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【レガシー】死の国デッキ調整録+解説

1.はじめに

はじめまして、リィンと申します。

北陸のレガシーチーム「Maples」のメンバーで、この間第10回目を迎えた草の根大会「Maples杯」の主催チームでもあります。

勿論精力的にプレーしているフォーマットはレガシーで、普段は4cコントロールや5cアグロロームで遊んでいます。

今回はテーロス還魂記の新カード、《死の国からの脱出》を用いたコンボデッキの解説をしたいと思って筆を執りました。

「新しいカードを使ったデッキで遊びたい!」「このデッキをしっかりメタっておきたい」という人たちの助けになれば幸いです。

気になった部分への質問や記事への感想も、RTやいいねの評価も、是非お願いします。

2.死の国、下環境に脱出する

最近のレガシーはエターナルフォーマットにも関わらず、新弾が発表される度に何らかのテコ入れのように感じるカードが何枚か収録されており、来るテーロス還魂記にもある程度の興味を持ってプレビューを見ていました。

そして明らかにヤバイのでは?と思うカードが一枚。

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Underworld Breach / 死の国からの脱出 (1)(赤)
エンチャント
あなたの墓地にあり土地でない各カードはそれぞれ脱出を持つ。脱出コストは、そのカードのマナ・コストに「あなたの墓地から他のカード3枚を追放する。」を追加したものに等しい。(あなたはあなたの墓地から、カードをそれの脱出コストで唱えてもよい。)
終了ステップの開始時に、死の国からの脱出を生け贄に捧げる。

実質あの悪名高き《ヨーグモスの意志》では???

しかも元々存在していた「このターン、カードがいずれかの領域からあなたの墓地に置かれる場合、代わりにそのカードを追放する。」テキストが、少し邪魔くさいなと思ってしまったんだ。だからそれを削った。と言わんばかりである。

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そして続々と発見される即死コンボの数々。

いくつか考えられますが、中でもこの組合せはフィニッシャーが自身の墓地肥やしを兼ねる事で、コンボ始動してほぼ止まらない為に実戦レベルと判断して、脳内でデッキリストを捏ねながらMOでの先行実装を楽しみに待っていました。

3.Under the Dec その1

《死の国からの脱出》(以後死の国)の英名Underworld Breachを単純に略すとUBでマナコストの表記と被る為、往年の名ストームデッキ「Long Dec」の名を頂いて「Under the Dec」と呼称しました(以後UtD)。theは語感です。

当初、《ライオンの瞳のダイアモンド》(以後LED)、そしてストーム呪文を用いる性質上、デッキはANTの延長線上にある。と考えていました。

そのプロトタイプがこちらになります。

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清々しい程にANTの真似をしてますが、このデッキはストームデッキでありながらストームを稼ぐ必要がなく、死の国を唱えるだけのマナとLEDと《思考停止》さえあれば決まってしまうので、従来のANTに割かれていたマナ加速をする儀式系スペルが不要であると考えた結果、ハンデス8枚とキャントリ12枚という欲望構築が可能になりました。

ANT以上の妨害とキャントリ枚数、これは強い!と思い早速MOリーグへ。

エルフ 2-1
青黒リアニ 1-2
デスタク 1-2
4c奇跡 2-0
ベルチャー 2-1
3-2

4c奇跡 1-2
4c奇跡 2-0
トリコ奇跡 0-2
ゴブリン 2-0
BUGデルバー 1-2
2-3

グリデル 1-2
TES 1-2
エルスト 2-0
URデルバー 0-2
ウルザスレガシー 2-1
2-3

7勝8敗という散々な結果に。

私がANT初心者に近い為プレイングがお粗末、ということも当然ありましたが、思った以上に回りません。特に墓地対策と打ち消しを擁するデッキにボコボコにされてしまいました。

本家のANTは墓地対策を避けながら勝つ事が可能なデッキなのに対して、このデッキは必ず墓地を経由しなければ勝てません。

サイドからの大量の置物破壊をインするとはいえ、妨害手段がハンデスなので1t目の《墓堀りの檻》などに対応できない。相手の墓地対策カードを見誤ると途端に苦しくなります。

更にフィニッシュまでのアクションに要求されるマナが3色に渡る為に土地の置き方が難しく、その為に《不毛の大地》がとても厳しい事もわかりました。

utd欠点

(やっぱりANTって凄い!)

このままのANT型では今後も勝てるビジョンが見えません。

では一体どうすれば良いのだろうか?

