185 内製と外販について

1.185
2.内製と外販について
3.ぽん
4.20230924
5.某Discord
6.内製と外販についての考察
7.
ハードメーカーやソフトメーカーにおけるキーコンポーネントの採用体制の違いであります。
自社で生産するか=内製
他社から購入するか=外製
となり、
自社向けに生産するか=内製
他社向けに生産するか=外販
となります。

内製主導のハードメーカーの具体例としましてはソニー、サムスン電子などが挙げられます。外販専用のハードメーカーの具体例としましては、ニデック、TSMCなどが挙げられます。ソフトウェア企業のことなどや、ケイレツ(系列)と言う垂直統合型の企業間取引が行われる日本の自動車メーカーのことなどは、自分は良く知りませんので今回の項目には含めておりません。

昔の日本の家電メーカーでは、だいたいコンシューマー向けに展開しており一般での知名度が高い完成品であるセット製品を製造販売している部門が花形部門であり、社内でも主導的な地位を得ていました。戦後、日本の製造業の躍進を支えたのは均質で勤勉な労働力を利用した工場生産力の高さ故であり、彼らの作るテレビ、オーディオ、自動車、船舶などは一世を風靡することになりました。自分も一部の家電メーカーにちょっとだけ話を聞いたことがありますが、当時は日本メーカー間での競争の激しさが故に自らのことをアセンブリー・メーカー(部品メーカーから部品を購入して完成品を組み立てるメーカーのこと)と呼び、キーコンポーネントを外部購入しているためにセットでの差別化ができない状況を嘆いていたこともありました。そのため、セットでのシェアが大きかったソニーや松下電器産業(パナソニック)などはその生産規模の大きさをテコにキーコンポーネントの内製化を推し進め、自社採用により外販部品を駆逐してついでにその内製部品を外販市場に展開して最終的には外販メーカーを撤退に追い込むこともあったようです。
普通に考えたら、自社採用により本社経費が抑えられ自社セット向けに自由に技術革新が進められる内製部品の方が有利である様に考えられますし、当時の一般的は考え方はそうであったようです。ソニーやサムスン電子はそのような流れで、外販部品を内製部品に置き換え技術の社内蓄積を進めました。アップルは未だにそのような傾向を持っておりますし、少なくとも垂直統合企業が優勢の時代はそうでした。
しかし、パソコンの普及とともに時代は移り変わりました。専業メーカーである水平分業企業が求められることになり、インテルみたいな市場シェアの半分以上を占め技術的にもセットメーカーが太刀打ちできない様な巨大な部品メーカーがもう一つの主役として力をつけることになりました。HDD用モーター市場のニデックやファウンドリ市場のTSMCもその様な部品メーカーの一つとなります。

何故このようなことを申しているかと言うと、昔自分がハード市場で最終的に生き延びるのは内製メーカーなのか外販メーカーなのか、どちらなのだろうかと疑問に思ったことがあるせいです。実際はケースバイケースで判断すべきことだとは思っていますが、一度気にかかるとなかなか忘れられないもので未だに気にかかることがあります。
いろいろと変な噂が気になりますが、最近話題の日の丸半導体メーカーのラピダスはこの両者のいいとこ取りを図る垂直統合企業風味の部品メーカーを目指している様で、もし達成可能なら垂直統合と水平分業のアウフヘーベンが達成されることになり長年の自分の疑問も氷解することになります。まあ、自分はシロウトであるため最終的にラピダスがどうなったかを外部から判断することでしか、その結果を知りえないのは残念なことですが。
しかし、今の所の感触ではこんな感じを抱いております。どちらか一方が圧倒的に勝利することは無く、ブランドで勝負ができる強いセットメーカーは内製も行う垂直統合企業を指向し、価格で勝負せざるを得ない普通のセットメーカーは外販頼みの水平分業企業を指向するのではないかと言うものです。その市場でのトップメーカー:その他メーカーの比率に比例する形で内製:外販の比率も決まると言う至極シンプルな予測となります。そうなりますと一見コウモリみたいなラピダスの将来性はその市場におけるトップメーカーへの採用アピールの可否によって決まってしまい、不採用なら即アウトと言う可能性が見えてきます。これはあくまで自分の私見でありますが、実際にラピダスがどうなって行くのかは興味を持って今後もウォッチして行きたいとは思います。

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