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FISHMANSの映画を見た

フィッシュマンズの映画見て来た。
見る前は、この10数年のサブカル免許みたいに扱われているブーム(最近だとLONG SEASONばっか持ち上げたりする風潮)が気に食わなかったので、どーかなーと思ってたんだけど、
実は一番過去に囚われてる自分みたいな人間こそみるべき映画だった。
エンドロール後、
いつもにこやかな欣ちゃんが、いつになく真剣な顔で、力強く語る、
今、フィッシュマンズを演奏してる理由


「今生きてることを表現したい」


を聞いて、長く悶々として来た、佐藤伸治のいないFISHMANSへの違和感から解放された。
フィッシュマンズというバンドのヒストリーを辿りながら、夭逝した佐藤伸治の周りの人々による回想録。
今回の映画、何より構成と編集がとても丁寧で、圧倒的に素晴らしい仕上がり。
膨大な映像とインタビュー素材を一本の映画としてまとめる手腕はとても見事で、時系列と情報が整理されて、ナレーションがなくとも、何が起こっているのかが、自然と理解できる。
3時間近い上映時間も冗長には全く感じなかった。

もちろん、音楽映画としても十分すぎるほどの魅力を併せ持っていて、ポイントごとに挟み込まれるレアなライブ映像も見どころ、聞きどころ。

そして、劇場でないと鑑賞の意味が無いと断言できるくらいに音が良い。

ベースがめちゃくちゃ気持ちよく響くので、フィッシュマンズが傑出したレゲエバンドだった事が再確認できる。

久々に聴く佐藤伸治の歌声は、とても澄んでいて、あまりにも美しかった。
かなうなら、この音響でライブ映画も観てみたい。

言葉だけではなく、沈黙と逡巡、映像の端々に葛藤は溢れていた。
メンバー、スタッフ、登場するほとんどの人が、まだ佐藤伸治の不在を受け止めきれず、喪失の苦しみの中にいる事が窺い知れる。それでも、応えのない暗闇をもがいて、記憶の扉を開ける勇気。誰もが誠実だった。

そして、一番苦しく、誰よりも傷つくことになるのは、去って行った仲間達に今回のインタビューを依頼した、最後のフィッシュマンズである欣ちゃん自身なのだから、その愛の深さよ。


喪失に思いを馳せる辛さや、苦しみの前には、
物語や感動なんてものは安い言葉に成り下がる。
傲慢に消費なんてできないよ。人それぞれの複雑な心の有り様は、とても尊いものだから。

ただ、
劇中、ロングシーズンのジャケットのロケ地である奥多摩を、
脱退したベーシスト柏原譲が、冷たい雨の中訪れるシーン。
20年以上経って様変わりした奥多摩の風景が、まるで青春の残骸のように見えて、
意図せず(監督は意図していたかも・・・)物語的な意味を持ってしまう皮肉。
特に壊れてしまった橋は、もう二度と戻らない時間との断絶を表しているようで・・・。

つくづくドラマティックなバンドだったなって思った。

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