実はその答えは既に示されていました。

4.Under the Dec その2

ANT型のUtDでは使うマナの一貫性がなく、土地の置き方がシビアである事は述べました。

それを解決するにはどうすればいいのか?それは3.で述べた「死の国を唱えるだけのマナとLEDと《思考停止》さえあれば決まってしまう」この考えでした。

つまり、3枚コンボです。レガシーの3枚コンボ…?

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実は死の国コンボは《実物提示教育》だったのです。

厳密にはショーテルコンボは2枚なので3枚使うのはオムニテルだったりするのですが、ストームを扱うのでANTの延長線上という思い込みから脱却して、死の国はショーテルだという閃きはデッキに一貫性を齎しました。

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フィニッシュまでのアクションを青と赤に絞る事で使うマナに一貫性ができて、かつ《不毛の大地》への耐性も上がっています。

最終的なリストはこうなりました。

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黒を一切抜いた事でなくなったハンデス8枚の妨害手段は全て青い打ち消しに置き換えながら、《冥府の教示者》、《願い爪のタリスマン》が抜けた穴を補うカードとして、《思考掃き》に白羽の矢が立ちました。

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死の国コンボはLEDと《思考停止》の3枚コンボではあるものの、死の国さえ戦場にあれば墓地から唱えられる為にLEDと《思考停止》を手札に持っている必要すらないため、《渦まく知識》でLEDや《思考停止》をトップに積んだ後に《思考掃き》で落とすことで、手札を妨害手段と死の国で埋めてからコンボスタートもできるようになりました。

また、死の国はあるが他のコンボパーツがない、しかしクロックで詰められていてコンボスタートをするしかない。という状況の時に、従来のキャントリ群とほぼ同等に掘り進めながら墓地を肥やせるという他の3種にはない唯一無二の性能を持っています。

プロトタイプのUtDを超える16枚のキャントリで安定感は抜群のはず!早速MOリーグへ潜ります。

感染 2-0
TES 2-0
ダークマーベリック 2-0
アルーレン 2-0
ミラー(ジェスカイ研磨基地) 2-0
5-0

ベルチャー 2-0
ジャンド 2-1
マーベリック 2-0
土地単 2-0
URデルバー 1-2
4-1

望外の9連勝で9勝1敗!

TES、ベルチャーの1killを何れも《意志の力》で撥ね退けて勝利しており、ハンデスから打ち消しへとシフトしたことの恩恵を強く感じます。

妨害→コンボ始動を分割できないのでキルターンに多少の遅れが出るときもありましたが、相手の置物を弾いてマナが寝たところに仕掛けられるなどのメリットも。

ただしサーチ手段が《直観》しかなくなってしまったので、必要な死の国は引いてくるしかありません。これを改善するために《リム=ドゥールの櫃》であれば、死の国、LED、《思考停止》の全てを状況に応じてサーチできるはず。と閃いて再びMOリーグへ。

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(実質何でもサーチ!?)

ペインター 2-1
青黒リアニ 0-2
ボンバーマン 1-2
ドレッジ 0-2
グリコン 1-2
1-4

がっ……駄目っ……!

そもそも《リム=ドゥールの櫃》もあまり引きませんでしたが、高速コンボに当たりまくるなど噛み合いの悪さもあり負けに負け。

自分も墓地を使うのに相手への墓地対が薄かったり、どこまで行っても結局のところ相手の墓地対を乗り越えなければ勝ちようがありません。

周囲の情報を収集したり、このUtDをコピーして回して頂いた配信を眺めていると、死の国に対するヘイトが尋常ではない(元々MOは墓地対が多いが)と感じており、テーロス還魂記発売前にも関わらず再び構築を練り直す必要を感じていました。

即ち、墓地に頼らない勝ち筋の探求の始まりでした。

5.Under the Dec その3

UtDの課題は3個ありました。

1.墓地に頼らない勝てるカードの模索
2.墓地対策対策カードの確立
3.死の国のサーチ手段

まずは1.から解決する必要があります。ショーテルデッキのリストを漁ると、《若き紅蓮術士》と《氷の中の存在》が過去採用されていました。《若き紅蓮術士》はプロトタイプの時にも試した事がありましたが、パンチ力に欠け、ゲームを決定付けるのは難しいと感じ、《氷の中の存在》は赤系デッキのサイドにほぼいる《紅蓮破》系スペルで死んでしまいます。奴の影までちらつきますが、《呪文貫き》や《否定の力》にひっかからないクリーチャー呪文がベストです。

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(どこにでも現れる王冠泥棒)

