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内陸部にある顧湖鎮では、屋内でハリネズミを飼育し、

内陸部にある顧湖鎮では、屋内でハリネズミを飼育し、冬の暖をとる習慣がある。
同鎮の側にある顧湖は1万年ほど前に隕石の落下で作られた。吹き出したマグマに覆われた大地に木々はなく、この一帯では、薪を集めることができない。村の人々は、シルクロードを通じて商人からもたらされた、帰る森のないハリネズミたちとともに、この厳しい大地を生きる。
「暖を取るためにはハリネズミがいちばん」と、村の最長老の越さんは語る。
「うさぎはスープにするし、鶏と寝ることはできませんから」
就寝中にハリネズミの上に乗ってしまうと、ハリネズミは激しく怒り、背中の棘を逆立てる。これを避けるため、村のベッドには寝返りを防止する縄がついており、人々はこれで腕を縛って眠るのだという。
越さんの後頭部は、長年の生活できれいに平らになっていた。
それでも彼らはこの先祖代々の土地を手放す気はないのだという。
「この土地は幾度も侵略者の襲撃を受けてきましたが、皆あきらめて去っていきます。いまさら薪や燃料に頼る生活を始めては、どうなるかわかりません」
近隣地域で進められている石油パイプラインの完成は、2年後である。

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