見出し画像

暖冬と豪雨とバッタと山火事

記録的な暖冬が続く日本

今年、日本は「記録的な暖冬」となっています。どこのスキー場も雪不足で営業がままならず、凍らないため湖上でのワカサギ釣りも実施できない地域もあるそうです。実際、1月の平均気温は多くの地域で観測史上最も高く、降雪量も極端に少なくなっています

関東以西(沖縄・奄美を除く)の今年1月の平均気温が、1946年の統計開始以降、最も高くなった。1月の降雪量も北日本から西日本の日本海側で、61年の統計開始以降で最も少なかった。全国的に寒気の南下が弱かったためという。(引用:朝日新聞)
日本海側の雪は極端に少なく、1月の降雪量は札幌で平年の約半分、青森は4分の1しか降っていません。北陸以西はほとんど雪が降らず、新潟、富山、金沢、福井の北陸の各気象台は1月の雪が0cm。今日はわずかに雪が降っているものの1cmには満たない予想で、新潟と金沢は2007年以来2回目、富山と福井は統計開始以来初です。(引用:weathernews)

アフリカ東部の豪雨とバッタ災害

一方、アフリカ東部の諸国では、去年11月末に記録的な豪雨が発生し、甚大な被害を及ぼしました。主にケニア、タンザニア、ソマリア、南スーダン、エチオピアなどの国に被害が出ました。

アフリカ東部は数週間にわたってすさまじい豪雨に見舞われ、ケニアで土砂災害により29人が、タンザニアで川に流されて10人が死亡した。ソマリアでは数万人が避難を余儀なくされ、南スーダンでは複数の町全体が浸水し、エチオピアでは鉄砲水と土砂災害により数十人が死亡した。(引用:afpbb)

また、その豪雨によって砂漠地帯に草が一斉に生えたことが原因で、サバクトビバッタが大量発生。大群となって村を襲い、農作物を食い荒らしています。ケニアでは過去70年で最悪の蝗害(こうがい)被害となっていて、すでに深刻な食糧危機にもつながっているそうです。

バッタ大量発生のメカニズムは前野ウルド浩太郎さんの解説がわかりやすいので合わせてどうぞ。

オーストラリアの干ばつと森林火災

オーストラリアでは森林火災が去年9月以降から広範囲に渡って拡大し、現在では日本の1/3の面積にあたる10万平方キロメートルが消失したそうです。カンガルーやコアラなどの野生動物は10億匹以上が犠牲になったと推定され、損害額も1000億円を超える被害だそうです。

これらの異常気象をつなぐ「インド洋ダイポール現象」

世界中あちこちで発生している「異常気象」ですが、色々と調べていたら日本、アフリカ東部、オーストラリアの出来事は「インド洋ダイポール現象」という気象現象に関係があることを知りました。日本の暖冬と、各国の異常気象は繋がっているようです。

インド洋ダイポール現象は、熱帯インド洋で見られる気候変動現象で、数年に1度、夏から秋にかけて発生します。インド洋ダイポール現象には正と負の符号があり、正のインド洋ダイポール現象が発生すると、熱帯インド洋の南東部で海面水温が平年より冷たく、西部で海面水温が温かくなります。この水温の変化によって、通常は東インド洋で活発な対流活動が西に移動し、東アフリカで雨が多く、インドネシアでは雨が少なくなります。また、熱帯からの大気の変動を通して、日本では雨が少なく、気温が高くなる傾向があります。(引用:季節ウォッチ)

BBCの気象学者がインド洋ダイポール現象とオーストラリア森林火災と紐づけて解説してくれた動画もわかりやすいのでご覧ください。

オーストラリア森林火災と日本の暖冬の関連を解説していくれているこちらのニュースもわかりやすいのでご覧ください。

画像1


・・・つまり、要約すると『インド洋西部(アフリカ東部沖)の海水温の上昇によって水蒸気が多く発生しアフリカ東部では豪雨が発生する一方、インド洋東部(オーストラリア西部沖)では海水温が下がり水蒸気の発生が抑制されるため雨が降らず干ばつが起き、森林火災が起きやすい状態になる。また大気の動きが変化し、偏西風の進路が変わって日本の北側を流れるようになり、暖かい空気が列島を覆うようになる』ということです。

つまり、日本の暖冬も、アフリカ東部の豪雨・バッタ災害、オーストラリアの干ばつと森林火災は、ひとつの「気象現象」によってもたらされているのです。

また、今季のインド洋ダイポール現象が例年以上に「強烈」なのは気候変動によって海水温が上昇していることが原因という見方がされています。海水温が高くなれば、より多くの水蒸気が発生することになり、海流の動きも大気の動きも強くなるからです。近年の海水温上昇のグラフも参考までに貼り付けておきます。

画像2

年平均海面水温(全球平均)の平年差の推移(引用:気象庁

という訳で、オーストラリアの森林火災に関するニュースを漁っていたら「インド洋ダイポール現象」に行き着いたので、今回はまとめてみました。気候変動がもたらす「世界の変化」について理解するには気象学の視点はとても重要だと痛感しました。もっと勉強してみたい。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?