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エブリシング・エブリウェア・オールアットワンス 感想 – 他のすべての世界が絶え間なく叫び続ける

公開日:2023年3月3日(日本)
監督:ダニエル・クワン/ダニエル・シャイナート
脚本:ダニエル・クワン/ダニエル・シャイナート
出演:ミシェル・ヨー / キー・ホイ・クァン

劇場公開直後の感想(2023年3月3日執筆)

1年以上前から公開を心待ちにしており、姉新地(当時の在籍店)の5周年イベントをフルボッコして日比谷Imaxシアターにて鑑賞してきました。
リージョンフリー勢の友人たちと「ハンカチ忘れんなよ」というやりとりをしながら「またまたー、もう見てるし」と思いつつ、愛用している手ぬぐいを持って行ったのですが、手ぬぐいぐちょぐちょにして帰ってくることになりました。

公開直後なので本編に全然関係ない話をしますが、本編にも抵触します。

飴玉の詰まった人形という可能性

わたしが現在この業界で働くきっかけとなったのは、大学通学中の街角でもらったメイド喫茶のティッシュなのですが(うちのお店はそういう悪徳なことしないよ!)そのメイド喫茶は実態は風俗店でした。

当時18歳。

面接に行くまでは性的なサービスを販売するということはどこか遠い国のことのように思っていました。こんなに直接、自分の世界と接続しているとは考えもしなかったです。

もし、あのとき、あと5秒後ろを歩いていて、お兄さんの視界に入らなかったら?もし、メイド喫茶に電話をかけずに、歯医者の受付バイトをしていたら?わたしは今頃、巨乳の美人歯科衛生士としてウハウハな人生を送り、夜は六本木でポールダンス教室に通っています。

わたしが大学を選んだきっかけは、何気なく図書館で手に取った本が面白かったからです(最終的にその本の著者のゼミに入りました)あのときもし、あの本を手に取らずに、違う大学を選んでいたら?
東京農業大学網走キャンパスに行っていたら今頃、谷垣ニシパと楽しいマタギ生活をしています。

四谷シモンの学校に通う計画を本気で立てたけど、いろんな事情で行けなかったこともありました。もし学校に通っていたら今頃四国かどこかに住んで日々人形制作に打ち込んでいたかもしれません。それでミカン農家のお姉さんと子供と出会って、女2人子1人で楽しく暮らしている。

もし昨年六月、某船橋の暇なお店ではなくほかの店を選んでいたら?おそらくわたしは今頃馬鹿売れしております。考え込むほどの待機時間はなかったでしょう。血迷ってこんな気の狂った映画日記をあげはじめることもなかった。人は暇になると変なことをするものです。暇をくれてありがとう、船橋よ。

EEAAOを見て、わたしの認識が、この宇宙でのわたしが、歩まなかったすべての人生に思いをはせることになりました。そして、この宇宙で、この映画を一人で観て、号泣しながら6キロ歩くに至った今日この瞬間を、とても愛しく思いました。
ちょっと思い出すだけで泣けるな、、、。

ネットフリックス公開直後の感想(2023年9月4日執筆)

Netflixで配信開始、うちにもそろそろ日本語字幕のついたDVDが届くころです。
この映画は結局劇場に4度足を運びました。そのうち1度は、実母と行きました。
実母はこの映画を見てから、ひどく落ち込んでしまい、しばらくは見せたことを悔いたりもしました。たぶん、奔放な娘と自営業の苦難、叫び続ける可能性たちがあまりにシンクロしていたからだと思います。
母にも、当たり前に、叫び続ける”可能性”があったというごくあたりまえのことに気が付いて、ハッとしたりしました。

マルチバースは、わたしの母に何を与えてくれたんだろう

思えばこの半年間、とても色んなことがありました。
「マルチバース上の」と銘打って、24歳女子大学院生と31歳人妻設定を自由に行き来したり、tiktokで彗星のように現れた懸垂少女として活躍し即座にアカウントをロックされたり、ラップをはじめたりしました。
現在私は独自ドメインニュースサイトの管理者、筋肉系風俗ライター、ラッパー、フィットネスYoutuber、フィットネスインスタグラマー、映画クソコラづくりのひと、カメラマン/エディター、ロックされたtiktokアカウントの懸垂女子、宅地建物取引士、飲食店勤務、ウーバーイーツ配達員、と異常な量の肩書を持っています。

なぜ30歳を目前に、ネットライティングをはじめたのかも、ラップを始めたのかもわからない。気づいたらそうなっていた。カオスな生活を送っています。何をしても爆発的に売れることはなく、趣味と仕事、生存を混同しつづける日々。ものすごくエブリンに似ていませんか。

輝く世界にいても、わたしはみんなを覚えていたい

エブリンは他の世界で歌手にも、格闘家にも、ピアニストにも、囚人にも、俳優にもなっていたけれど、現在のバースではこれらの世界に思いを馳せて歌ったり時には踊ったりしながらコインランドリーを経営しています。きっとこれからもそうするんじゃないかと思います。
半年前は「姉新地にいなければとっくに売れていた」なんて言っていますが、首都圏に移ったところで半年たっても全然売れなかった現在のユニバースを愛したり、人生が転んでラップをはじめて、もしこれが全然人に聞かれなかったとしても、わたしから分岐したラッパー.suzukaがゼップに立つ姿をイメージしてニコニコしていられるのは、この映画を見ていたからだなと思います。


みんな、もうダイナソー・ファイターはみたかな?素手で恐竜倒す、インディペンデントカンフーSF映画だよ🦕🦕🦕

最後まで読んでくれてありがとう。これからも、suzukaの映画日記をご照覧ください。

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