結局探しに探しましたが、RUGカラーでこの条件を満たすようなカードは見当たりません。

しかしこれを満たすカードは1枚あることはわかっていました。

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《僧院の導師》です。

大量のキャントリだけでなく、LED、《水蓮の花びら》でも誘発する果敢能力で、即座にゲームを決めうるカードですが、白いカードであることが少し気にかかりました。

しかし、《僧院の導師》の採用に伴って白色が加わる事により現在の課題が全て解決します。

1.墓地に頼らない勝てるカードの模索→《僧院の導師》
2.墓地対策対策カードの確立→白は置物割りの第2色。
3.死の国のサーチ手段→《悟りの教示者》

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メインから置物に触れて、かつ相手の干渉も防ぐ《時を解す者、テフェリー》、死の国だけでなくLEDのサーチも可能な《悟りの教示者》と色を足すリスクに見合うカードが採用できます。

そして早速組んだリストがこちらです。

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置物破壊として軽量かつ全てを破壊する《静寂》を採用。これも《悟りの教示者》で引っ張ってこれるという明確な強みがあります。

現在のメタゲームでは《外科的摘出》で1枚抜く程度では止まらない墓地利用デッキが大半の為、《トーモッドの墓所》を墓地対策に採用。これも《悟りの教示者》でサーチできます。

早速MOリーグで使用感を確かめに行きます。

4c奇跡 2-0
グリデル 2-0
ボンバーマン 2-1
ダークマーベリック 0-2
5cコン 2-0
4-1

スニークショー 2-0
白単ストンピィ 2-0
青黒リアニ 2-1
ダークマーベリック 2-0
ミラー(チャリス入り) 2-1
5-0

4c奇跡 1-2
最後の審判 2-1
BUGZenith 2-0
ドレッジ 2-1
エンチャントレス 2-0
4-1

TES 2-1
UGオムニテル 2-1
黒単リアニメイト 2-0
URスタイフルノートスティルデルバー 2-1
デスタク 2-1
5-0

18勝2敗!

しかし懸念通り死の国へのヘイトが高まっていることを感じるリーグでした。

4c奇跡は自身の被害を承知で《耳の痛い静寂》、《安らかなる眠り》をプレイされ、それをバックアップする大量の打ち消し呪文。

1回目のダークマーベリックにはサイド後に1t目の《虚空の杯》X=0プレイに対して《意志の力》を切ったものの2枚目の《虚空の杯》X=0、そして《耳の痛い静寂》とプレイされ思わず苦笑い。土地がもたついていたものの、3ターン目には《スレイベンの守護者、サリア》。《悟りの教示者》で《静寂》を引っ張ってきたものの《秋の騎士》と対応完璧で完敗。

2回目のダークマーベリックも開幕《虚空の力線》から《耳の痛い静寂》×2、《漁る軟泥》。これは《残響する真実》から《蒸気の連鎖》で辛うじて退けましたが容赦ありません。

墓地を利用しない勝ち手段として採用した《僧院の導師》はクリーチャー除去がサイドアウトされがちなコントロール、そもそも除去がないミラーマッチなどで八面六臂の大活躍。

色を足したリスクも、メインのアクションを阻害するカラーではないのでそこまで気にならず。ここまできて漸く実践に足るデッキリストになったと思います。

ここまで冗長だったかもしれませんが、現行のリストの解説に移りたいと思います。

6.デッキリスト解説~メインボード編~

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ということで現行のリストを再び。

解説が必要かな?と思うものだけ書いていきます。他に気になる点がありましたらコメントにてどうぞ。

1.土地基盤

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《冠雪の島》×2、《冠雪の山》、《冠雪の平地》の4枚構成。

《不毛の大地》を貰う事なく、《呪文貫き》圏外で死の国を唱える為に基本土地は4枚必要なので、それに則って割り振り。山も平地も特にサイド後は複数に渡ってマナを使うので、リスクを承知で採用しています。《冠雪の島》から《思案》はかなりデッキの絞り込みを困難にさせるので冠雪土地推奨です。

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《Volcanic Island》×2、《Tundra》、《Tropical Islands》の4枚構成。

最低限勝つためには赤マナが必要な為、《Volcanic Island》のみ2枚に。《思考掃き》、《思考停止》がある為、気が付くと土地が墓地に落ちていてマナが出ないという事態が稀に起こります。

最後にフェッチランドを8枚です。基本土地を採用している兼ね合いで、《溢れかえる岸辺》、《沸騰する小湖》をそれぞれ4枚採用していますが、《溢れかえる岸辺》1枚を《虹色の眺望》に替えてもいいかもしれません。シャッフルの為にフェッチを切りたいが手札に余剰土地がないので不毛ケアで《冠雪の山》を持ってきたいときがあります。

