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miaou feat. Radical Face 「Lost Souls」を振り返る

先日miaouの長谷川姉妹と会ったときに「Lost Souls」の話をしました。2011年にリリースされたmiaouとRadical Faceのコラボレーション曲です。とても懐かしくなったので、少し振り返ってみようと思います。年を取ると昔話が多くなりがちですが、どうかお付き合いください。

確か2011年のはじめ頃、miaouのマユミさんからRadical Faceことベン・クーパーにヴォーカルを依頼したいと連絡があり、その橋渡し役を務めました。同じ年にRadical Faceのアルバム『The Family Tree: The Roots』をLiricoからリリースすることになるのですが、その時点ではベンとは仕事でのつながりはほぼなく、たまにメールし合うような間柄でした。元々は2007年にリリースされたRadical Faceの1st『Ghost』をLirico第1弾としてリリースするために連絡をとったのが最初です。結局レーベルのMorr Musicとの交渉がうまくいかず、残念ながらリリースは叶いませんでした(のちにベンの個人レーベルBear Machineから再発されたときにLiricoから国内盤をライセンスリリースしました)。

当時担当していたhueというレーベルのコンピに参加してもらったりして、2008年に朝霧JAMで来日したときに初めて会い、その後も関係はつづいていきました。

miaouはインパートメントの同僚が担当するレーベルThomason soundsからリリースするインスト・バンドで、最も身近に感じる日本人バンドでした。Radical Faceが他人の曲でヴォーカルを務める想像はつかなかったですが、幸いにも快諾してくれ、最高の仕事を行なってくれました。ぼくは同席していなかったですが、スタジオで初めてベンのヴォーカルとトラックをミックスしたとき、スタジオ内がざわついたそうです。

miaou – Lost Souls (feat. Radical Face)

lyric by Ben Cooper

We were never ones to sit in place.
But when we travel all our roads are bent.
The straight and narrow’s never known our names.
Gettin’ lost is how we find our way.
Well gettin’ lost is how we find our way.
Yeah gettin’ lost is how we find our way.

All of them summers, we keep them in our bones, our blood, our heartbeats.
While all of the winters, have hardened our skins and sharpened our outlooks.
Yeah all of them summers, we keep them in our bones, our blood, our heartbeats.
While all of the winters have hardened our skins, and sharpened our outlooks again.

You say we’re all lost souls, so we’re never alone.
Say we’re all lost souls, so we’re never alone.
You say we’re all lost souls, so we’re never alone.
Say we’re all lost souls, so we’re never alone.

ぼくらはこの場所にとどまるようなひとではなかった.
だけど、ぼくらの旅路はいつも紆余曲折だった.
正しい道はぼくらの名前を知ることはない.
道に迷うことはじぶんの道を見つけること.
そう、道に迷いながら, ぼくらはじぶんの道を見つけていく.

ありとあらゆる夏を, ぼくらは骨や, 血や, 心臓の鼓動のなかにとじこめる.
ありとあらゆる冬は, ぼくらの皮膚をかたくして, ぼくらの未来のイメージをとがらせた.
そう, ありとあらゆる夏を, ぼくらは骨や, 血や, 心臓の鼓動のなかにとじこめる.
ありとあらゆる冬は, ぼくらの皮膚をかたくして, ぼくらの未来のイメージをとがらせた.

ぼくらはみんな失われた魂. そうさ, ぼくらはひとりじゃないんだ.
だれもがみんな失われた魂だから, ぼくらは決してひとりなんかじゃない.
ぼくらはみんな失われた魂. そうさ, ぼくらはひとりじゃないんだ.
だれもがみんな失われた魂だから, ぼくらは決してひとりなんかじゃない.

ヴォーカルの録音は2011年3月ごろに行われています。311を踏まえた、ベンなりのレクイエムの意図も感じられる歌詞です。

「Gettin’ lost is how we find our way.(道に迷うことはじぶんの道を見つけること)」。じぶんの道を見つけたかどうかわからないけど、大きな決断をしたいまも道に迷ったままの気持ちのいまのじぶん自身の境遇を肯定してくれる、リリースから何年経っても大切な歌。

…とここまで書いたところで、2012年に行われたRadical Faceとmiaouの来日ツアーのレポートにすべて書かれていることに気づきました。

「You say we’re all lost souls, so we’re never alone.(ぼくらはみんな失われた魂. そうさ, ぼくらはひとりじゃないんだ)」というリフレイン。決して平穏な生き方をしてはいないと思われるベン・クーパーという稀代のアーティストの生き方そのものが表現されたような歌詞。その結末にふさわしいこの美しいことばは昨年の3月以降に書かれたものです。そこに必要以上に意味を与えるまでもないかもしれませんが、「音楽は語られなかった悲しみのためのものだ」という、かの詩人のことばのように、また、浜崎さんが「この曲をここにいるみなさんに捧げます」と話していたように、「Lost Souls」はぼくらすべてのひとたちのための歌です。そして、この曲はいま、このタイミングでたった一度だけ奏でられるべきものだと思っていましたし、1ヶ月たったいまもぼくのその思いは変わりません。もし次やるのだとしたら、また別の曲をいっしょに作って、それを演奏すればいいんです。それでいい気がします。この名曲が生まれるはじまりから、こうして演奏されるまで、常にいちばん近くいれたことはぼくの人生の宝だと言えるでしょう。

これまでで最も楽しかった来日ツアー。まさにぼくの人生の宝。当時そう書いた気持ちはいまも変わりません。


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