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世界の難民政策 「難民受け入れ大国ドイツとは?」


難民の支援に興味がある皆さんは、ネットで検索したり、本で調べていたりすると、「難民の受け入れにドイツは積極的」だというのを見たことがあるでしょうか。今回はドイツの難民の受け入れについての背景を辿っていきます。

難民の受け入れについて基礎から知りたい!という方は、以下のエントリーもあわせてご覧ください。

▶︎難民問題を知ろう学ぼう!「基礎から分かる難民の受け入れ」

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2015年の欧州難民危機を受け、メルケル首相は同年8月、ドイツに大量の難民を受け入れることを表明しました。同年に96万人の庇護申請を受け、そのうち42万人が難民認定されました。
2019年も世界第4位の難民受け入れ国となっています。同年、日本は10,0375人の難民申請者のうち、認定されたのは、44人と厳しい現状にあります。

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(UNHCR ホームページより)

※欧州難民危機
2015年、情勢な不安定な国々が多い、アフリカ大陸、中東から100万人以上の難民がヨーロッパに流入しました。

◆ドイツ社会と移民

ドイツは難民を受け入れる以前から移民国家とされていました。1960年代の高度経済成長期、労働力として沢山の移民が移り住み、彼らが家族を呼び寄せました。
そのため、ルーツが外国にある国民も多く暮らしています。難民を含む、外国にルーツを持つ国民のための法整備がされており、以下のような権利が認められています。

統合コース
2005年、定住を望む移民に対しドイツ語の習得、ドイツ文化を学ぶことを義務付ける移民法が制定されます。
さまざまな場所、時間で充実したドイツ語、文化的について受講でき、難民や生活保護受給者は無料で授業を受ける事ができます。

二重国籍の容認
2000年、国籍法が採用していた血統主義に出生地主義の要素を加える、改正された国籍法が制定されました。

永住権
ドイツに5年住み、60ヶ月以上
年金を納めていれば、永住権を申請することができます。

このように、社会の仕組みが移民を受容している為、ドイツでは、現在、たくさんのスポーツ選手や政府の閣僚まで移民の背景を持っていることが多くあります。
以上の政策などが、難民の受け入れやすさにつながっているとも言えるでしょう。

◆過去の反省から

ドイツが難民を沢山受け入れるようになった根本には、ナチス・ドイツ(1933-1945年)が行ったユダヤ人迫害への反省があると言えます。迫害から逃れるため、沢山のユダヤ人がアメリカを始め、計80国以上に逃れました。そのような歴史から、「今度は抑圧された人々を引き受ける側になる」という庇護意識が生まれるようになったわけです。
ドイツの憲法には「政治的に迫害される者は庇護権を享有する」という文言が含まれています。
(※ドイツでは難民申請を庇護申請と言います。)
また、かつて労働者としての移民を受け入れていた時代、ドイツ人と移民の間で社会の分断が生まれたという過去があります。そう言った歴史を踏まえ、今のドイツには、移民に優しい政策があるのだと言えるでしょう。

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ドイツでは、日本と同じように少子高齢化が進んでいます。難民も将来的にはドイツの国民となり、経済力としての国益につながるという見方をしているため、政府が手厚くドイツ語教育支援や就労支援を行います。また、憲法にも庇護精神が含まれるよう、市民の難民に対する包容力が見られます。例えば、キリスト教の教会がイスラム教の難民を受け入れることがよくあるそうです。

現在の日本は、外国人は日本で就労をしても、いつかは母国に帰国するという考えがよく聞かれます。そのため、なかなか政府主導の日本語、就労を含む生活支援が整備されていないというのが現状です。しかし、これから日本で働く外国人が増えていく上で、政府主導で法や環境を整えていく必要があることは、言うまでもないでしょう。
そのような事が、難民の受け入れやすさにも繋がるのではないでしょうか。


執筆:里見 春佳(Living in Peace)

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