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アイヌの人たちの生活の中に生かされてきた樹木

森と木が大好きな北海道の佐野です。
今回は、北海道の先住民族であるアイヌの人たちが、北海道の樹木を生活の中でどのように使っていたのかを紹介したいと思います。

神の国では、樹木も人間と同じ姿

アイヌの人たちは、神の国では、植物も人間と同じ姿をしていていると考え、草や木が「生えている」とはいわず、「座っている」といい、木の幹はニ・ネトパ(木の胴体)、枝をニ・テク(木の腕)又はニ・モン(木の手)、根をニ・チンケウ(木の足)、木を切ったときの白い辺材部分をレタル・カム(白い肉)、赤い心材部分をフレ・カムと呼んでいたそうです。
確かに、下の写真のヤチダモの木は、両手を大きく広げた人間の姿に見えますね。

木の皮の繊維で作った衣服(アットゥシ)

まずは、アイヌの人たちの衣服は何を使っていたでしょうか。日本人も植物繊維で衣服を編んでいましたが、アイヌの人たちは、オヒョウという木の皮の繊維でアットゥシという衣服を作っていました。主に祭事の時に着る、晴れの場の服ですね。

伝統衣装であるアットゥシ(ウポポイにて)


オヒョウの大木


特徴的なオヒョウの葉

食料調達手段の弓には粘りのあるイチイ

アイヌの人たちは、狩猟と採集で、食料を調達していました。森に棲むヒグマ、エゾシカ、キツネなどの大型哺乳動物を捕獲するためには、弓を使っていましたが、より、遠くから狙うためには、粘りのある木が必要ですよね。最適だったのがイチイです。イチイの枝は丈夫で、なかなか折れないので、反発力も強かったことでしょう。
矢には、ササやツルウメモドキが使われたようです。

仕掛け弓(北海道アイヌ協会所蔵)


風格のあるイチイ


どっさり雪が積もっても折れないイチイ

家の材料は腐りにくい木を利用

次は住居です。アイヌの人たちは、チセという伝統住居に住んでいました。家の構造は複雑ですから、様々な樹種が使われていましたが、共通しているのは腐れにくい木。ハシドイ、クリ、カシワ、カツラ、ヤチダモ、ハンノキ等が使われました。湿地に生えている、いや、座っている木が多いですね。水に強いということは、腐りにくいということですね。

伝統住居であるチセ


柱にピッタリなまっすぐ成長しているヤチダモ

太くてまっすぐなカツラは丸木舟

昔の人たちの交通手段、運搬手段といえば、船ですね。漁業にも使えます。アイヌの人たちは、カツラを使ってチプという丸木舟を作っていました。ただ、カツラの木であれば何でも良いわけではなく、太くてある程度の長さが必要なので、木の選別も大切ですね。

丸木舟チプ(ウポポイにて)


よく見かけるカツラは丸木舟には不適


丸木舟には太くてまっすぐなカツラ

今年の2月、日高の国有林において、チプのためのカツラの伐採が行われました。

https://www.rinya.maff.go.jp/hokkaido/square/kakutidayori/2021/210302_2.html

アイヌの伝統楽器ムックリとトンコリ

昨年の10月、アイヌの方々にアイヌの伝統楽器の演奏を披露してもらいました。ネマガリダケ(チシマザサ)を使ったムックリとエゾマツを使ったトンコリです。味わい深い素朴な音色が、北海道の空に響き渡りました。

ムックリ


トンコリ


ムックリの材料ネマガリダケ


トンコリの材料エゾマツ

アイヌの人たちは、古くから、北海道という土地で暮らし、北海道の自然を生活の中に巧みに利用してきていました。わたしは、縁あって、北海道に住んでいますが、アイヌの人たちの生活の知恵から、いろんなことを学びたいと思います。

木と人との出会いをつくるWEBアプリ

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