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外気に触れられる喜びを思い出しています

 昨年の今頃、私は入院していました。甲状腺乳頭がんのために行った、甲状腺全摘手術の後、手術ではとりきれなかった細かいがんを放射線ヨウ素の入ったカプセルを飲むことで、体の中からやっつける治療を行うためです。(アブレーションというものです)

 この治療は通常の風邪薬のようなカプセルを飲むだけなので、心身ともに、手術ほどのダメージはありません。カプセル服用後、副作用がでるケースもあるようですが、私の場合幸いなことに副作用がなかったので、ただただ入院している、という状態でした。

 でも、1つ大変なことがありました。放射線を含むカプセルを服用することで私自身から放射線が出てしまうため、カプセルを飲んでから放射線の量が減るまでは、誰にも会えず、外の空気にも触れられない隔離病室にいなくてはいけませんでした。看護師さんとのコミュニケーションはナースコールのみ。看護師さんを被ばくさせてしまうことになるので、会うことはできません。食事も「お食事置いておきまーす」と部屋の外から声をかけられ、食事の受け渡し用の扉から取り出す、という生活を3日ほど送りました。普通の窓もなく、40cm×40cm位の天窓だけが外の様子をうかがえる唯一のつながりでした。

 自分の体から出る放射線の量が下がり、通常病室に移った時のことは、1年経った今でも鮮明に覚えています。新しく自分に割り当てられた窓際のベットからは、太陽の明るい光が入ってきました。太陽光を感じるだけで、心がほどけていくのを感じました。そして次に向かったのが、小さなベランダ。ベランダに出てひやりとした外気を感じた時に、喜びがこみあげてきました。

 …やっと外に出てきたぞ!!外気最高!!!!嬉しい!!!!!

 よく「病気をすると健康のありがたみがわかる」といいますが、隔離病室での生活を経験してはじめて、外の空気に触れることができることのありがたさを痛感しました。決して広いベランダではなかったけれど、あの時は、最高の気分でした!本当に本当にうれしかったです。

 通常の生活に戻り、毎日忙しく時間が過ぎていきますが、あの時のことを時々は思い出して、外の空気に触れることができる幸せ、仕事ができる幸せ、自由に外出できる幸せ、家族と時間を共にできる幸せをかみしめたいと思います。外気、最高!!

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