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221222 怒りの処理

自分のことを棚に上げて他人を口汚く罵る人間に対して、私はどうしても寛容になれない。私は基本的に人の弱さを受け入れられない人にはなりたくないと思っている。実際にそうあることができているかは別として、とにかく不用意に他人のできないこと、苦手なことを責めたりしたくないし、そうしないように気をつけているつもりだ。

「自分のことを棚に上げて他人を口汚く罵る」のも、それをする人のある種の弱さなのだろうけれど、この種の人や態度については自分でも驚くほどに反発してしまう。ほとんど条件反射的なものなので理由を問われても難しいところはあるけれど、恐らくこれは「他人の弱さを攻撃する弱さ」だと言えるから、他人を攻撃してしまっていることへの異議の方を優先したくなるのだろう。いっぺんその根性を叩き直してこい、と言いたくなる。頬を平手打ちするような反論を浴びせない限り、そのタイプの弱さはいつまでも他人の弱さを攻撃し続ける。だから私はこの弱さに対して、半ば無意識のうちに冷や水を浴びせるような態度をとってしまう。

あの人は周囲を見渡して「どいつもこいつも、バカばかり」だと言う。確かにその人は仕事がよくできる。この組織の一兵卒としては、誰よりもよく気づき、働くことができる人だろう。彼は周りの人の動きの鈍さによく苛立っている。

私がまず気になるのは、そうした不満や苛立ち、そこから生じる不機嫌を平気で外に出してしまえることだ。平社員ならまだしも、彼は人を束ねる立場にある。負の感情を積極的にばらまくことが、チームとして仕事をする上でプラスになることなんてあり得ないと思う。一定の忖度は機能したとしても、良好な意思疎通を妨げている時点で、チームとしての信頼関係の構築と維持に亀裂を生じさせており、長い目で見ていい影響を及ぼすとは到底思えない。たくさんいい仕事をしたいと人一倍強く願っているからこそ、彼は動きが鈍い人に苛立っている。そのくせ、当の自分がまさによりよい仕事の遂行を妨げていることについては、どうして目をつぶってしまえるのだろう。他人が1、自分が10動いたとしても、負の感情を撒き散らして他人の働きをさらに鈍らせて0.5にしてしまえば、結局は全体の利益に反する行動を取っていることになるじゃないか。なぜそれは問題にしないのか。

彼曰く、自分も人間なのだから感情の浮き沈みがあるのは当然なのだそうだ。これに関しては私もそうだと思う。上に立つ人間として優れた気質を持っている人なんてほんの一握りだろうし、上手に人を動かすのは本当に難しいことだろうと思う。私が頭に来るのは、機嫌のコントロールが下手な自分の弱さは受け入れているくせに、他人が自分と同等の動きができない弱さ(仕事の下手さ、不器用さ)については全く受け入れる気がないことだ。彼は私の前で他の人への罵詈雑言を浴びせることを厭わない。私にとってその時間は、苦痛でしかない。人格攻撃とも言える悪口を平気で吐けること自体、社会性を欠いた言動にも思えてくる。

彼は「どいつもこいつも、バカばかり」だと言う。その「バカ」共をうまく動かすことのできない己の無能を棚に上げて、文句ばかり垂れ流す甘ったれた根性に腹が立つ。有能な同僚に恵まれるに越したことはないだろうけれど、あなたは今のあなたが身を置くその環境の中でベストを尽くすしかないのだから、「バカ」を「バカ」と言ったところで、何も生産できないじゃない。本当に賢い人は、「バカ」を「バカ」と罵ることに時間を割いたりしない。「バカ」しかいないのは、あなたが動かす努力を怠っているか、動かすだけの力量がないからでしょ。それをせずに罵り言葉だけ達者で偉そうにふんぞり返っているところが、どうしても許せない。

頭使って考え抜いて、本気でいい仕事をしたいと思っているのなら、「バカ」を動かしてみろと言いたい。その努力もしないで文句ばかり言い続けているなら、あなただって「バカ」の一員じゃないか。自分も「バカ」の一人だと気づけていないところが、あなたが「バカ」であることの証左となっている。

私は彼は一生懸命な人だと思う。誰よりも仕事を頑張っているのは事実だと、心からそう思っている。だからこそ、彼の口から罵り言葉が出てくることに余計腹が立ってしまうのだろう。あなたの頑張りをあなた自身がぶち壊しているじゃないかと、言いたくなってしまう。このような私の苛立ちは、私の「弱さ」なのかな。たぶん相手に期待しすぎてしまっている。元々話の通じない相手だと思っていたら、きっとこんなに反発してないだろう。黙って適当に聞き流しているはずだ。

いい仕事のためのコミュニケーションって、難しいな。私がまず今しなければいけないことってなんだろう。期待を手放すことかな。仕事とプライベートとを問わず、こういうタイプの人とはもう少し離れた方がいいのかな。単純に罵り言葉を浴びるのは好きじゃないし、できるだけ近づきたくない。完全に割り切ってビジネスライクに接するのは、そんなに難しいことではないと思う。ただ、そちらに舵取りしてしまって、本当にそれでいいのかな、という迷いはある。