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SM小説「路上の恋文」⑩再訪

見え透いた嘘

水曜日、いつも通りの朝がやってきて、麻美はいつも通りの仕事をこなしている。少なくとも、周りにはそう映っているし、それはそうなるように麻美が努力しているからだった。

お願い事はシンプルかつストレートに。麻美の考えは明瞭だった。ランチ時間が始まる少し前、麻美は課長に切り出した。

「ちょっと体調が悪いので午後からお休みを頂きたいのですが・・・」

コンプライアンスや多様性などが叫ばれる昨今、課長の対応はマイルドだった。嫌味を言われるでもなく、逆に心配してもらって午後からの休みはなんなくもらえた。元気になり次第、業務遅延を挽回する指示があったくらいだ。

「ありがとうございます。開発計画に遅れが出ないようにいたします。今後、このようなことが無いように、体調管理に気を付けます。」

課長に対して麻美はお辞儀で頭を下げることで、嘘を付いたことへの嫌悪感と居心地の悪さで固まった表情を隠すのだった。

昼休みのチャイムが鳴って同僚たちがランチに出ていく。麻美はフロアに人が少なくなったことを確認してから、そそくさと逃げるように職場を後にした。心ここにあらず。きっと、麻美の心は今日は家に置いてきたままだったのだろう。

麻美は直接敦司の家に寄るのではなく、一度家に帰った。そして、シャワーを浴び、着替えをして、いつもより念入りにしっかりと化粧をした。普段は使わない色のアイシャドーを塗った。

麻美は自分の複雑な感情に悩まされていた。

心配していた。

そして、期待していた。

もちろん、敦司に対して特別な感情などはない。駅ですれ違う全く知らないサラリーマンと同じくらいの存在だ。ただし、敦司からされた非情な振る舞いは強烈な印象が残ってしまった。麻美は必死に忘れようとしていたが、心の一番奥底に大きな大きな錘としてどっしりと居座ってしまい、事あるごとにその錘がゴロゴロと麻美の中で揺れるのだった。麻美がずっと求めていたものはアレだと主張するかのように。

隼人と別れてからというもの、一人で慰める日々は強がりな麻美を弱くしていった。

そんな麻美の前に敦司は絶対的な存在として君臨した。支配されて、いたぶられ、抱かれた。そして、麻美が秘密にしていたアナルも当たり前のように愛してもらえた。今日、また抱いてもらいたい。アナルを虐めて欲しい。自然と麻美の下着が湿った。

覚悟

小雨が降っていた。家を出て敦司の家の近くの喫茶店で時間を潰した。麻美は極力何も考えないように、瞑想しているかのように目を閉じて、少しずつ紅茶を口に運び甘い香りを感じることを繰り返してただ時間が経つのを待った。温かい紅茶はやがて冷たくなった。周りの客も全て入れ替わった。麻美はそのことさえ気付かないまま、ゆったりとした時間の流れに身を任せるのだった。

約束の5分前。15:55に麻美は敦司の家のインターホンを押した。

「麻美です。来ました。」

「ちゃんと時間通り来たね。裏口開けてるからそっちから入ってきて。」

麻美は庭を回って裏の勝手口に向かった。勝手口の鍵はかかっておらず、ドアを開けて中に入ると敦司が立っていた。

「じゃ、地下室に行こうか。」

敦司は麻美の手を優しく引いて台所の納戸奥の扉を開けて地下に連れていった。麻美は手を握られたことにビックリすると同時に少し安心するのだった。案外敦司の手は温かった・・・導かれるように麻美はスルスルと階段を下りていく。

「まずは、アルコールで乾杯にしようか。」

そう言うと、廊下奥の棚からウィスキーを出してきた。アルコールに抵抗のない麻美は渡されたグラスを時間をかけずに空かす。一気に身体に入れたアルコールが食道を通って胃の中に染み渡るのがよく分かる。少しフワッとした気持ちになった。その変化を見計らったように敦司の雰囲気が変わった。

「お前は僕の奴隷で、約束を守らなかった。そして、そんな状況でお願い事がある。お前の口からもう一度しっかり説明しろ。」

そう言うと、麻美の左頬をフルスイングでビンタした。勢いで麻美はその場に崩れ落ちた。

「すぐに服を脱いで下着だけになって土下座の姿勢を取れ!」

麻美はあまりに突然のことだったのでただただ驚いた。しかし、不思議と先週末のような恐怖は感じなかった。麻美の中であの錘がゴロゴロと転がる。言われるまま、下着姿になって地面に這いつくばった。そして頭を垂れて額を地面に着けた。

「先日は業務で忙しいとは言え、電話に気付かずに申し訳ありませんでした。お許し頂けますようお願いいたします。また、本日はお忙しい中、お時間を頂きありがとうございます。スマホロックを解除していただけると助かります。よろしくお願いいたします。」

敦司は革靴を履いたまま土下座している麻美の頭を踏んできた。

「お前の話は分かった。まず、お前が今日ここに来た本当の理由を確認するために最初に身体検査をする。その後、約束を破ったことに対して相当の罰を受けろ。その後に、スマホロックを解除してやる。」

意思の確認

「まずは身体検査からだ。」

下着姿で土下座した状態で、尻を高く上げさせられる。

「お前、スマホロックの解除のお願いをしに来たんじゃないのか?何もしてないのに濡れてるじゃないか。分厚いパンツなのに染みができてるじゃないか。一体お前は何のためにここに来たんだ?そして、なぜ濡れているんだ?」

「すみません・・・スマホのロック解除をお願いに来ました。・・・けれど、きっと、あつしさん・・・ご主人様にこの前して頂いたことが忘れられなくて、アナルを虐めてもらいたくて・・・そんなことを期待して興奮してしまったんだと思います。ご主人様に会いにここに来るまでに発情してしまいました。今朝からずっと悶々としていて、仕事をしている時から濡らしていました。」

「なんだ、結局お前は奴隷らしいはしたないメスだったんだね。初めて会った男に暴力を振るわれてアナルまで犯されたのに・・・お前はそれを望んでいる。今日濡らしてなくて毅然とした態度でやって来ればもうやめようと思っていたのに。これはお前の望む形なんだな。お前の望みをしっかりと言え!」

「はい・・・私はこれから、ご主人様の奴隷として厳しい調教をして頂きたくて、覚悟をしてやって来ました。私からのお願いです。どうか、私に痛みと快楽と安心を与えてください。ご主人様からして頂ける全てのことを受け止めるように頑張ります。」

これが最後のチャンスだった。敦司と決別し、日常に戻るための。だけど、麻美はそのチャンスを使って、本当の自分をさらけ出した。麻美はそのことに安心し、そしてそんな自分にひどく高揚した。

敦司からの命令を受けて、パンツを脱いで両手で左右のラビアを引っ張って穴が開くように見せる。敦司が意地悪にラビアの周りだけを人差し指で触ると、愛液が一気に溢れ出てきた。透明で粘り気のあるその体液はゆっくりと太ももを伝っていった。

「今日はこの穴には何も入れないから。濡らしたまま帰らせるよ。」

<続く>

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