このデッキのフェッチランドはシャッフル手段のほかに脱出コストも兼ねているので、土地の並べ方にも気を使いましょう。

2.ドローソース

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ドローソースはそれぞれ4枚で計16枚。

優先順位は《思案》>《渦まく知識》>《定業》>《思考掃き》。《定業》、《思考掃き》は唱えると凡そデッキが絞られてしまうので、選択肢のある内は《思案》を優先しましょう。《渦まく知識》は、極力《Ancestral Recall》として使いたいが、それに拘らない事。手札が整っていない内はなるだけ《思考掃き》は温存するが、十分に土地があり、手札に死の国がある場合は《思考掃き》も積極的に唱えていきたいです。

サイド後は《外科的摘出》ケアとサイドカードの取りこぼしを防ぐ為、入ってくる事が想定されるマッチでは《思考掃き》は全抜きします。速度勝負になるマッチでは《定業》を抜いて対応。レアケースですが《最後の審判》の5枚のパイルに《思考掃き》を差し込んで勝った試合もありました。

3.サポートカード

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《悟りの教示者》×2、《夏の帳》×2、《時を解す者、テフェリー》。

《悟りの教示者》……キャントリップ連打中のどこかで見つかれば良いので2枚。死の国とLEDの両方にアクセスできるうえに、サイド後には置物破壊と墓地対策にもアクセスできる万能カード。1マナと軽い事が偉く、《思考停止》、死の国orLED、《悟りの教示者》が淀みなく疑似2kill聴牌と化します。

《夏の帳》……説明不要のぶっ壊れカード。これだけの為に緑タッチと言っても過言ではないです。ハンデスを防ぎ、《突然の衰微》を防ぎ、打ち消し耐性までつけて何故かドローできる。《思考囲い》や《呪文貫き》にキャントリついてるみたいなもので完全に調整を間違えたとしか思えませんね……何枚あっても強いが枠がなく取り合えずメインに2枚採用しています。

因みに打ち消されない能力の付与は青や黒の呪文に留まらないので、相手の置いてきた《虚空の杯》X=0やX=2に対して打つ事でLEDも死の国も通ってしまう。意味不明。

《時を解す者、テフェリー》……常在型能力でインスタントタイミングでの呪文を唱える事を禁止してしまう上に、なぜか相手の置物をバウンスした上でドローできます。意味不明。青いデッキはこれが通るとその後の全てが素通りなのでここに打ち消しを当てるしかないという処が更にその強さに拍車をかけている。但し3マナと重いので採用は1枚。

4.勝ち手段

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《思考停止》×4、《ぶどう弾》。

《思考停止》は単体で役に立ちにくいので枚数を減らすという話も聞いた事がありますが、重要なコンボパーツでありマナが余って暇な時は自分に取り合えず打っておいてもいいので、自分は4枚採用しています。

追加の勝ち手段は《ぶどう弾》にしています。《思考停止》で勝ちきれないというのは、

・《夏の帳》などで相手が呪禁や被覆を得た。
・エルドラージ旧3神などのライブラリー修復能力を持つカードが相手のデッキにあった。

という概ね2点になり、追加の勝ち手段にはこれを乗り越える事が要求されます。現行で採用しうる追加の勝ち手段は3種類あり、それぞれのメリット、デメリットを解説しますので、自分に合った勝ち手段を採用するのが良いと思います。

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《ぶどう弾》
メリット
・赤い呪文なので巷に溢れている《夏の帳》の呪禁を貫通する。
・直接ダメージを与えるので、相手のライブラリーに関与しない。
・any targetなので、相手のクリーチャーやPWを倒せる。(カード画像はオラクル変更前のものです。)
・十分に墓地があれば《思考停止》が引けなくても相手を倒せる。
・ストーム呪文なので相手の打ち消しに強い。

デメリット
・《神聖の力線》などの通常の呪禁や被覆には単体で対応できない。
・青くないので《意志の力》のピッチコストにならない。

《神秘を操る者、ジェイス》
メリット
・常在型能力で勝利するので、相手の状態に左右されない。
・引いたときに素で唱える事も可能で、+能力が思考掃きなのでアドが取れる。
・落とそうとしてきた相手に対して時間を稼ぐ事ができる。
・《意志の力》のピッチコストになる。

デメリット
・最後のドローに対して干渉されていなくなると逆に負ける。
・メリットと矛盾するようだが、4マナ青トリシンなので重く、素で引いた時に唱えられない場合も多い。

《タッサの神託者》
メリット
・誘発型能力で勝利する上に、相手の状態に左右されず、ライブラリーが0枚なら除去されても勝てる。
・《意志の力》のピッチコストになる。
・現状最も対処され難い最高の勝ち手段強度。

