字句通りの大地と脚が麻痺する孤独

「SはPだ」という人々。しかしその実、誰もSがPであることを主張してなどいないらしい。だから、ソリスが「いや、SはPじゃないよ」と言ったところで、何の意味もない。相手はすぐに、「そういう話はしていない」と返す。だからそのうちソリスは代わりに、「但し君のその「SはPだ」と言うのは、SがPだということではなくて、君が〈エスワピーダ〉という叫びや嘆息を漏らすような状態にあるということでしかない、という意味だね」と言うようになり、そのうちそれも言わなくなった。誰も、SがPであることを主張しない。皆が皆、ソリスよりは何歩分も宙に浮いたところで自由自在に戯れているらしい。だからソリスも頑張って、皆の真似をして飛ぶことにしたのだが、やはり無理なものは無理なようで、精々が背伸びをして両腕を振り回すだけだった。背伸びを続けていれば脚がどんどんと痺れていく。時折ソリスはかがんで脚を休めるのだが、この息継ぎが何よりも恐ろしいのだった。久しぶりに大気圏の下に帰って来ると、そこではむしろ呼吸ができなくて、ソリスは息継ぎをしている間、この世で最も恐ろしい悪夢にうなされるのである。そこには誰もいない。数秒前まで共に笑っていたこの人も、例外なく空の上だ。枯れた大地には木の芽一本生えていない。皆が皆行為遂行体の翼を持っているらしく、誰も事実確認体の土地に木を生やす望みは抱かない。それが賢明で正常な判断なのである。この土地はすっかり枯れ果てて、何も芽吹きようがないからだ。ソリスはおののく。だれもこの地上で私と同じ空気を吸うことはしてくれないのか。そのときのソリスは、まごうことなくこの大地こそを「実在」と呼びたい、と泣く。どうやら独り離陸に間に合わなかったようである。誰も手を差し伸べない。私にも翼があればよかった。再度配布をお願いし〼。さもなければ、残る望みは一つ――ほとんど零である一つ――しかない。この大地にある唯一の養分、肥料。それは私の死体である。私の死体からきっと花が咲けばよい。

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