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210503 〈TED〉ティム・ハーフォード: 自らの創造性を最大限に生かす素晴らしい方法

雑記録のメモで十分かなと思ったけど、せっかくなのでこちらにも書き残しておく。

〈内容メモ〉

※TED@Merck KGaA, Darmstadt, Germany | November 2018
以下、Transcript/日本語訳に基づくメモ

▶「二兎を追う者は一兎をも得ず」
これはマルチタスクを戒める格言だが、こと重要な活動に関しては同時に複数のことを行うことこそ目指すべき姿ではないか、というのが本講演における話者の主張

▶「スローモーション・マルチタスク」
→複数のプロジェクトを同時に走らせ、その時々の気分や状況で取り組むものを変えること
→直感的には「スローモーション」と「マルチタスク」は相容れない。なぜならマルチタスクは切羽詰まって行うことが多いから。しかし、マルチタスクにゆっくり取り組むことができれば、それが素晴らしく効果的であることが分かる
→スローモーション・マルチタスクは、創造力の高い芸術家や科学者に共通してよく見られる傾向である

▶創造的な人たちは、なぜ普通にスローモーション・マルチタスクをこなしているのか
→理由1.新たなアイデアが生まれるのは、それとは別の問題に取り組んでいるときだから(例:アルキメデスはお風呂に入っているときに難問を解くための着想を得た)
→理由2.一つのことがうまくいくと、他のこともうまくいくようになるから(例:医学生が美術の講座を受けると、目の病気の診断などが非常にうまくなった/医者としての教育を受けたマイケル・クライトンは様々なジャンルの執筆活動や映画監督の経験を経て、商業的成功を収めた)
→理由3.行き詰まったときに問題解決を助けてくれるから(例:クロスワード・パズルで答えが分からないとき、何か他のことをすると正しい答えがパッと浮かぶ)

▶たくさんのプロジェクトで混乱しないようにするには?思いついたアイデアをどうやって全部覚えておくのか?
→(物理、デジタルを問わず)プロジェクト名を冠した箱を用意し、思いつくたびに箱にアイデアを放り込んでいく。保管されていると思えば、アイデアを忘れる心配をしなくていい
→「あなたはすべてのものにならなきゃならない。どうして除外するの?あらゆるものにならなければ」byトワイラ・サープ

▶ダーウィンのスローモーション・マルチタスクの進め方は非常に驚くべきものである

▶現代人のジレンマ
→ブラウザのウインドウを次々に切り替えていく生活をするか、世捨て人のように他はすべて切り捨てて一つのことだけに集中するかという誤ったジレンマに陥っている
→マルチタスクをうまく使って私たちが元々持っている創造性を解き放てばよい。ただ、それをゆっくり進めること

〈感想〉

これを最初に見たのは随分前だけど、最近その真価を実感することが多いので改めてTranscriptを読み返してみた。話者は、創造力の秘訣はマルチタスクをスローモーションでこなす(複数のプロジェクトを掛け持ち、その時々の気分や状況で取り組むものを変える)ことにあると説く。創造力の高い人たちはスローモーション・マルチタスクをごく普通に実践していることが多いと指摘されている。

クリエイティブと呼ばれる領域に限らず、スローモーション・マルチタスクの姿勢・考え方は実生活で大いに役立つのではないかと感じている。例えば、今私は最優先で取り組むべき明確な課題を持っている。だけど、起きている間中ずっとそのことだけを考えているのは難しいし、それをすると閉塞感に耐えきれず、かえって課題解決が滞る事態を招きかねない。とはいえ、だからといって課題から逃げるようにして怠惰な時間を過ごすのも気が引ける。

そんなときこそ、自分にとって大事な(探求したいと思う)別の課題に目を向けることが救いとなる。頭の使い方や視点が変わることで気分をリフレッシュできるし、最優先課題で感じていた行き詰まりを打開するための新たな発想も浮かびやすくなるだろう。そうしてあくまでも「自分にとって大事なこと」に時間を使えば、その時間は単なる停滞ではなくなり罪悪感も覚えにくくなる。今後も自分なりの「プロジェクト」を掛け持ちする意識を持ち、心身の状態や状況に応じてそれらを渡り歩く生活スタイルを作っていきたいと思った。

話者は「創造力の高い人」の実例を多数紹介しており、中でも詳細な解説がなされているチャールズ・ダーウィンの研究活動の歩みが面白い。功績の如何はともかくとして、彼はまさしくスローモーション・マルチタスクの達人だったようだ。