デメリット
・単体では何もしないに等しい。

この中で自分は最初期は《神秘を操る者、ジェイス》を、現在は《ぶどう弾》を採用しています。

《タッサの神託者》は非常に対処され難い勝ち手段ですが、他の2枚では勝てない状況というのはかなり限定的なので、素引きを考慮して採用していません。

《神秘を操る者、ジェイス》は素出しした試合も3試合程あり、その内1試合では8枚程のドローと墓地肥やしを齎してくれましたが、基本的には重くて、活躍できる状況も限られています。

《ぶどう弾》の一番のメリットはやはり相手のクリーチャーやPWに干渉できる事です。こちらのコンボに干渉してくるヘイトベアーや、デルバーなどのクロックを刻んでくるクリーチャーも除去できる可能性があるだけでなく、こちらのアーティファクトの起動を封じる《大いなる創造者、カーン》に対しても対抗手段があることが非常に重要でした。-2能力で忠誠度が3になれば、《ぶどう弾》で3点与える事はかなり現実的で対処できます。

《思考停止》無しで見切り発車した際も、墓地の枚数とストームカウントによっては《思考停止》を探し続けるより《ぶどう弾》に切り替える事で確定で勝ちきれる場合もあるので、この点も他2枚と比べて優れている点になります。

勝ち手段を増やしたいのであれば、《ぶどう弾》+《神秘を操る者、ジェイス》or《タッサの神託者》という組み合わせがおススメです。

7.デッキリスト解説~サイドボード編~

1.置物除去系

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《静寂》2枚、《蒸気の連鎖》、《残響する真実》、《削剥》。

《静寂》……《悟りの教示者》でサーチできる置物破壊。主に2枚以上の妨害置物を置いてくる事が想定される相手にインします。タイムラグが欠点ですが、一網打尽にできるのは大きなメリット。

《蒸気の連鎖》、《残響する真実》……バウンス枠。《虚空の杯》を避ける為に散らしてあります。増量するなら《虚空の力線》や《耳の痛い静寂》、《虚空の杯》など複数枚置かれるカードをみれる《残響する真実》の方が良いでしょう。コンボスタート後に《蒸気の連鎖》を打つと相手が土地をサクって死の国をバウンスしてくるケースがあるので、コンボ後に《蒸気の連鎖》を唱えたい場合はしっかりケアすること。

《削剥》……アーティファクト破壊兼除去。《墓堀りの檻》を置かれるデルバーや、《霊気の薬瓶》や各種装備品、ヘイトベアーを擁するデスタクやマーベリックにもインできる優れたカード。灯争大戦で生まれていればPWにも3点飛ばせた可能性があったと思うと惜しいカードだなと思う。

2.全体除去枠

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《紅蓮地獄》、《硫黄の精霊》。

《紅蓮地獄》……多種多様なクリーチャーデッキにインできる軽量全体除去。《戦慄衆の秘儀術師》を筆頭にタフネス3が除去できないのが玉に瑕。

《硫黄の精霊》……デスタクは結構厳しいマッチアップだと考えているので対策を厚めに。瞬速でパワー3の為、《大いなる創造者、カーン》を使うデッキにもインする時があります。

3.墓地対策枠

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《外科的摘出》、《トーモッドの墓所》。

《外科的摘出》……MOでの墓地対策は嗜み。対リアニメイトなど墓地活用デッキにインする他、メイン瞬殺で相手のデッキが判らないとき、相手のデッキがどんな墓地対策をしているかわからないときなどにもインして、2R目に相手のデッキを覗いてそれを把握するのにも使えます。対奇跡では《神秘の聖域》などによる使いまわしを防ぐ他、《僧院の導師》プランを取った際にφマナなので果敢稼ぎにも役に立つ。

《トーモッドの墓所》……《悟りの教示者》でサーチできる墓地対策。相手の墓地だけ飛ばせるので、自分の動きを阻害しません。これも墓地活用デッキにインします。ミラーマッチでも有効なので手札が芳しくない時はこっちを先に持ってくる事も考えましょう。

4.妨害枠

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《花の絨毯》、《オアリムの詠唱》。

《花の絨毯》……デルバーのマナ否定戦略に対抗できるだけでなく、大量のキャントリを有するこのデッキでは単純にアクション数が増えて強力。単純に使えるマナが増えると見切り発車の際の継続力にも関わってきます。しかし、あくまでマナを生むだけの能力なので、他のサイドカードに取って代われるような枠でもあると感じています。

