変容したのか、なぜ生徒はそのような発言をしたのか、生徒の書いたワークシートや生徒へのインタビューから明らかにしてこそ授業実践研究の意義がある。それが明らかにならなければ、授業開発研究でよい。

(5)   その授業は再現できますか?

対象生徒や地域、時代によって授業は変わるもので(むしろ変えるべきもので)、全く同じ授業はできない。しかし、実践した授業を客観視し、普遍化する手立ては必要である。

個別性・一回性の強い授業を実践したとしても、その実践分析から得られた成果を普遍性・汎用性のある知見に練り上げるような、理論的枠組みが必要。

(6)   その授業で目標が達成できたと言えるのはなぜですか?

何を目的とした授業だったのか、その目的を達成するための方法としてその授業で扱った内容や方法は適切だったのか、なぜそう言えるのか、明確にする必要がある。そのためには授業の実施時期、期間、対象学校・生徒の概要も明らかにする。

(7)   研究倫理に配慮していますか?

授業実践・論文投稿においてどのような倫理的配慮をしたのか研究方法欄に記述する必要がある。生徒の名前等の個人情報を論文に載せないのはもちろん、生徒の記述等から地域などの情報がわかるような論文になっていないか、確認するのはマスト。

(8)   ケアレスミスはありませんか?(この確認はどのような内容の論文でもマスト)

・似ているが違う表現の用語を使っていないか
・表現は一貫性があるか
・誤字脱字はないか

草原(2013)は『社会科教育』(明治図書、No.648)という雑誌の「社会科研究・実践論文の書き方」の中で「論文審査は、最終頁の註と文献一覧を眺めることに始まり、次に序章の問いをみて「解くに値しそう」と直感し、終章の答えで「そうきたか」と興奮して、初めて中身の検討に入る。大半の論文は、中身の検討まで至らない」と述べています。

せめて「解くに値しそう」と思ってもらえるような研究にしたいものです。

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