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住宅業界(注文住宅)の業界特性 3/3 まとめ

業界特性のテーマをまとめると以下の通りとなる。

①寡占化が進んでいない
②半年先の業績が分かる
③運転資金が要らない
④利益先食い型
⑤経営難易度が低い
⑥垂直統合型・分業型が多い
⑦実務難易度が高い
⑧事業ルーツが数パターン化に分かれる
⑨デジタル化が進んでいない
⑪リアル&シリアス型
⑫急成長よりも継続的成長が求められる

これらから(特に中小工務店が)考えるべき事としては下記と考える。

1.人的資産の確保のためのメンバーシップ型経営・理念経営

社員のエンゲージメントを高め離職を防ぐ事で見えざる資産(人的な資産)を蓄積していく事が重要である。住宅業界は会社を転々とする社員が多く、場合によっては独立して競合関係になる事も多い業界と言われるが、これは会社にとっても社員にとっても相応のデメリットがあると言ってよい。確かにお客様にとっては切磋琢磨する環境は必要であるが、家造りは人間関係が大切であり、勤続年数の長い社員が多い事で経営が安定する側面がある。そのためには家造りの理念や会社の姿勢を明確にする経営が必要である。

2.営業地域限定のブランド化によるエリア掌握

全国規模の大手ハウスメーカーと地域の中小工務店が競合関係になる事はとても多い。地域工務店からすると自社の営業エリアでの知名度を向上させブランド化する事で局地的に互角以上の成果を残すことが可能となる。模倣されない自社の強みを明確化し、ポジショニングをはっきりさせる事で収益性の向上と共に営業エリアでの知名度を確固たるものにする事が出来る。またこれを持続的に成長させることでさらに地域からの信用を得ることが出来る。

3.価値創造による適正な利益の確保

家は安いから売れるのではなく、その家がお客様にとって価値があるから共に家づくりができる。家はつくったら終わりではなくアフターメンテナンスなどを通して長期的に良好なお客様との関係確保が必要となる。会社の持続的な成長とサポート体制強化を考え、適正な利益の確保は大前提。低い利益率だと充分なサービスを提供できない可能性が出てくる。安くないと売れないと思っているのは間違いであり、会社・商品・自分自身への自信が持てるような強み(模倣困難性や希少性、確固たる信念)を明確にもつことで価値を高め、適正利潤を確保していく必要がある。

4.半年先の経営数値・業績を確認しながら進める

工期が長く他の業種と比べ経営管理がしやすいという利点をうまく活用したいところ。『集客⇒商談化⇒契約⇒着工⇒上棟⇒完工⇒アフターメンテ⇒長期的関係構築』といった一連の流れと、それに関連するTODOやお金の動きなどを明確にしておくことが求められる。デジタル化を推進しKPIを的確につかむと経営管理は断然やりやすくなる。

5.手許現金を残しておく(自己資本を厚くしておく)

工務店は安定的に受注が出来ていれば運転資金が必要ない。契約時・着工時・上棟時・完工時と支払い前にお客様からお金を頂戴できる事で資金が潤沢になるからである。業績が安定し順調に成長していると手許現金は増えてくる。これを数年間続けるだけで財務の健全性は高まる。さらなる成長のためにモデルハウス建設や営業所出店などの適正な設備投資を行っていく事は重要であるが、基本的には月商の3か月分は手許現金をもっておくべきだと考える。特に中小工務店であると地域からの信用を得るためには収益性と共に安全性を重視する経営が求められると考える。

6.不動産機能を持つ

住宅着工減という外部環境の変化に対応するために、多角化の観点からも不動産機能を持つ事が有効であると考える。不動産売買・仲介機能を持ち、相続関連の相談を受けたり、街の情報が入ってきたり、これから家造りをされる方々のニーズをつかむことが出来るようになると、住宅のみで事業を行っているのと比べ事業の幅が広がる。限定した営業エリア内での情報を得ていくという点で非常に有効である。

7.マーケティング部門・デジタル部門を持つ

ブランディング・事業計画の立案実行・販売促進などは外注または社内で兼業するケースが多い。地域工務店では人的リソースが割けないケースもあるが、あえてマーケティング部門を強化する事で自社の家づくりがより多くの方々に知って頂く事が出来る。良い家が売れるという事も言えるが、環境分析や戦略立案は事業の根幹であり、これらを明確にする事で事業は成長する。さらにデジタル化によってそれを促進させることが出来ると効果は大きくなる。デジタル分野はマーケティングに関わらず多岐にわたるが、事業の根幹となる部分に積極的にデジタル化を進めるとドライブがかかる。

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