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【疑問1】プロテスタントなのか カトリックなのか

 2023年5月6日、英国でチャールズ陛下の戴冠式が行われました。
 戴冠式が行われたのは、英国国教会のウェストミンスター寺院。

 英国国教会はアングリカンチャーチ、日本では聖公会といいいます。
 プロテスタントとカトリックの両面があることから、中道の教会、VIA MEDIAの精神を尊ぶのが特徴です。VIA MEDIA 。ヴィア・メディアと読みます。

 私は作品で【異世界の中道の国教会】を書く為に、英国国教会について勉強を重ねました。ご縁のあった参考書とともに、手持ちの知識を、私の備忘録を兼ねてまとめます。


【疑問1】プロテスタントなのか カトリックなのか

 物語を書き始めた初期、資料本を集めて一番に頭を悩ませたところでした。司祭さんの著書を読んで「中道」ということが分かりましたが「英国国教会はプロテスタント系」という記述しかない本は数多くあります。

 実際にチャールズ国王の戴冠式でも【継承宣言の誓い】で、

「自分は忠実なプロテスタント信徒」

 と述べるシーンがあるのですが、これには明確な理由があります。

■ローマ教皇の傘下ではないこと

■英国国教会という枠組みの、教会の王であることを強調する側面

 プロテスタント系には基本「教会の王様」たる教皇が存在しません。ローマ・カトリック教皇に異を唱えた歴史に起因するからです。つまりプロテスタント系でありながら「国教会の首長」となった英国国王は異質な存在ともいえます。

 西原廉太氏の著書『聖公会が大切にしてきたもの』によると、神学的視点では「国王は信徒の代表者」たる位置づけだそうです。つまり国民の代表者。これは信徒を中心とするプロテスタント改革の影響を受けています。

 ただしプロテスタント系と明らかに異なる点が多々あります。プロテスタント系は、煌びやかな礼拝・豪華な装飾・聖人の描かれたステンドグラス・聖人像・聖マリア像などを敬遠する傾向にあるのです。

 チャールズ国王が戴冠式にて「プロテスタントである」と主張したことに驚いた方も若干数いらっしゃったようです。

ウェストミンスター寺院の豪華な外装内装、いたるところに飾られた聖人像美しい衣を纏う主教たち聖職者、王の聖別など、カトリック様式であることは目に見えて明らかです。

 これらは「プロテスタントが問題視するもの」ではないか、と混乱されるのも無理はないでしょう。

 次章では、英国国教会の「カトリックの要素」について解説します。興味のある方は次話へお進みください。


■キャライラスト:CHARAT様
https://charat.me/

■背景素材:イラストAC様より
https://www.ac-illust.com

■参考文献
『今さら聞けない!? キリスト教:聖公会の歴史と教理編:ウィリアムス神学館叢書Ⅴ』
 岩城聰著/教文館/二〇二二年五月

『今さら聞けない!? キリスト教:聖書・聖書朗読・説教編 :ウイリアムス神学館叢書 Ⅱ』
 黒田裕著/教文館/二〇一八年七月

『ふしぎなイギリス』
 笠原敏彦著/講談社/二〇一五年五月

『神学の技法:キリスト教は役に立つ』
 佐藤優著/平凡社/二〇一八年五月

『神学の思考:キリスト教とは何か』
 佐藤優著/平凡社/二〇一五年一月

『聖公会が大切にしてきたもの』
 西原廉太著/教文館/二〇一六年十二月

『芸術の都:ロンドン大図鑑:英国文化遺産と建築・インテリア・デザイン』
 フィリップ・デイヴィース著/デレク・ケンダル写真/加藤耕一監訳/二〇一七年六月

『聖公会物語――英国国教会から世界へ――』
 マーク・チャップマン著・岩城聰監訳/かんよう出版/二〇一三年十月

『現代世界の陛下たち――デモクラシーと王室・皇室――』
 水島治郎・君塚直隆著/ミネルヴァ書房/二〇一八年九月

■WEB参考記事
ビジュアル・ジャーナリズム・チーム/BBCニュース/2023年5月1日
【図解】 イギリス国王チャールズ3世の戴冠式 どこでどのように
https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-65382456

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