《オアリムの詠唱》……実質《ザンティッドの大群》(?)。緑マナを頻繁に使いたくなかった為にこちらに。相手の干渉を封じるので事実上のマスカンであり、死の国で墓地から唱えなおして即効力を発揮する点、キッカーする事で1tの延命が図れる事が気に入っています。《夏の帳》と似たような使い方をするので、ジェスカイカラーにしてもっとマナベースを強固にしたい場合は全てこちらに差し替える事で緑要素をなくすことができます。《沈黙》とは一長一短。幸いレガシーでは《誤った指図》、《神聖の力線》はメジャーではない為、《オアリムの詠唱》の方がメリットを享受できて良いでしょう。

8.Under the Decのプレイガイド

まずUnder the Decの基本的なゲームプランを紹介します。

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非常にシンプルですね。その後の勝ち方も、

1.死の国を戦場に出す。
2.LEDからマナを出して、《思考停止》を自分を対象に唱えて脱出コストを確保する。
3.相手に致死量の《思考停止》を唱える。

と簡単なものです。ですが、手なりのプレイでは付け込まれてしまうパターンもありますので、しっかり考えてプレイしましょう。

例えば以下のシチュエーションです。解りやすくする為に簡略化しましたが、4c奇跡のサイド後です。既にコンボパーツは揃っているので仕掛けたいな、と思っていますが、どうプレイするのが最善でしょうか。

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答えは、LED→死の国です。なぜ、死の国を先に唱えてはいけないのでしょうか。死の国を先に唱えると以下の場合に失敗します。

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ところがLEDから先に唱えた場合はどうでしょうか?

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非常に分かりやすい例えを用いましたが、大事なのは《死の国からの脱出》を唱えるのは一番最後が良い。ということです。特にサイド後は置物破壊を差し込まれる危険性が高く、LEDのマナからの下準備が必要なシチュエーションもあり、この順番の違いで勝負が決まる事はあり得ます。

このデッキは墓地活用デッキですが、サイド後の単発墓地対策はプレイングによって簡単に乗り越える事が出来ます。

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(単発墓地対策カードたち)

まずはしっかりとLED→死の国と唱えてこれが解決したとします。LEDを起動して青マナを得ますが、これはマナ能力なのでここで干渉することはできません。

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ここでは再びLEDを唱えます。墓地に余裕があるうちは、LEDを複数回唱えて既にマナを用意しておくのが一番いい動きですが、ここに《外科的摘出》等が《思考停止》を対象に取っても、最初の起動で生まれた青3マナから脱出することができるので、フィズらせる事が出来ます。

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よってこのタイミングで《外科的摘出》等を差し込まれても簡単に避けられます。《思考停止》に合わせてLEDを対象に取られたとしても、下記の最短ルートの場合ですらストーム4、6、7の思考停止を自分に唱える事が可能なので、自分のライブラリーを空にすることができます。自分のライブラリーが全て墓地に落ちれば、《水蓮の花びら》でマナを生むことが出来るので、問題なく勝てます。

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墓地に余裕があるうちにLEDを何回も唱えてマナを生んでおく動きは、特に見切り発車の時にしっかり考えてやっておく必要があります。

見切り発車にも2パターンあります。

1.死の国と《思考停止》がある。
2.死の国とLEDがある。

この内1.は完全にLEDか《水蓮の花びら》が落ちる事をお祈りするだけなので特に書くことはありません。

2.は《悟りの教示者》で両方のカードがサーチ可能なこともあり、見切り発車する時は大体この組合せから始まる事が多いです。

墓地にドローソースとなるカードが1枚でも落ちていれば、死の国で唱えなおす事が出来るので、大事なのは墓地の枚数と浮きマナになります。最終的に《思考停止》につなげる為に2マナかかる為、LED1回では事実上使えるマナは1マナと心もとない為、最低2回、出来れば3回は唱えて9マナを用意しておきたいところです。

見切り発車の際使うドロースペルの優先順位は《思考掃き》≧《思案》>《定業》>《渦まく知識》です。

《思考掃き》は自身で脱出コスト2枚を賄えるので、圧倒的に連打可能です。《思考掃き》がある場合は優先して唱えましょう。

ある程度墓地にゆとりがあったり、サイド後は《思考掃き》がサイドアウトされている可能性も高いので、その場合は《思案》から打ちます。その際、闇雲に《思考停止》を求めて、シャッフルドローを繰り返していれば墓地が直ぐに無くなってしまい、止まってしまう可能性があるでしょう。例えば、脱出コストで唱えた《思案》で見た3枚が、《思案》、《Tundra》、《時を解す者、テフェリー》といった内容だった時、シャッフルせずに《思案》を引きます。何故なら、手札に加わるからです。当たり前ですが、墓地という有限のリソースを極限まで節約する為にドローソースを連鎖させていく必要があるからです。これが、LEDを事前に数回唱えておく大きな理由です。マナが足りなくなって、LEDを改めて墓地から唱えてマナを捻出すると本来はマナの支払いのみで唱えられた呪文が、マナコスト+3枚の墓地を要求するようになってしまいます。これは、後のない見切り発車では致命的になりえます。以下は実際に私が実戦で見切り発車した時に起こったことです。

