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音のない心地よさ。

本当にやばい人の特徴を考えたことがある。
圧倒的なオーラとわかりやすい力を持っている人なのか。
うん、その人もきっとそうなんだろう。

だがそんなわかりやすいものを持っている人ではなく
やばい人っていうのは「音を発さない人」だと思う。

鬼滅の刃に出てくる鱗滝左近次
初めて炭治郎の前に現れた時に全く音を出さなかった人。

歩いたり動いたりするたびに人は必ず音を出す。
靴の音、ものを動かす音、呼吸。

音は人がそこに存在しているという大きな証明。
音を出さないということは自分という存在を透明にする行為。
誰も彼もが自分を証明しようとする。
誰も自分が出す音なんて真面目に聞いていない。
そんな世界で、自分から音を消すという人に異様なオーラと静かなはずなのに不気味な存在を感じる。

試しに散歩で自分の服の音、靴の音、そしていつも持っていくスマホとイヤホンを無くしてみた。

靴の音は最初は意識しても無くすのは難しい。
いつも音楽を聴いて歩くから、音がないのはこそばゆい。
いざ自分を透明人間にした時に僕は何を思っただろう。

不思議だ。
不思議と心地よかった。

音を出さないが故にまるで自分がそこにいないような感覚があるのに、
顔には風を感じるし、視界に映る世界は歩いているから動き続けている。
まるでVARを覗いているような。それでも機械的なものは何も感じない。

何も感じないのに、それが心地いい。
音楽で耳を塞いでいた時には感じることができなかった快感。

自分から音が消えることで
こんなに色々なことを感じることができるのか。

横切る人の靴の音、自分から靴の音は聞こえない。
服がすれている音が聞こえる。呼吸も声も聞こえる。どれも僕は出していない。

人がいる、空があって、建物がある。
みんな音を出している。ここにいるよと言っている。

1人で歩いている時に、そんな音を聞いている人はほとんどいない。
でも、僕は聞いているよ。
僕は今音を誰よりも聞いているよ。

ゆめうつつ。

elu


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