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「あたしンち」の昔話は、誰もが「懐かしい」

私と「あたしンち」の出会いは遡ること15年前。小2の誕生日、父親に突然渡された単行本9巻が私のはじめての「あたしンち」でした。

それから私は「あたしンち」とともに成長してきました。お兄さんお姉さんに見えていたユズヒコもみかんもいつの間にか追い越し、気づけば15年……。このマンガで学んだこともたくさんあります。(ネジは時計回りで回るとか、ゆで卵は電子レンジに入れると爆発するとか、カルメラや鬼まんじゅうの存在とか……)

そんななかでも、昔話の回は本当に良いんです。お母さんの回想として時々でてくる回なんですが、ほかとはすこし雰囲気が違います。

これはみかんが生まれた当初のお話。

お母さんといえば、明るくて豪快な肝っ玉母ちゃんのイメージがありますが、実はそれって“いま”のお母さんだったりするんですよね。無口なお父さんに本音が言えなかったり、一人ぼっちを寂しく思ったり、故郷を思って泣いてしまったり……。実は繊細な人だったんだ、と気づけるお話です。

たとえ自分の親であっても、若いときはなにをしていて、どんな人と出会ってきて、本当はどんな人なのか、わからないよなあ、とひとり思ったりしました。

そして新婚時代のこの回も、私の好きな話のひとつ(フルで読める場所がない……)。

夫婦ふたりっきりで暮らしてた時代の話なんですが、けっこう驚くところがあって。お母さんがお父さんの過去の日記を探し出して、めちゃくちゃ読み込む場面があるんです。

お母さんのこの表情!

「なにが書いてあるのよ!」と言いたくなる描き方。日記の内容は描かず、お母さんの顔で見せるなんて……。表現のしかたが本当にいい。さっきと同じことですが、お父さんにも若い頃があって、無口な裏でたくさん感情が動いていていて、いろいろと考えて、行動して、いまがあるんですよね。

「あたしンち」を読んでいると周りの人について考えることが増えます。「藤野はアイツに似てるな〜」とか「あの人水島さんと同じこと言ってたわ」とか「あの子もみかんと同じ、こんな気持ちだったのかなあ」とか。
登場人物の“生きている”感が強いから、こう思えるんだと思います。キャラクターの奥行きが並じゃない。

とくに昔話は、懐かしさと切なさが詰まっていて、本当に自分の話みたいに感じられます。お母さんたちのいる場所が地元に見えてくる。こんなことあったよな……と親に聞いてしまう。

何歳でも、どこに住んでいても、どんな立場でも、どこかに「懐かしい」と思える場面が出てくると思います。「あたしンち」の昔話は、みんなを受け入れてくれます。

昔話は単行本の後ろの方に載っていますが、アニメ配信もあったりするので、気になった方はぜひ観てみてください。

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