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ドローソース連打の果てに《思考停止》を引き込む事に成功しましたが、もうマナが尽きてしまいました。墓地にLEDは残してありましたが、LEDを脱出コストで唱えてマナを出しても墓地の枚数が1枚足りずに《思考停止》を唱えられずに負けました。

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適切にプレイをしていれば、この時点でまだ3マナ浮いており、手札から《思考停止》を唱えて勝っていたでしょう。

勿論、LEDを唱えすぎてマナが余って墓地が尽きるようでは本末転倒です。残ライブラリー、落ちているドローソース、墓地の枚数にも因りますので、これは実戦で掴む感覚だと思っています。

9.サイドボーディングガイド

サイドボーディング、と銘打ちましたが、まだ実戦経験に乏しく確かなものを出すことはできませんのでご了承ください。

サイドボーディングの基本方針は

1.《外科的摘出》のサイドインが見込まれる相手には《思考掃き》を全部抜く。
2.相手がインしてくるであろう墓地対策をしっかり考えてインする。

これさえ意識しておけば大きく外れる事はないと思います。

4c奇跡

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想定される置物……《相殺》、《耳の痛い静寂》、《安らかなる眠り》など。

サイド後は相当に厳しいのでメンタープランで攻めましょう。《外科的摘出》で見て相手のサイドカードが薄いと感じたら3R目にコンボプランに戻すのもアリです。

Delver系

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想定される置物……《墓堀りの檻》、《トーモッドの墓所》、《虚空の力線》、《無のロッド》、《相殺》など。

グリクシスデルバーやURデルバーで《夏の帳》が打たれる心配のないマッチアップであれば《定業》の代わりに《ぶどう弾》を抜いてもいいと思います。相手が置物を2種類以上置いてくるような形であれば《静寂》も一考してください。

Death & Tax

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想定される置物……《耳の痛い静寂》、《安らかなる眠り》、《虚空の杯》、《スレイベンの守護者、サリア》、《ファイレクシアの破棄者》、《聖域の僧院長》、《悔恨する僧侶》など。

書ききれないほどの妨害置物の嵐なので長引くと厄介なマッチアップです。《霊気の薬瓶》が2でも3でもコンボを止められるクリーチャーが存在するので、即座にコンボスタートする事を目指しましょう。

似たようなマッチアップにマーベリックがありますが、黒入りのダークマーベリックの場合は《突然の衰微》があるので、《夏の帳》を1枚か2枚残して《定業》と差し替えます。

むかつきストーム

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想定される置物……《トーモッドの墓所》

ほぼ速度勝負ですが、《夏の帳》、《オアリムの詠唱》を差し込めるので手札によっては守りに回れます。TES系のMOXを大量にばらまくタイプは《静寂》をサイドインするのも一考ですが、ラグのせいで相手の見切り発車の結果死ぬ恐れもあるので、結局のところ速度勝負したほうがいいです。

他に知りたいマッチアップのインアウトがありましたら連絡下さい。

10.採用を検討できるカード

《直観》

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白が入る前は万能サーチとして1枚採用していました。3マナと重いが何でもサーチ可能で、自身を含めて脱出コスト1回分を賄ってくれます。相手のエンドに死の国かLEDの足りない方をサーチして、メインでコンボ始動した時に墓地から《直観》で《思考停止》サーチと動けるので事実上の2枚コンボとして振る舞えます。

しかし、《夏の帳》で立ち消えしたり、サイド後は《外科的摘出》ケアでサイドアウト筆頭カードになっていた為、ジェスカイカラーに伴って解雇に。白を使わない青赤t緑のタイプでは採用を検討できるでしょう。

《否定の契約》

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自分のコンボを押し通すのに使える打ち消し呪文。次のターンは来ないので実質ノーリスク。コンボ後も墓地から0マナで脱出して確定カウンターなので、墓地の続く限り一切の呪文をシャットダウンできます。カウンターでコンボに対抗してくるようなデッキには強いが、置物で干渉してくる相手には弱く、腐る場合もあるでしょう。

2マナとLEDがあれば契約コストが払えるので、LEDの起動で手札がなくなっても死の国を引いて墓地にコンボパーツがあればコンボ可能。手札にLEDを持っている時は置いておくとよいです。

