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スキルと理念共感の両立

地域工務店アドバイザーという仕事をしていると、年代別の人員構成がひょうたん型になっているケースをよく見る。40代中盤から50代の社員と20代、という構成で30代が極端に少ない。ベテラン組は一定のスキルがあるもののどうしても体力は衰え始め行動力が落ちる。逆に20代は体力はあるがスキルがない。労働時間の制約が厳しくなっているなか、仕事も限定されてスキルアップの機会を失っているケースも見かけるし、スキル以上の難しい仕事を任せられてもベ教えてくれる人がおらず、一種の閉塞感を感じる事もある。であればスキルのある社員を採用する事も考えるべきであるが、中途半端に他の住宅メーカーや工務店からの転職組は前職での癖がついているので新卒または異業種からの転職を望む経営者の声も多い。

課題感としては『スキルと理念共感の両立』だと感じる。スキルはあるが会社の理念に興味がない社員はバランスを崩しやすい。成果が上がっても上がらなくても会社と自分の考えが違う時にスタンドプレーでチームワークが乱れたりする。逆に理念には共感しているがスキルが未熟な社員は成果を出すまでに時間がかかり(注文住宅事業の場合は最低2~3年は必要)、相応の教育と経験が必要である。理念共感は採用時点でチェックする必要があり、人不足のなかスキルのある社員が理念に共感して入社する事の難易度は高く、結局スキルアップには時間がかかるという事になる。さらに人材の流動性は高まっているので教育を施しても転職してしまうというリスクもある。

この難題をどう解決するか。

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(プロシェアリングコンサルティングHPより抜粋)

結論からすると、特に魔法のようなものはなく理念に共感してくれる社員を採用しスキルアップのための適切な機会を設ける事、という事になる。これには会社側で理念の明確化、採用&教育システムを構築する、商品を磨く、などなどやる事が多くある。つまり会社全体の存在意義を明確にし(CI:コーポレートアイデンティティ)ブランディングを図る(MI:マインドアイデンティティ・VI:ヴィジュアルアイデンティティ・BI:ビヘイビアアイデンティティ)を構築するという事になるだろう。確かに、特に中小企業では採用コストをかける事もスキルアップの仕組みを持つ事も難しい。ましてやCI戦略を推進するにはもっとお金がかかる。

確かにお金はかかるのだが、衰退産業である住宅業界では、いかに早くこれらの仕組みを整えるかで今後の勝敗が決まってしまうのではないだろうか。コロナ禍においてはデジタルマーケティングを推進していないといくらいい家造りをしていてもお客様の認知もままならない状態となるのだが、逆にデジタルマーケティングをしっかりしていても中身のない工務店は見透かされてしまう。CI戦略を一気に再構築し、同時進行で人材の採用・育成(できれば評価・報酬・配置といった人材マネジメント領域全体)の整備とデジタルマーケティングを推進していく、という形になるだろう。全体を整備するには小規模であっても一千万円単位でかかる場合もあるだろうが、これらをやり遂げる必要性がある。

話をもとに戻そう。理念共感した社員を育成するためには、社内で育成のスケジュールをつくる必要がある。OJTとOFF-JTの時間を明確化し、いつまでにどの程度のスキルを身に付けるのかというロードマップを作り、またそのマニュアルを構築する事だろう。社内だけでの構築が難しい場合は社外の力を使って進めるべきだ。新卒採用の場合、営業職であれば3年で8棟2億円の受注と宅建資格の取得・設計職であればプランのプレゼンテーションが可能で一人で詳細図面をかけるようになる事に加え二級建築士の資格取得、現場監督であれば一人で年間5棟程度の現場管理が可能になる事と二級建築士または施工管理技士の資格取得、というのが一つの目標となるだろう。3年でこれらをクリアするためにどうするかを1か月ごとにチェックしていく、というシステムをつくるのが必須である。社内の基幹システム仕様やスケジューリングに加え社会人としての一般的な礼節を身に付けるのは当然である。

地域工務店は取り扱っているモノ(家造り)がお客様にとって一世一代の大事業であるので、失敗が許されないシリアス型の事業であり、かつ一品料理に近い家造りには高いスキルと人間性が求められる。だからこそ土台から作り上げていく事が求められるのだと思う。


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