ファスト&スロー | 第10章 少数の法則

ファスト&スローを読んで、1章ずつ、内容を簡単にまとめます。


本章で書かれていること(統計に関する直感を疑え)

脳は統計学となじみが悪い。
システム1は原因と結果を仕立て上げ、因果関係が実際に存在していなくてもつじつまのあう筋書きをこしらえる。システム1によって一貫性や整合性がある話を組み立てられ(だがそれは多くの場合まちがっている)、怠け者のシステム2はその結論をそのまま受け入れてしまう。



脳は統計学となじみが悪い

統計的事実に直面したとき、数学的な裏付けよりも、わかりやすい因果関係(こじつけの場合も多い)に注目してしまう。

→物事を見たとき、実際には因果関係が存在しなくても、システム1の働きで原因と結果(因果関係)を仕立てあげるため



大数の法則

大きい標本の方が小さい標本よりも信頼に値すること

  • 「アーティファクト」…不適切な調査方法や統計処理(十分な標本数がない場合など)の結果生まれるノイズのこと。例えば、小さい標本数のときに極端なケースが起こりやすい、など。

  • 標本変動(標本抽出のやり方次第で結果的に大きな変動が出ること)は標本サイズを十分に大きくすることが、このリスクを減らす唯一の方法である。しかし、筆者の調査により、専門家でさえも、多くの人が自分の直感を過信し、計算して導き出せる必要数よりも少なすぎる標本数を挙げた。

→筆者はこのことを「少数の法則の信奉」で批判。
統計に関する直感は疑いの目で見ること、印象を信じるのはやめてできる限り計算を行うことを勧告した。



「疑うより信じたい」バイアス

人間は標本サイズに対してしかるべき関心を示さない。

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「300人の高齢者を対象に電話調査を行ったところ、大統領の支持率は60%でした。」
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→この文章を要旨すると、多くの人は「高齢者は大統領を支持」となる
この文章には、「結果報告」とその「情報源」が含まれているが、この要旨からは「結果の信頼性」よりも、「報告の内容」に注目していることがわかる

→「調査が電話で行われた」「標本数は300だった」という「情報源」事実は無視される(それが極端に大きい、小さい等明確に誤っていることがわかる場合は別だが)

・システム1は疑り深くない。複数の解釈が可能でも、それらは無視してできるだけつじつまの合う筋書きをつくってしまう

・システム1の「連想マシン」は、すぐに嘘とわかる情報でない限り、それが真実であるものとして組み込む。
一方、システム2は、相れない可能性を同時に留保して比べられるので、疑う能力を備えてはいるが、疑い続けてることは難しく、もっともらしいことを信じてしまう

・人は、自分たちが見たものの一貫性や整合性を誇張して考えやすい。それ故、標本サイズが小さくても、抽出元の母集団とよく似ているのだからかまわない、という強力なバイアスが生まれる。これは、ハロー効果とも深い関わりがある。

→ハロー効果が働くと、実際にはほとんど知らない人のことを知っていると考えやすいから。システム1は断片的な情報を手がかりにリッチなイメージをこしらえ上げる。



原因と偶然

・システム1の連想マシンには、原因を探すという性質がある。
→統計的規則性は、原因探しとは異なるアプローチが求められるため難しい
→ランダム性(完全な偶然によるもの)を評価するとき、無意識にパターンを探し出し、「規則性がある」と思い込むようなミスを犯しやすい。

・偶然の結果を因果関係で説明しようとすると、必ずまちがう

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