《狼狽の嵐》

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かなり強力な1マナの打ち消し呪文なのですが、インスタントやソーサリーにしか当てれない為に、相手の置物に対して無力でした。よって、非クリーチャースペル全般に当てられる《呪文貫き》を優先しています。

周囲にコンボデッキが多かったり、ハンデスと打ち消しで対処するなどの置物対策が少ないデッキが多いようであれば採用すると強く使えるでしょう。

《ハーキルの召還術》

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対象のプレイヤーがオーナーのアーティファクトをバウンスするカード。オーナーのアーティファクトをバウンスするために、レアケースだが《ダク・フェイデン》などで取られたLEDを回収する為には自分を対象にとる必要があります。

ウルザスレガシーやTES、Post、赤単プリズンといった大量のアーティファクトを展開するデッキにインできるカードで、特に《アメジストの棘》、《虚空の杯》、《三なる宝球》などを纏めてエンドにバウンス出来るのは明確な強みで、周囲にこのタイプのデッキが多ければ採用に値します。

《大いなる創造者、カーン》+《マイコシンスの格子》コンボに対応してマナだけ出しておき、着地後に唱える事で相手のパーマネントを全てバウンスする友情コンボが可能なため、覚えておくと役に立つ時があるかもしれません。

《厚かましい借り手》

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対戦相手の土地でないパーマネントをバウンスする《些細な盗み》の出来事を持つクリーチャー。

《蒸気の連鎖》と競合するが、クリーチャーとして3/1でHigh-Flyingは、《大いなる創造者、カーン》の-2能力使用後の忠誠度3をエンド瞬速から展開して落とせるという優秀なスタッツ。置物対策とクロックを兼ねる為サイド後の別途勝ち手段にもなる為、現在私も採用を検討しています。特に白を使わない青赤t緑タイプでは必須でしょう。

《悪ふざけ》

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発掘1による使いまわしが可能なアーティファクト破壊カード。《墓堀りの檻》をすり抜けて利用可能で、発掘により僅かながらも墓地肥やしも可能。

しかし、そもそもサイド後は墓地を攻められるデッキなので思ったより使い勝手はよくありませんでした。また、繰り返し破壊するよりは一網打尽にする方がデッキにあっています。アーティファクトデッキをガンメタしたい場合には採用するといいでしょう。

《力ずく》

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種が赤マナ1個でX個アーティファクトを破壊できるカード。《破壊放題》と比べると打ち消しに弱いが、赤マナを複数用意する必要がなく、採用するならこちら。しかし土地を切り詰めたデッキなのでXの値を大きくする事は難しいという欠点があります。それでも一網打尽にできるカードではあるので、アーティファクトによる対策が多ければ採用に値するでしょう。

《紅蓮破》

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説明不要の超優秀な対青呪文。このデッキは4c奇跡を苦手にしており、《僧院の導師》で攻めても《王冠泥棒、オーコ》で覆される事があります。戦場に出てしまった青いパーマネントに対処出来て、打ち消し合戦にも使えるので、こちらも現在採用を検討しています。

《恭しき沈黙》

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森がある場合にピッチコストで相手に6点ゲインさせて全てのエンチャントを破壊するカード。6点ゲインは実質タダに等しく、元のマナコストが《相殺》にひっかかりにくい4マナで、《耳の痛い静寂》、《安らかなる眠り》を巻き込めるので4c奇跡を強くメタりたいなら採用を検討します。Death & Tax、ダークマーベリックなども複数のエンチャントで妨害してくるので、そちらにも強くなります。現行のリストでは森が《Tropical Island》のみなので、《不毛の大地》などをケアするならサイドに《冠雪の森》をとってもよいでしょう。その場合は青赤t緑の構築に寄せるのが好ましいです。

《仕組まれた爆薬》

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点数で見たマナコストが蓄積カウンターと同じで土地ではないパーマネント破壊する為、エンチャントやアーティファクトに限らず破壊できる点が優れています。《無のロッド》相当の効果を持つカードが汎用的に使われているので機能不全になる可能性がありますが、それらのカードが少ないと読めば万能除去として活躍してくれるでしょう。

11.終わりに

長々しく書きましたが、死の国デッキの調整録+解説はいかがだったでしょうか。

実際に《ヨーグモスの意志》の再来のようなこのカード、一目見たときは禁止不可避だと思っていましたが、実際に回してみると色々と弱点があり、案外大丈夫だろうと思えるようになりました。

もっと書きたい事もあるような気もしましたが、今回はここまでにします。もし、書いてほしい事、聞きたい事があればコメントでも、Twitterでも連絡ください。

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ここまでご覧いただき、ありがとうございました。

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