見出し画像

皮膚を知れば美容の嘘は見抜ける(上)

(この記事はメールマガジンバックナンバーからの転載です。定期購読はこちら。)

筋肉や骨格についての解剖学が続きましたが、今回はお肌の解剖学を学ん
でみましょうか。皮膚についてです。昔から「色の白いは七難隠す」とか
「もち肌」とか、「匂うがごとき素肌」とか、美人の肌は美しいと相場が
決まっているのです。というよりも、肌が美しいのが美人の条件だという
ことでしょう。

美しい肌を手に入れるため……と思って、高いお金を払ってあなたが使っ
ている基礎化粧品のほとんどが必要のないものだってわたしが言ったら、
信じますか? ……信じないだろうな(苦笑)。まあそれでも私は言い続
けることにしています。もともとエステ店勤務だったわたしが、ほぼまっ
たく基礎化粧品を信じていないのはなぜなのか、理由をお教えしましょう
ね。

では、皮膚の構造をまず見てみましょうか

皮膚は表皮と真皮と皮下組織に大まかに分けられます。私たちが普段「お
肌」と呼んでいるのは、このうちの表皮のこと。皮膚のもっとも外側の層
です。この下に真皮という血管や神経が豊富に分布している層があります。

分かりやすい話としては、爪のきわのササクレを引っ張って、血が出ない
部分は表皮、それ以上剥いて出血したら真皮層ですね。表皮の部分だけを
剥いても痛みも何もありません。神経が分布していないからね。

表皮の部分の一番の働きは、外界からの異物の侵入をブロックすることで
す。実は表皮を構成している細胞には、核がありません。

細胞の仕組みって覚えてる? 中心にあるのが核。これがあることで、細
胞分裂が起こり、増殖できるのです。コイツがない細胞は分裂ができない、
いわば死んでいる細胞なのね。垢すりタオルとかで皮膚をこすると垢が
出るけれど、あれは皮膚表面から脱落した表皮細胞のカタマリです。

で。皮膚の表面から様々な物質を塗るのが基礎化粧品です。

これらがどこまで滲み込むかというと、ほぼすべて表皮までなのよ。表皮
は分子量3000以下、真皮は分子量800程度までの分子を通すそうで。真皮
層の血管壁は分子量100より小さくなくては入り込めないようになってい
ます。

「分子量?」……高校化学の内容だね。炭素を分子量12として、これを基
準に決まる相対的な大きさです。なんだかよくわからなくてもいいけど、
ある物質の分子量が大きければ、物質として皮膚を透過できないってこと
なのよ。まあ、表皮が裏ごし器、真皮がガーゼ、血管壁が濾紙くらいのイ
メージでいいかな。

よく化粧品に配合されているヒアルロン酸の分子量は100万以上、コラー
ゲンは30万の高分子量なので、裏ごし器レベルの表皮すら通ることが出来
ません。完全ブロックです。ちなみに、水は分子量18だよ。小さいね。だ
から、お風呂に入ったら皮膚がふやけるし、海に入り過ぎると浸透圧の関
係で水分が抜けてしまって、体全体がなんとなくパサつくのよ。

で、基礎化粧品にはほとんどの場合防腐剤その他保存料が入ってます。一
番よく見かけるのが「パラベン」かな。主に使われているのがメチルパラ
ベンで、コイツの分子量が152。皮膚を通り抜けられる大きさなのよね。
こういう理由で、パラベンフリーを謳う化粧品が存在するのですよ。

他にもフェノキシエタノールという成分が使われますが、こちらは分子量
138。これも皮膚をスルーできる大きさです。血管壁は通り越すか越さな
いか……のレベル。

なんと! 有効成分って言われて配合されているヒアルロン酸やコラーゲ
ンが吸収できないのに、防腐剤・保存料が皮膚を通り抜けるという……。
肌に良かれと思って塗っているモノが実は肌にダメージを与えているかも
しれないのです。パラベンは、まれに皮膚にアレルギーを起こすとされる
物質です。フェノキシエタノールも同様に皮膚への刺激性があります。

自分が使っている化粧品類は何が有効成分だとされているのか、そしてそ
の分子量がどの程度のモノなのかをググる。これで、今使っている化粧品
類が嘘をついているかどうかを知る一つの指標を手に入れることができま
す。分子量が大きいものを「真皮層まで到達し、お肌に栄養を与えます」
って言っていたら、アウト。

で。「じゃあパラベンフリーの自然派基礎化粧品を買って使えばいいのよ
ね」となるのはちょっと問題があります。まず、防腐剤が入っていない化
粧品というのは、雑菌が繁殖する温床となりうるのです。このリスクを回
避するために必要なのが、使いきりの少量パッケージ。

一番有名なのがファンケルでしょうか? 10mlずつのパッケージ。

http://www.fancl.co.jp/Seibun/Beauty?item_id=3510-05&category=01

ここの製品は全成分表示があるのが特徴なのですが、こういった表示は量
が多いものから順番に表記する決まりになっています。上から水、グリセ
リン、BG(1,3-ブチレングリコール)となっていますね。

グリセリンは保湿剤。
http://www.kenko.com/product/item/itm_7131121072.html
BGも同様に保湿剤。
http://item.rakuten.co.jp/eco-imagine/fg08/

その次、ラフィノースとグルコースは糖類。ラフィノースはオリゴ糖、グ
ルコースはぶどう糖で、甘味料としても使われる成分。
http://www.kenko.com/product/item/itm_8210050072.html
http://www.glucose-box.com/list/glucose.html

で、抗酸化成分として「スイートピー花エキス」が配合されていますが、
調べてみるとマルビジンというアントシアニン(色素)のようです。コイ
ツの分子量は約529である様子。分子量的には表皮~真皮までは到達する
ものです。
http://www.fancl.co.jp/corporate/news/data/2008.09.18sweetpeakenkyu.pdf

ただ、配合量が上記の研究結果のような濃度なのかどうかは謎です。たぶ
ん良好な結果を得るために必要な濃度を配合したものを皮膚に塗ると、青
くなる気がしますが、製品を塗布した場合はそうはならないみたいだし。

とにかく保湿成分のオンパレードですが、水・グリセリンの混合物だけで
も十分保湿化粧水として機能します。精製水ないしはミネラルウォーター
にグリセリンを配合して自分で作れば良いだけの話なのです。配合率は水
100mlにグリセリン小さじ1程度です。

でも。本当は保湿を化粧水でする必然性すらないって言ったら、みんなど
う思うでしょう。水が分子量18で、容易に真皮下まで浸透できると前述し
ました。風呂にはいると皮膚がふやけるわけですが、これって水が皮膚に
たっぷり浸透した状態なわけですよ。この状態から水を逃さず保湿してや
れば、化粧水は必要がないのです。

じゃあ、乳液かクリームを……って思うでしょ? これもねえ、乳液やク
リームである必然性がないの。これらは水と油を乳化剤という名の界面活
性剤で乳化させて作るもの。水が皮膚にたっぷり含まれた状態なのに、な
んで油に水を含ませたモノを塗らなきゃならんのか。オイルで十分なので
すよ、オイルで。

肌に合う植物油を、お風呂上り、できたら脱衣所に出る前に洗い場で塗布
すること。これで乾燥はものすごく防げるのです。
http://www.aromashop.jp/shop/Top.do

こちらに各種オイルが販売中。わたしは生活の木のホホバオイル・ゴール
デン25ml、945円を愛用中です。だいたいひと冬で1~2瓶あれば全身事足り
ます。

さて、まだまだ続きますが次回へ持ち越し。

サポートしてくださると、多分さらに私のマッスルがスマイルすることでしょう。