在留資格と難民認定について(1)
こんにちは。認定NPO法人Living in Peaceです。
外国籍の方が、日本で暮らしていくためには、在留資格が必要なことは、多くの方がご存じではないでしょうか。
しかしながら、日本に身一つで逃れてきた難民の方々のなかには、安心して日本で暮らせる在留資格を得ることが難しいケースもあります。
今回は、そもそも在留資格とはなにか?から、難民が難民としての在留資格を認められるケース、また、認定のフローなどについて、出入国管理及び難民認定法(以下、「法」といいます。)の制度に基づき、2回に分けて説明していきます。
「難民」問題について一から知りたい!という方は次の記事も併せてお読みください。
▶︎難民問題を知ろう学ぼう!「基礎から分かる難民の受け入れ」
少し難しい内容ではありますが、なるべく難しい法律用語を避けてお伝えします。日本で暮らす難民の方々がぶつかる壁や、最近話題となっている「難民認定」や「全件収容」などについても、ひも解くカギになると思いますのでぜひご覧ください。
◆ビザと在留資格の違い
ビザとは、通常「査証」のことで、持っているパスポートが真正かつ有効であることに加え、ビザに示す条件のもとにおいて入国・在留が差し支えないと判断したことを示すものです。一方で、入国して日本で暮らしていく(在留する)ために必要な資格を在留資格と呼びます。
なお、就労を目的とした上陸に際し発行される就業査証を「ワーキング・ビザ」と呼ぶことから、一般的に就労(とくにフルタイムの就労)を可能とする在留資格をワーキング・ビザ/就労ビザと呼ぶことがあります。そのため、ビザという言葉は、たとえば、「留学ビザから就労ビザへの変更」という在留資格の変更の際に使われることもあります。
つまり、就労ビザや難民ビザは一般的な呼び方であり、日本で暮らしたり活動をしたりするために必要な資格は、ビザではなく「在留資格」の種類によって指定されているのです。ここでは、わかりやすいように呼び方を「在留資格」と統一し説明します。
◆在留資格の種類
以下の在留資格をもち、日本に入国したり、暮らしたりすることを、正規在留と言います。
◆在留資格の就労可能・就労不能
前述の在留資格の表にある通り、在留資格には、就労できる在留資格と、就労できない在留資格があります。
就労できる資格の場合でも、就労できる職業や時間数が限られているものもあります。また、就労できない在留資格でも、別途、資格外活動許可を取得した場合には就労することが可能です。
違法な就労活動をしてしまった場合、「資格外活動罪」という罪に問われてしまいます。また、それをさせた者(例えば、雇用した企業)も、不法就労助長罪という罪に問われることがあります。
また、明らかに資格外活動を行っている場合や、禁固以上の刑に処せられた者は退去強制となるため、難民の方々だけでなく、支援者や雇用する企業等にとっても、在留資格の分類の確認は非常に重要となります。
◆難民認定
それでは、難民として母国を逃れてきた人々は、どのように難民として認められ、どのような在留資格を持つことができるのでしょうか。
まず、日本で「難民」として認められる2つの場合について説明します。
条約難民
一般的に難民という際にイメージされる方が多いのは条約難民ではないでしょうか。条約難民とは、難民条約で定義されている難民のことをいいます。
日本では、入管法に基づき、後述の難民認定がされた場合は、条約難民と認められます。
(a)人種、宗教、国籍若しくは特定の社会的集団の構成員であること又は政治的意見を理由に、迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有すること
(b)国籍国の外にいる者であること
(c)その国籍国の保護を受けることができない、又はそのような恐怖を有するためにその国籍国の保護を受けることを望まない者であること
上記の難民の要件でよく問題となるのが、「迫害」の意味です。
迫害という用語は、国語辞典を引くと、「弱い立場の者などを追い詰めて、苦しめること」などの意味が出てきます。
しかし、日本の入管実務・裁判例上、上記の難民条約の文脈では、「通常人において受任し得ない苦痛をもたらす攻撃ないしは圧迫であって、生命又は身体の自由の侵害又は抑圧を意味する」とされており、「生命又は身体の自由の侵害又は抑圧」が要求されている点で、一般的な日本語の語感よりも、かなり狭く解されています。
第三国定住
難民の中には、一次的に庇護を求めて移った国においても、なお危険な状況下で生活していたり、その庇護国で対応できないような特有のニーズを持ち合わせていたりします。(UNHCR HPより)
そのような場合、第三国定住として、新たに受け入れに合意した国(第三国)に移動させ、移動先の国において庇護あるいはその他の長期的な滞在権利を与えるケースがあります。
日本でも、平成20年に、第三国定住によるミャンマー難民の受入れをパイロットケースとして実施することが決定され、アジアで初めて第三国定住による難民の受入れを開始しました。その後も、受入れを継続して実施し、令和元年までに、パイロットケースとあわせて合計50家族194人を受け入れています。今後も、第三国定住の受け入れは拡大していくと予想されます。
◆難民認定された場合の在留資格
次に、難民と認められる場合の在留資格について説明します。
難民認定の申請が行われ、法に基づき法務大臣が難民と認めた場合、原則として、定住者(告示外定住)の在留資格が与えられます。この在留資格は最長5年の有効期限があり、期限を超えて在留するためには更新が必要となります。在留期間が定められている点で、無期限に在留できる永住者とは異なります。
この在留資格の場合、就労することも国民健康保険加入を申請することもできます。また、必要があれば市・区役所など通じて福祉支援を受けることができます。
法務大臣は、本邦にある外国人から法務省令で定める手続により申請があったときは、その提出した資料に基づき、その者が難民である旨の認定(省略)を行うことができる(法61条の2)。
法務大臣は、前条第一項の規定により難民の認定をする場合であつて、同項の申請をした外国人が在留資格未取得外国人(省略)であるときは、(省略)その者に定住者の在留資格の取得を許可するものとする(法61条の2の2 Ⅰ)。
◆難民不認定の場合の在留資格
では、申請を行ったものの難民として認められなかった場合は、どうなるのでしょうか。
特定活動:人道配慮による在留特別許可
法務大臣は、難民の認定をしない、定住者の許可をしない場合でも、申請者の在留を特別に許可することが可能です。その場合「在留を特別に許可すべき事情があるか否か」を審査されます。
この場合、原則として「特定活動」の在留資格が与えられます。特定活動とは、多種多様な現代の人の活動を前提として、非類型的な外国人の活動に対して付与されるどの在留資格にも該当しない活動を意味する在留資格です。就労可能・不能については、個別に定められ指定書に規定されます。
定住者:難民不認定処分後特定活動定住
不認定後に特定活動の在留資格を得、その後更新を続けた場合は、次のいずれかに該当する場合に、定住者の在留資格を許可することが可能です。
①入国後10年を経過していること
②在留特別許可又は在留資格変更許可により在留資格「特定活動」の決定を受けた後、3年を経過していること
以上のほか、他の在留資格を適法に得ることができない場合には、退去強制手続に移行します。
なお、難民認定を申請中の外国人に対しては、次の通り特定活動の在留資格が与えられます。
特定活動:難民認定の申請者
難民認定の申請中や、不認定となった場合の不服申し立て中は、複数の条件を満たすことで、特定活動の在留資格が与えられます。なお難民認定の申請者として特定活動を許可された場合でも、一定の厳しい条件をクリアした場合を除いて、就労活動は認められません。
いずれも、難民の認定もしくは、在留を認められるために厳しい条件が課されています。
では、これらの申請はどのように行われるのでしょうか。次回は、難民申請のフローなどについて説明します。
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執筆:宮本麻由(Living in Peace)
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